佐々木譲のレビュー一覧
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佐々木譲『降るがいい』河出文庫。
13編収録の様々な人びとの人生模様を描いたサスペンス短編集。1編1編の扉に。佐々木譲による短編の内容を連想させるモノクロ写真を収録されている。
流石はベテラン作家、人生の機微を知っているようだ。1つ1つの短編に味わいがあり、丁寧に噛み締めながら読みたい短編ばかりである。
『降るがいい』。表題作。人生を左右するような濃密な時間をさらっと描いてみせる手腕に驚く。誰に恨む訳でなく、世の中の全てを恨むような男の最後の台詞がタイトルになっている。御用納めの日、雪が降りしきる中、加藤孝志は最後のメールを送って来てから何度電話しても、着信拒否する相手の居所を探る。相 -
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結局のところ開陽丸が戦艦大和と同じように一度もその能力を発揮することなく沈んでしまったことが函館における惨敗の最大の要因だったということか。
共和国建立の夢は敗れたとはいえ、健明がその後の明治政府において彼の見識とヨーロッパて学んだ知識を幅広く分野で役立てたという事実が救いです。
国の正史は常に勝者側の都合の良いように記録されるのが世の常とはいえ、これまでの通説と本書における薩長の卑劣さのギャップは非常に大きいので、改めて薩摩側から見た作品も読んでみたいと思う。
とはいえ、幕末から明治にかけての日本には歴史上の有名人以外にも世の中を変えたいと本気で思い行動した人がたくさんいたことを知る素晴らし -
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第二次大戦秘話三部作の2作目。
最初は本当に多くの登場人物が出てくるし、場所も東京、択捉島、アメリカと様々なので、どこで、どのようにすべてが繋がって関係してくるのかが分からないため、読むスピードが遅くなりがちなのですが、だんだんと関係性が見えてくると、スパイ活動を中心に描いているので面白くなっていきました。
日本の情報をつかむためにアメリカから潜入する主人公ですが、様々な危険を潜り抜けながら逃げ回ったりするので、ハラハラ、ドキドキする場面がある一方で、日本の南京大虐殺の描写もあり、現在もまだ戦争を続けている国のニュースのことを思い出し、余計に戦争のむごさを感じました。
この時代の愛国心、 -
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佐々木氏のIF小説は本当に面白い。日露戦争に日本が破れてロシアの属国となっていたらという過去のIF小説も面白かったが、本作は近未来の日本が内戦状態になり、国連平和維持軍が統治するIF小説で、本当に有り得そうな恐怖をもって一気に読ませてもらった。現在の全ての面で衰退しつつある日本の姿から、この小説の舞台設定が全く想像できなくはないということが最も恐ろしい。かつこの舞台設定の中での脱出逃避行のリアルさと劇的なラストまでの持っていき方は、流石に名人芸の域。最後の主人公の被弾を「弾傷ではなく、悔恨と恥辱と無念が、胸を内側から張り裂いた」と書き切る何ともドラマティックな幕切れに胸が熱くなった。