佐々木譲のレビュー一覧
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ネタバレ第二次大戦直後、当時日本で開発された最新鋭の零戦に乗り、日本からドイツまで敵国の目をかいくぐりながら航行して行く。史実には残されていない、歴史の裏側を描いた冒険譚。
小さい文字で500ページ超の大作ですが、半分は零戦が飛び立つまでの、関係各位の思惑の描写。早く本題に入ってくれと思いつつ、綿密に描かれる時代と人物の描写は退屈どころか読み応えがあって面白く、後半への期待感も高まります。
と思っていたら、実際の飛行場面は意外にあっさりと各中継地点にたどり着き、ラストシーンもサクっと終わってしまいました。もうちょっと後半の描写を充実させても良いかなと思いました。安藤大尉を筆頭に、魅力的な人物たちが最も活躍していた所だっただけに、もっと彼らの営為を読んでいたいと。
本作に続く作品は舞台や登場人物もだいぶ違うようですが、ベルリン到着後の安藤大尉の活躍ぶりも読んでみたいなぁと思いました。叶わぬ願いでしょうけど… -
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ネタバレ妻を殺害された真鍋と、夫のDVから逃げる祐子。真鍋の妻を殺害した川尻と、祐子の夫である門脇。彼らがそれぞれ出会い、一方は癒され合い、一方は協力してそれぞれのターゲットを狙い、追跡を始めます。
復讐心に取り憑かれた真鍋がそれだけを生き甲斐に立ち直るも、祐子との出会いと彼女と過ごす中で復讐心を消し去り、また祐子自身も傷ついた心が癒されて行く様は感動的。
一方、支配欲の固まりである門脇が警察官という立場と社会的信用をフル活用し、祐子を追跡する様子の異常さには戦慄が走るほど。そして少年院を出ても人として根本的に何も変わっていない川尻の人間としてのカスさ加減…そして、コイツらが“ユニット”を組み、真鍋&祐子の“ユニット”を追う様はとてもスリリングで、序盤からエピローグまで、一時もダレることなく読破することができました。
かなり前にドラマにもなっているそうなのですが、まず機会ないと思いますがチャンスがあったら観てみたいなぁ。 -
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たとえはるか彼方のベルリンへ飛んで行こうと、警察内部へ深く入り込もうと、今でも『真夜中の遠い彼方』(1984年。後に『新宿のありふれた夜』と改題)、『夜を急ぐ者よ』(1986年)、『夜にその名を呼べば』(1992年)の、いわゆる「夜三部作」をこよなく愛してやまない私ですが、この本、昨年12月にポプラ社の文庫が出たばかりなのに、さすが直木三十五賞の受賞に伴って旧作を求める新しい読者のためにということでわずか7か月後の集英社文庫の登場ですが、同文庫としては1990年の初版の単なる再版だと思ったら違いました、これは船戸与一の圧倒的な熱狂的解説が加わった改訂新版なのです。
恥ずかしながらあわて者の私は、初め主人公の原口泰三を、原口統三と読み間違えたりして、ええっと、ほら、間違えた方の彼って、例の『二十歳のエチュード』を残して19歳で逗子海岸で入水自殺した詩人ですけれど、それはともかく舞台となった那覇の夜とか暑さってどんなだか無性に知りたくて、突然ひとり飛行機に乗った高校生の頃から佐々木譲には痺れまくっていたわけです。 -
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著者・佐々木譲をして、「激動の時代の幕開けのまさにその瞬間に立会い、その後に続く動乱の時代を、有能な官僚として、すぐれた技術者として、才ある文人として、それになにより、見事なまでに武士らしい武士として生きた男」と言わしめた中島三郎助の半生をていねいに描いた一冊。
「くろふね」の中にも江川太郎左右衛門英龍は登場する。
中島三郎助に、彼が興味をもっている測量や砲術、海防などについて、新しい風を送り込んでくれる重要な人物だったのだ。
江川太郎左衛門による海岸防備の目的の江戸湾の測量のシーンや、高島秋帆による徳丸ヶ原での演習シーンなどは、具体的でとても興味深いシーンとなっている。
江川太郎左右衛門英龍と言う人は、中島三郎助に最初に影響をあたえた人物だったのだ。
本を読むごとに、韮山の世襲の代官にこんなに優れた人がいたということを、改めて知らされることになる。すでに彼の功績を知っていても、新しい情報は、それを上回る興味深い業績がでてくるのだ。こうなると、幕末のわが国の海防論のようなものを通して読みたくなってしまう。
その人物に影響され、さらに独自の興味である大型艦船の建造について学び、日本で最初の西洋式軍艦を建造してしまう中島三郎助。彼のすばらしさは、座学や知識では満足しないところにある。あくまでも実践の人である。そのような意味では、幕府側でも最優秀なテクノクラートの一人であったわけだ。その証拠に、吉田松陰も桂小五郎も中島三郎助に造船術の教えを請う手いる。桂などは、中島家に長逗留して学んでいる。
中島三郎助は、その後、長崎海軍伝習所伝習生となって長崎へ。言葉巧みで目先の効いた勝海舟とはそりが合わなかったため咸臨丸のアメリカ渡航メンバーからは外れてしまうが、機関士としても航海士としても中島三郎助は勝海舟などよりはるかに優れた人物だったと分かる。
「日本の近代は、この男、中島三郎助の屍をこえるところから始まったのである。」この言葉が言わんとすることが分かる。中島三郎助とはそのような男だったのだ。 -
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佐々木譲、直木賞獲りましたね。今更ながらの感もするけど、まずはご同慶の至りということで。
さて本書、戦後から現代に至る昭和の時代の中で、親子三代に亘って警察に奉職した家族の物語。
ウチで例えると清二が父で、民雄が私で、和也の時代は私の二人の息子たちの時代ということになるのか。確かに私たちはこういう時代を生き抜いてきたよなぁ、と嘆息する。
第一部で語られる、戦後の貧しく荒廃しているけれど復興の槌音と共に皆が一心不乱に生きてきた時代。
駐在となった安城清二やその妻・多津の慎ましやかで実直で生き様がしみじみと身に沁みて、烈しさの中に長閑さもあった時代の何気ない会話や描写に涙する。
しかし第二部、高度成長期を迎え知恵熱のように学生運動に浮かされた世の中にあって、父を追って警官になった民雄に課せられる過酷な任務に、同じ時代を生きてきたとの思いが吹っ飛ぶ。
二つの事件の謎が時を超えて親子を貫き、警官の血はどのように引き継がれていくのか。まだ途中だけど、既にずっしりと重い読後感。