佐々木譲のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ第二次大戦直後、当時日本で開発された最新鋭の零戦に乗り、日本からドイツまで敵国の目をかいくぐりながら航行して行く。史実には残されていない、歴史の裏側を描いた冒険譚。
小さい文字で500ページ超の大作ですが、半分は零戦が飛び立つまでの、関係各位の思惑の描写。早く本題に入ってくれと思いつつ、綿密に描かれる時代と人物の描写は退屈どころか読み応えがあって面白く、後半への期待感も高まります。
と思っていたら、実際の飛行場面は意外にあっさりと各中継地点にたどり着き、ラストシーンもサクっと終わってしまいました。もうちょっと後半の描写を充実させても良いかなと思いました。安藤大尉を筆頭に、魅力的な人物たちが -
Posted by ブクログ
ネタバレ妻を殺害された真鍋と、夫のDVから逃げる祐子。真鍋の妻を殺害した川尻と、祐子の夫である門脇。彼らがそれぞれ出会い、一方は癒され合い、一方は協力してそれぞれのターゲットを狙い、追跡を始めます。
復讐心に取り憑かれた真鍋がそれだけを生き甲斐に立ち直るも、祐子との出会いと彼女と過ごす中で復讐心を消し去り、また祐子自身も傷ついた心が癒されて行く様は感動的。
一方、支配欲の固まりである門脇が警察官という立場と社会的信用をフル活用し、祐子を追跡する様子の異常さには戦慄が走るほど。そして少年院を出ても人として根本的に何も変わっていない川尻の人間としてのカスさ加減…そして、コイツらが“ユニット”を組み、真 -
Posted by ブクログ
たとえはるか彼方のベルリンへ飛んで行こうと、警察内部へ深く入り込もうと、今でも『真夜中の遠い彼方』(1984年。後に『新宿のありふれた夜』と改題)、『夜を急ぐ者よ』(1986年)、『夜にその名を呼べば』(1992年)の、いわゆる「夜三部作」をこよなく愛してやまない私ですが、この本、昨年12月にポプラ社の文庫が出たばかりなのに、さすが直木三十五賞の受賞に伴って旧作を求める新しい読者のためにということでわずか7か月後の集英社文庫の登場ですが、同文庫としては1990年の初版の単なる再版だと思ったら違いました、これは船戸与一の圧倒的な熱狂的解説が加わった改訂新版なのです。
恥ずかしながらあわて者の私 -
Posted by ブクログ
著者・佐々木譲をして、「激動の時代の幕開けのまさにその瞬間に立会い、その後に続く動乱の時代を、有能な官僚として、すぐれた技術者として、才ある文人として、それになにより、見事なまでに武士らしい武士として生きた男」と言わしめた中島三郎助の半生をていねいに描いた一冊。
「くろふね」の中にも江川太郎左右衛門英龍は登場する。
中島三郎助に、彼が興味をもっている測量や砲術、海防などについて、新しい風を送り込んでくれる重要な人物だったのだ。
江川太郎左衛門による海岸防備の目的の江戸湾の測量のシーンや、高島秋帆による徳丸ヶ原での演習シーンなどは、具体的でとても興味深いシーンとなっている。
江川太郎左右衛門英 -
Posted by ブクログ
佐々木譲、直木賞獲りましたね。今更ながらの感もするけど、まずはご同慶の至りということで。
さて本書、戦後から現代に至る昭和の時代の中で、親子三代に亘って警察に奉職した家族の物語。
ウチで例えると清二が父で、民雄が私で、和也の時代は私の二人の息子たちの時代ということになるのか。確かに私たちはこういう時代を生き抜いてきたよなぁ、と嘆息する。
第一部で語られる、戦後の貧しく荒廃しているけれど復興の槌音と共に皆が一心不乱に生きてきた時代。
駐在となった安城清二やその妻・多津の慎ましやかで実直で生き様がしみじみと身に沁みて、烈しさの中に長閑さもあった時代の何気ない会話や描写に涙する。
しかし第二部、高度 -
Posted by ブクログ
7年前に妻と生まれて間もない娘を、当時未成だった少年に殺された真鍋。
少年は成人であれば死刑だったが未成年ということで無期懲役になった。
その日から真鍋は仕事への意欲も失くし、酒に溺れる日々を送っていた。
一方、警察官の夫にDVを受けている、主婦で5歳の息子を持つ祐子。
暴力を受け病院に行くと医師には警察に届けた方がいいと勧められるが、その後の報復が怖くてとても出来ない。
だが、とうとう耐えかねて家を出る。
そんな2人が工務店の社長と、たまたま駅でのある事故に遭遇したことから、その社長の元で働くことになる。
ただ、2人に忍び寄る黒い闇。
おぞましい悪意に目を覆いたくなる後半。
あまりにも衝撃的