あらすじ
定年後の嘱託も辞め、独り暮らしの沖本信也。そこに幼い少女を連れた女性が現れた。テロと銃撃が横行する日本で、信也は二人を守り抜くと決意。役所勤めの経験を生かし、意外なルートで軍事境界線を突破、あらゆる危機を回避していく。だが、なぜそこまで身を懸けるのか? 緊迫の頂点で、秘めた言葉が血と嗚咽とともに迸る!
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Posted by ブクログ
東日本大震災と南海トラフ大地震のダメージを受け、戦乱の真っ只中の近未来or異次元の日本。隠遁生活を送る沖本は大学時代の旧友の娘真智とその娘由奈の逃亡を助ける。沖本と真智の関係は?このような設定でも作者さんのハードボイルドの味付けは健在。意外に評価が低いのは残念!
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佐々木氏のIF小説は本当に面白い。日露戦争に日本が破れてロシアの属国となっていたらという過去のIF小説も面白かったが、本作は近未来の日本が内戦状態になり、国連平和維持軍が統治するIF小説で、本当に有り得そうな恐怖をもって一気に読ませてもらった。現在の全ての面で衰退しつつある日本の姿から、この小説の舞台設定が全く想像できなくはないということが最も恐ろしい。かつこの舞台設定の中での脱出逃避行のリアルさと劇的なラストまでの持っていき方は、流石に名人芸の域。最後の主人公の被弾を「弾傷ではなく、悔恨と恥辱と無念が、胸を内側から張り裂いた」と書き切る何ともドラマティックな幕切れに胸が熱くなった。
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近未来、戦争と内戦で荒廃する日本が舞台となる逃避行劇。背景が徐々に明らかになるのが中盤からなので多少もどかしいが、後半は一気に読み切った。
内戦状態の国々や戦禍のウクライナで起きている事は、多くの日本人にとって対岸の火事としか思えないかもしれない。しかし、日本が同様の事態に陥る事はあり得ず荒唐無稽なフィクション、と誰が言い切れるだろう?
Posted by ブクログ
始まりから別れを予感させるような流れで、ゆっくりと幕を開けたかのように思えた。
だがそこは、まったく予測もしていなかった近未来の様子。
沖本信也は、役所を定年後、嘱託として働いていたが7年前のあの病気の大流行の時に妻を亡くし、息子家族は、南海大地震の際に亡くなっていた。
今は、ひとりで内戦のなか生活していた。
そこへ、昔の友人の娘が少女を連れ逃げてきた。
2人を匿い、安全なところへと送るはずが危険な流れの中、いっしょに逃避行することになる。
追われる母娘を安全なところへと…ただそれだけだと思っていたが、ラストがすべてを物語っていた。
まったく身寄りもなくこのような状況になったときにいったいどのような行動ができるのだろうか。
明日はどうなるかわからない未来。
何を思い、伝えるのだろう。
Posted by ブクログ
架空の近未来日本での逃避行は、偶然ではなく、必然だった。
戦争からの国際平和維持軍の駐留と国土の分断、内戦と難民。近年世界で起きていることを日本に置き換えて描かれて、悲惨な難民の状況の一端を感じられた。
ただ、架空世界にいまひとつ入り込めなかった。
Posted by ブクログ
仮想近未来がおぞましく描かれる。福島第一原子力発電所の事故処理に追われる現時点までの歴史は、史実に沿っている。その後「あの病気」の蔓延と南海トラフ地震に見舞われたようで、日本経済は凋落の一途だ。アジアでは朝鮮半島が高麗連邦という統一国家となって日本を凌駕し、「あの戦争」に至る。衰退した日本はわずか40日であっけなく降伏すると、傀儡に甘んじつつ同盟国として縋ってきた米国にさえ牙を向かれる。そして内乱で、もはや立ち直る手立てなし。主人公の沖本が同じ時代の生まれに設定されており、笑うに笑えぬどころか恐怖が募る。