坂口恭平のレビュー一覧
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文筆だけでなく、絵画や音楽、電話相談など多彩な活動をしている坂口さんと、精神科医である斎藤さんの往復書簡です。
坂口さんのユニークな活動ぶりに対する斎藤さんの質問に、坂口さんが回答します。
坂口さんの言葉に「あらゆる欲望を超える、それよりも至上の意欲を見つけること。その時、人間は流れそのものになるのではないか」とありましたが、この言葉に坂口さんの人生が集約されているように感じました。
斎藤さんは悟りに近いと言っていますが、万物流転する中で変化に対応し、流れに棹さすことなく柔軟に生きる。毎日発見と創造と言うプロセスを粛々と続けていく。それが後悔のない人生に繋がっているような気がしました。
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Posted by ブクログ
「現実を見ろ」「現実は甘くない」といったような説教でよく使われる「現実」を脱臼させ、がんじがらめになってしまった私たちの生きかたに自由の息吹を吹き込もうとする試みがなされています。
現象学や哲学的人間学に通じていれば、もうすこし厳密なしかたでおなじような発想をあつかうことも可能なのかもしれませんが、本書では哲学的な概念に頼ることなく、著者自身の体験にもとづいて、いわば素手で議論を切り開いていこうとしています。著者の知性の膂力を感じさせる本だと思います。
ただ、社会のレヴェルの問題を個人のマインドセットの問題に還元してしまうことにともなう危険性にも、もうすこし目配りしなければならないように思 -
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自分の中で抱えている問題は、周りの人からしてみると「そんなことで悩んでいるの?」と思われてしまう。逆の立場になってみると、全く同じく「そんなことで悩んでいるんだ」となる。
自分の中の問題は周りの人がみんな外に吐き出さずに頭の中に置いているだけだから、いざ外の世界に出してみると案外ちっぽけなものだったりする。
アウトプットの例えも良かった。勝手にハードルを上げているだけだ、呼吸や排泄も立派なアウトプット。インプットばかりでは、体に毒素が溜まってしまうから未完成でも下手くそでもいいから形にする。
病を抱えている方だけでなく、自分の中に何か引っ掛かるものがあると日々感じている方にとてもおすすめの一冊 -
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去年の春、沈んでいた時に読んで救われた本です。
去年の感想を掘り出したので書き留めておきます。
面白いというか心がすっきりする。シンとくる言葉がたくさん載ってて線を弾きたくなるんだけど文脈と余白の中にある言葉なので引くことすらもったいない。一緒に土に手を突っ込んでいる感覚で、遠くから畑の様子を見守りながら、唾を飲むように読み進めました。坂口さんの生活に、沖縄でヤギと畑に合わせ生活していたお爺を思い出します。
『土になる』、ずっと気になっていて先週絵本屋で手に取って、やっぱり読みたくて買いました。生身のヒトの書いた本だ。とても良かったです。 -
Posted by ブクログ
多目的ホールで仮想病院の一室を作り、個室の内容は他の人にも聞こえる、そこで坂口(ここでは医者の設定)先生と診察する。というワークショップの内容。
一人ずつ悩みを打ち明け、それに坂口先生が薬をつくるというもの。
自分の悩みは皆自分の問題で、自分では大問題だと思っているが、壁の向こうで聞いている人からすると「それだけ?」と感じてしまう。人の話だと思って聞いた瞬間にそんなことで悩むんだとなる。つまり、それだけのことだと自分では気付かない。
人の悩みに耳を傾けることによって、ほとんどの人が同じようなことで悩んでいて、自分だけではないということに気づく。
やりたくないことをやらなければならないと頑張りす -