佐々木譲のレビュー一覧
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第二次大戦秘話三部作の2作目。
最初は本当に多くの登場人物が出てくるし、場所も東京、択捉島、アメリカと様々なので、どこで、どのようにすべてが繋がって関係してくるのかが分からないため、読むスピードが遅くなりがちなのですが、だんだんと関係性が見えてくると、スパイ活動を中心に描いているので面白くなっていきました。
日本の情報をつかむためにアメリカから潜入する主人公ですが、様々な危険を潜り抜けながら逃げ回ったりするので、ハラハラ、ドキドキする場面がある一方で、日本の南京大虐殺の描写もあり、現在もまだ戦争を続けている国のニュースのことを思い出し、余計に戦争のむごさを感じました。
この時代の愛国心、マイノリティ、そして人権とは戸言うことを考えさせられました。
最後に、択捉島の場面で出てくる北千島にいたとされるアイヌ人、クリル人という民族がいたことを知れました。今では彼らの文化も言語も残っていないそうです。日本が強制的に彼らの住んでいた地域を奪ったという歴史があることも知り、もっと第二次世界大戦前後の日本についてまだまだ勉強不足だな感じました。
*日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞 -
Posted by ブクログ
気に入っているシリーズの新作というのは、「遠方の友人知人の消息を知る」という感じで愉しく読むのだが、本作もそういう例に漏れない作品で、とにかく大変に愉しかった。
作品の主な舞台は札幌である。多分、中央警察署がモデルと見受けられる大通警察署に、盗犯担当の佐伯刑事と部下の新宮刑事、少年課の女性警察官である小島刑事が在る。そして機動捜査隊に在る佐伯刑事の古くからの仲間である津久井刑事、更に津久井の上司である長正寺警部が居る。こういう人達が主要な作中人物である。
シリーズ初期の作品は、警察部内での厄介事が在って、そういう中で仲間達が密かに奮戦するというような内容だったが、次第に意外な展開を見せる事件を公式、非公式に手を携えて仲間達が解決に向けて奮闘するという感じの内容になって行っている。本作もその後者、幾つかの出来事が結び付いて行く中、仲間達が奮闘して事件を解決へ導くという体裁である。
冒頭、長万部駅の辺りで、用事で他地域に出掛けた女子高生の孫を迎えに出た男が、「煽り運転」のような乱暴な走り方をする車に戸惑いながら、「酷く訳アリ?」と見受けられる外国人らしい女性が列車に乗れるように駅へ送るという挿話が入っている。
それから数日後、札幌で<雪まつり>の開幕前日、所謂「前夜祭」となっている日に舞台が移る。
佐伯刑事と新宮刑事は、自動車の窃盗事件の現場に駆け付けていた。キーを付けてエンジンも停めずにコンビニに珈琲を買いに出た男が乗っていた、会社の車が盗まれてしまったのだという。自動車盗難事件として捜査に着手することとなった。
小島刑事は、過去の事件で知り合って、現在でも交流が在る人物から相談を受けた。釧路に住む知人の高校生の娘が家を飛び出し、釧路から夜行バスで札幌に出たらしい。おかしな事態にならないように保護しなければならない。保護者に、釧路の警察署に届けるように促し、小島刑事は高校生を探し出そうと活動を始めた。
津久井刑事は妙な通報を受けて現場に駆け付けていた。近くを通ったカーチェイスのような車をやり過ごすと、乗っていた車の様子がおかしいので停車すれば、何やら「弾痕?」のようなモノが在るというのだ。発砲事件らしい。そして関わった車というのが、佐伯刑事が対応しようとしていた盗難車である可能性が在るということになった。
主要劇中人物達が、各々の担当する事案に普通に関わろうとしているのだが、それが思いも掛けない「裏」を持っていて、やがて収斂する…
「雪まつり」が開幕しようかという慌ただしい感じ、賑わった感じの1日を背景に、思いも寄らない拡がりの在る事件が展開している。アップテンポに挿話が折り重ねられながら展開する物語だが、何か「映画…」のようで強く引き込まれてしまう…
個人的には、札幌の地名が出て来ると「あの辺…」と判るので、読んでいて情景が凄く思い浮かび易く、何となく力が入る。このシリーズとしては、雪が降り頻る場合も在るような時季を舞台にした例はこれまでに無かったと思う。本作は、雪が交る中、「雪まつり」の時季の風情が描き込まれていてなかなかに好い。
とにかく愉しい!! -
Posted by ブクログ
ずーっと前(25年くらい前かな?)、NHKのドラマで見てから、ずっと原作を読みたいと思っていた。
昭和16年の日米開戦前夜の話。
1月、連合艦隊司令長官 山本五十六は、ある大胆な作戦を立てる。それは、もし日米開戦が避けられないことだとしたら、開戦初日に米国太平洋艦隊をハワイで撃滅するしか方法はないということであった。この決意を海軍大臣に対して手紙に書き、信頼出来る部下に手渡しさせる。そこから、秘密裏にハワイ奇襲攻撃の作戦は進めていたはずだった。
しかし、秘密は微かな穴から漏れる。東京のある教会のアメリカ人宣教師の元へある日本人から「日本はハワイを奇襲攻撃するつもりだ。」という情報が伝えられる。愛国心によりアメリカとの戦争をどうしても避けたかったその日本人は、その宣教師が実はアメリカ軍のスパイであることを知っており、アメリカ海軍極東課の情報士官テイラー中佐とも知り合いだった。
日本のハワイ奇襲攻撃作戦について複数のところから情報を得た、テイラー中佐は、ケニー・サイトウという日系アメリカ人に白羽の矢を立て、日本にスパイとして送り込む。サイトウはアメリカでは差別されて育ち、スペインで義勇兵として戦い、その後、殺し屋となっていた、アメリカにも日本にも帰属意識の無いアナキストだった。サイトウは日本語、日本海軍の艦船の見方、武闘、暗号解読などの訓練を受け、偽のパスポートを用意され、日本に送りこまれた。
日本でのサイトウのスパイ活動を助けたのは、先に登場したアメリカ人宣教師(彼は、南京大虐殺で中国人の婚約者を日本軍に虐殺され、日本に恨みを持っていた)、それから「日本に全てを奪われた」という在日朝鮮人だった。アメリカ人宣教師スレイセンは、親しくなった日本海軍の技術者を騙して、暗号通信機を作らせ、サイトウに渡す。
サイトウは海軍の要人の家に忍び込み、ある重要な海図を目にする。何処かの島の何処かの湾。日本地図を端から端まで目を凝らして見ると、それが千島列島の中の択捉島の単冠湾(ひとかっぷわん)だと分かった。
ハワイ奇襲攻撃のために日本艦隊が集結するのが択捉島の単冠湾だと分かり、スレイセンの情報からも大体の時期が分かったサイトウは択捉島に向けて、暗号通信機を持って出発する。その頃、サイトウがアメリカのスパイだと察した日本の憲兵は追いかける。
サイトウは追っ手を避けるため、わざと直通の汽車を使わなかったり、途中でヒッチハイクをしたり、家族連れのふりをしたり、最終的には舟を盗んだり(その過程で殺人を犯したり)して、足跡を残さずに単冠湾に到着する。一方、追いかける憲兵のほうは、サイトウの行き先も目的もはっきり分からず、偽装にも気付かないので、てんやわんやである。
サイトウは択捉島では、駅逓(馬を交換する所)の美しい女主人ユキとその使用人、宣造の好意を受け、正体を隠して匿われる。ユキはロシア人との混血児で私生児、宣造はクリル人。どちらも差別されているので、サイトウとは通じる所がある。
ある日、単冠湾に日本海軍の艦船が何隻も集結しているのを見た日から、サイトウは冬は稼働していない鯨の加工工場の発電機を利用して、暗号通信機を動かし、アメリカに暗号を送り続ける。そして、四日後、いよいよ出撃の様子。そのことを打電しようとした時、ようやく憲兵もサイトウに追いつき……。
結局、アメリカ側は日本の真珠湾攻撃に関する複数の警告を無視し、奇襲攻撃は成功した。
日米開戦の前、米国海軍情報部が日本国内に複数の協力者からなる諜報網を作り上げていたこと、「フォックス」のコードネーム(この小説でのサイトウのコードネーム)により、択捉島単冠湾から11月26日まで日本海軍機動部隊の出撃を報告する暗号電があったことは史実であったらしい。
国という大きな組織が戦争に向かって動いてしまっているときに、愛国者とは言えないアウトサイダーのような人達が、その大きな流れを変えるかもしれない活動を陰で、日本の端っこで行っていたということが興味深く、ハラハラすることだった。それが善であったか悪であったかは、その当事者にも今の私達にも言えないのであるが。
サイトウの持つハードボイルドな雰囲気にうっとり。テレビドラマでのサイトウ役の俳優さん、かっこよかったんだけどなあ。今は全然見ないな。
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Posted by ブクログ
ネタバレ警官の血とセットで最高得点。
ぜったい警官の血から読みましょう。
思えば、警官の血で、加賀谷というキャラは違和感がありました。
親子三代にわたる敵とは無関係でした。
警官の一つの姿として、和也の咬ませ犬となるには、妙にキャラが立ちすぎていました。
もったいないというより、妙に浮いていました。
その異物が、この作品で、これほどまでに生きてくるとは…
あまりないことですが、読後即2度読みしました。
「一人前にしとけばよかった」は最後の「手間かけさせやがって」につながります。
健康診断に引っかかったと思える描写ではフラグが立っていました。
作者の職人芸ですね。
回収されていない部分もあります。
江藤の後ろにいる人物への追い込み。
和也や加賀谷の周りに人々とのその後も気になります。
しかし、もう、これで終わらせていいでしょう。
腹いっぱいにさせられました。満足です。