坂口恭平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「何かを作っている人」に向けて書かれた本。人の頭の中を覗いているようで面白かった。
自己啓発本の類いだと目次で内容がわかってしまうけど、坂口さんの本はちょっと違うと思う。
・才能を気にせず、書きたいと思うことを書けばいい
・人生はお金ではなく、継続
・作ることを継続していくことが幸福
・さらっとできることを延々とやっていくのが継続するコツ
型にとらわれずに書くこと、自分の気持ちに従うこと、が創造性を生むのかもしれない。
継続することの難しさに直面していた今のわたしにとって、たくさんの気づきがある良い内容だった。
エッセイ本は、人の思考を知れて楽しいな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ過去に自分は躁鬱と診断され、生き方がわからなくなっていた時にこの本を手に取りました。
最初は「この方はおそらく躁状態の時に書き上げているのかな」と思いながら読み進め、途中で手が止まることはありました。ただ、全体を通して笑ってしまうほど共感することが多かったです。
特に、「その11」あたりから読むスピードは一気に速くなったように感じます。
最終講義の〈鬱状態のあなたへ〉は、とても大事なメッセージなので、しんどくなり始めたら読み返せるように付箋貼りました。
あとがきで坂口さんは、鬱の時間も愛せるようになったと述べられています。それは「手を動かす何か」を見つけられたから。
私はその域までは達していないですが、鬱の時の、自分の思考だけがどんどん深く嵌っていくような、あの感覚を何かに残せたら、繋げられたらいいなと考えています。
社会で生きている以上、躁鬱のコントロールは難しいです。自分でも掴めない天気のようなものなので、でもだからこそ、そんな感性を持って生きている自分を愛してあげたいと思わせてくれました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ斎藤環さんの勧めるオープンダイアローグにもともと関心があったが、たまたま本屋で見つけた本。
「自殺を減らす」はとても関心のあるテーマなのだけど、坂口恭平さんのことは、この本に出会うまで知らなかった。
環さんが恭平さんに提案して始まった文通の記録(まるで交換日記のようだ)
環さんの問いかけに対して、恭平さんは翌日すぐに返信、しかも一つ一つ丁寧に。
環さんの返信は1ヶ月くらいしてからなのだけど、こちらも恭平さんのことをレスペクトして丁寧に返信というやりとりがまず面白い。
そして内容
まず恭平さんに驚いた
・1日に多い時は100本の相談電話を受ける
・傾聴しないで、こちらから相手の良いところを探る
・本人が躁鬱病であったが、寝込んでも良くならないので、パステル画や畑仕事をすることにエレルギーを使うことで克服
・うつはエネルギーがない状態とよく言われるが、エネルギーがマイナス方向に向かっている状態だと考える
・絵や手紙を描(書)いている時に電話を受けて、電話が終わったらまた元の作業にもどっている、という切り替えがすごい
・絵だけでなく、4歳から作曲をしていた、早稲田大学で首席卒業したのちアルバイトしている
・作品(パステル画)を環さんがとても高く評価
・生き方が自由で飾らない、自分のことを文章で曝け出すことができる
相談者への対応は、相手への思いやりがある。でも頑張りすぎない
(自分が疲れたりしたら相手に理由を伝えてまた電話して と言って電話を切れる
本当に大変なだった時は、1ヶ月?電話を中断した)
いのっちの電話の一つの良さは、いつも恭平さんが電話を受けて対応していたこと
長らく一人でやってきたけど、一緒にやる仲間をつくってこれから始まるところでこれからどうなるかも興味深い
とにかく恭平さんについて驚くことがたくさんあった。
環さんが多くのことを知っていることも発見
宗教やマインドフルネスのこと(精神科医としては関心がある分野なのだろうけど)、そして映画や美術にも詳しい。
で、マインドフルネスは、その起源は「悟り」でビジネスでの成功とは無縁(逆方向)なはずなのに、ビジネスで重宝されていることに矛盾がある、というのは面白かった。 -
Posted by ブクログ
往復書簡(文通?)なのだけど坂口さんのターンの文章量がすごくて笑う。こういった形式だからこそ、坂口さんの思想にのめり込みすぎず読めてちょうどいいかも。単体での著書に比べると、さらに客観的な視点でそれを感じ取ることができるイメージ。坂口さんの文章の魅力はピュアさにあると思う。そのピュアすぎる思想に引くときもあるので、貞操観念が強い人には勧められません。
「今、やれると思ったことは必ず今、やれるのです。今、やるための準備が整っていないのではなく、やれると思ったときに、本当は全てやれるのです。」
「何事も怖いのではなく、めんどくさかったんですね。めんどくさいということを抜けていくと、色々面白いことが広がっていきます。」 -
Posted by ブクログ
文筆だけでなく、絵画や音楽、電話相談など多彩な活動をしている坂口さんと、精神科医である斎藤さんの往復書簡です。
坂口さんのユニークな活動ぶりに対する斎藤さんの質問に、坂口さんが回答します。
坂口さんの言葉に「あらゆる欲望を超える、それよりも至上の意欲を見つけること。その時、人間は流れそのものになるのではないか」とありましたが、この言葉に坂口さんの人生が集約されているように感じました。
斎藤さんは悟りに近いと言っていますが、万物流転する中で変化に対応し、流れに棹さすことなく柔軟に生きる。毎日発見と創造と言うプロセスを粛々と続けていく。それが後悔のない人生に繋がっているような気がしました。
坂口さんの活動は坂口さんにしかできないことですが、生きていく上でのスタンスのようなものは、普遍性があるのではないかと、興味深かったです。 -
Posted by ブクログ
「現実を見ろ」「現実は甘くない」といったような説教でよく使われる「現実」を脱臼させ、がんじがらめになってしまった私たちの生きかたに自由の息吹を吹き込もうとする試みがなされています。
現象学や哲学的人間学に通じていれば、もうすこし厳密なしかたでおなじような発想をあつかうことも可能なのかもしれませんが、本書では哲学的な概念に頼ることなく、著者自身の体験にもとづいて、いわば素手で議論を切り開いていこうとしています。著者の知性の膂力を感じさせる本だと思います。
ただ、社会のレヴェルの問題を個人のマインドセットの問題に還元してしまうことにともなう危険性にも、もうすこし目配りしなければならないように思います。なにも松本哉を見習ってイデオロギー的な立場を鮮明にするべきだというつもりはありませんが、個々人が感じている生きづらさは、同時に政治的な問題でもあるという視点は、必要ではないかと考えます。
なお、文庫化にさいして増補された「現実創造論」では、畑仕事に出会って躁鬱病を乗り越えた著者の現状が語られるとともに、「現実」に押しつぶされることのない健康な生きかたを実現するための、著者ならではの提言がなされています。 -
Posted by ブクログ
好きなことして生きるために、自分の中に「事務員」をインストール。
多作かつカテゴリー多様な作家、坂口恭平さんが原作を担当し、道草晴子さんがマンガ化したベストセラー。
坂口さんの本は何冊か読んだことがあります。文学ものは正直、幻想的すぎて飲み込みづらかったけどこの本はマンガもいうこともあり一番読みやすかったです。
大学卒業後、就職せず無職になった主人公の坂口さんは、絵を描いて、本を描いて、音楽を作って、ぼんやりと「好きなことで生きていきたい」という"夢"を見ていますが、具体的にどんなアクションを起こしていいのか、どう身を立てればいいか分からずボーっとしています。そこに突然ジムというキャラが家に上がり込み、理想に向けてどう道筋を組み立てるべきかを説くという、自己啓発系ドラえもんのような話です。
自己実現していくための具体的な考えや行動を「事務」というキーワードに集約、さらにジムという(おそらく)イマジナリーフレンドがそれを教えていくというストーリーになっていて非常に読みやすいです。「事務」という言葉に落とし込むことで、精神的なハードルをさげることに成功していると思いました。相変わらず、坂口さんは多くの人に届くようなキャッチーな形で言語化するのが抜群にうまい。そもそも事務とは何か?を考えるきっかけにもなりました。事務ってのはてっきり職種か何かだと勘違いしていました。
この本のメッセージの肝は、事務イコールお金の管理とスケジュールの管理であり、ノートに書くなど具体化・数値化して客観的にとらえること。そして、具体的なやり方、ルーティンを考えること。一番大事なのは、好きであり続けられることを、事務でやりくりして維持することだと思いました。「好き」が大前提であって、好きでないことを事務でやりくりすると苦行でしかありません。それこそ好きなことしかできない坂口さんみたいなタイプには。好きだからこそ、全体重のっけられるからこそ、具体化という面倒くささも引き受けられるし、行動するハードルも下がるというもの。
読んでみて思ったのは「夢ノート」「マンダラチャート」と呼ばれる81マスの表に近いアプローチだなと思いました。「ドラフトで8球団から1位指名」という目標を実現するために高1の大谷翔平が作成したことで有名になったあの表です。まずは未来の目標をど真ん中に据え、そのためになにをすべきかルーティンを具体的にしていくこと。
あと事務をするということで「最低限の具体的な行動をとっている」という安心感にもつながり、そのぶん不安が減るというフィードバックもあるかもしれないなと思いました。
数値化はするが、自分の気持ちを損なわない数値を目標にすることが大事だと思います。気持ちは数値で割り切れないので、まずは気持ちを大事にするという大前提の上でやり方を探るべきだと。
たとえうまく行かなくても、やり方=事務が悪かっただけであって、自分自身の人格の否定にならないよ、というメッセージも分かりやすかったです。「先に身銭を切ることでアドバンテージを得る」てのも新たな発見でした。何より、事務という"概念"が一番の気づきでした。
マンガとしてはややご都合主義的な部分もあります。ただ坂口さん本人の人たらしなキャラクターを知っていたら許せてしまうし、マンガといっても大きく分ければ「マンガで分かる◯◯学」と同じカテゴリーに入ると思うので、本来そこまでストーリー性やリアリティに厳しい必要はないんですけどね。
自分の中に事務員さんを飼うような感覚。この感覚がインストールできると、人生はかどりそうですね。自分の気持ちを守りつつ、事務は淡々とやりつつ、作中のセリフ「どうせ最後はうまくいく」を唱えてやっていこうと思います。