佐々木譲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
佐々木譲『時を追う者』光文社文庫。
佐々木譲の作品としては非常に珍しい、タイムトラベルにより過去に遡り、歴史を変えようとするSFのような冒険小説であった。
遥か昔、光瀬龍の『夕映え作戦』や半村良の『戦国自衛隊』、筒井康隆の『時をかける少女』などタイムトラベル物の小説が流行った時代があったが、今の時代にタイムトラベル物を読んでみると、あの頃の読書の楽しさが蘇えるようだった。
歴史を変えることは出来ないということは最初から分かっているのだが、心の中にはどうにか歴史を変えてくれたらという思いもあった。
陸軍中野学校出身の元破壊工作員の藤堂直樹は、終戦から4年後の1949年に歴史学者の守屋淳一郎により収監されていた警察署から連れ出され、物理学者である和久田元と面会する。
藤堂は、2人の学者から開戦前の過去に遡り、戦争を始めた首謀者たちを排除し、開戦を阻止して欲しいという突拍子もない依頼を受ける。最初は学者たちの依頼を拒んでいた藤堂であったが、のっぴきならないトラブルに巻き込まれ、やむ無く元部下の与志と千秋を伴い、過去に行くことを決意する。
藤堂と与志、千秋は学者たちの導きにより、予定していた時代とは少しズレた1931年に辿り着く。さっそく3人は満州に渡り、戦争を始めた陸軍参謀たちを排除すべく、行動を開始する。
そして、歴史は変わる……
本体価格1,100円
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Posted by ブクログ
(上下巻)
「血」とは三代に亘って、地域警護に勤めた警察官の「血脈」を表す物語である。
第一部 清二
戦後の混乱を警戒して、警視庁は警官の大量募集をした。復員して定職のなかった清二は、それに応募して採用された。
研修中に3人の親友ができ、希望通り谷中の派出所の巡査になる。公園には浮浪者が溢れ、孤児も住んでいた。
ここで仲間同士の争いがあり、ミドリというホモが殺される。彼はこの事件の捜査を内偵していたが、捜査員でなく、巡査の身分では思うように進まなかった。
派出所のすぐ裏にある天王寺の五重の塔が不審火で燃える。そのとき、不審な動きをする人物をつけていき、跨線橋から落ちて死ぬ。
第二部 民雄
父を尊敬し、自分も地域を守る警官になりたいと思っていた。成績が良かったが進学をあきらめかけたとき、父の同期で友人だった三人が「血のつながらないおじ」だと言って援助をし彼に高等学校の教育を受けさせる。
無事、警察学校に入り訓練を受けることになったが、成績が優秀だったので、急遽北大に行けと言われる。そこではロシア語をべと命じられたのだが、内実は、北大内部の左翼グループの動きを探る役だった。
この、学生生活と偵察員の二重生活は民雄を蝕み、精神を病む。
やがて学生運動は鎮圧され、開放された彼は、父と同じ駐在所の警官になる。
彼はなぜか殉職扱いされなかった父の死に強い不審を抱いてきた。
だが、人質を取って立てこもった指名手配犯に向かっていき、射殺される。
第三部 和也
和也も大学を出て、地域警官になることを選んでいた。だが卒業間際に捜査官の素行調査を命じられる。
彼が内偵を命じられた警官は、加賀谷と言った。加賀谷は一匹狼の刑事として数々の実績を上げていた、暴力団相手の刑事だった。和也は彼からさまざまな訓練を受ける。
一方、祖父の不審死を父が探っていたことを知り、その遺志を継いで行こうとしていた。
加賀谷は地域暴力団の顔になっている。やはり裏で繋がっているのだろうか。
聞き込みで、父に援助した「三人のおじ」は亡くなったり引退していたりする。彼は当時のことを調べていく。
警官三代の物語が、それぞれの時代背景の中でつながっているのが面白い。戦後の荒廃した街で生きている浮浪者や孤児に暖かいまなざしを向ける民雄。
民雄は裏切りの生活の中で壊れていく。父が殉職扱いにならないという警視庁の判断のために、貧しい暮らしを余儀なくされた。しかし彼は父のような警官になることを目指した、だがあたら優秀な頭脳を認められたために特命を受けて利用される。貧しさ故といえるかもしれない。
恵まれた頭脳が生かしきれない環境というものもあるだろう。
和也もやはり組織の中では自由に生きられなかった、上司をスパイするという運命を受け入れなくてはならなかった。
和也の最終章になって事件は解決するが、長い年月をかけた割にはあっけない。調査方法が進んだこともあるかも知れないが、話としてはいささか簡単すぎるように思った。
祖父を殺したのは誰か、早くに思い当たる部分もある。 -
Posted by ブクログ
佐々木譲『樹林の罠』ハルキ文庫。
北海道警察シリーズの第10作。
このシリーズの面白さは同時多発的に発生した小さな事件が何時の間にか一つにつながり、大きな事件の正体が浮き彫りになる所である。
そんな小さな事件を丹念に追い続ける大通警察署の遊軍となった佐伯宏一と部下の新宮昌樹、それを助ける津久井卓と小島百合らが繰り広げるコロナ禍の北海道を舞台にした人間模様が面白い。
ショッピング・モールの地下駐車場で何者かに襲撃され、車の中に拉致されたIT会社社長の桂木陽一がトラックに轢き逃げされる。通報を受けて臨場した大通署機動捜査隊の津久井卓はこれが事故ではなく事件の可能性があることを知る。
その頃、生活安全課の小島百合は駅前交番で保護された9歳の女児の引き取りに向かう。女児は母親と離婚した父親に会いたいがために旭川から単身で札幌まで特急を乗り継いで来たのであった。
一方、脳梗塞で倒れた父を引き取るために小島百合と別れた佐伯宏一は、仕事と介護の両立に戸惑っていた。そんな佐伯には轢き逃げ事件の捜査には声が掛からず、弁護士事務所荒らしの事案が舞いむ。
轢き逃げ事件と9歳女児の保護、弁護士事務所荒らしという無関係の事案はやがて一つの大きな事件へとつながっていく。
本体価格780円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
プロローグ
時は、1941年冬
鈍色の空が低く垂れ込み、海は重たい鉄板のようにうねっている
流氷の破片が軋む音が島全体のうめき声のように響く
遠く、霧の向こうでカモメが嘶く
その鳴き声は、希望ではなく恐らく警告か!?
コントラストの強い影と光が交錯しこの島は今日も
黙ってそこにいる
そう、その島とは択捉島に他ならない!!!
今、不穏な物語が始まろうとしている、、、
本書
『エトロフ発緊急電』1989年刊行圧巻の★5
おびさんの本棚から
おびさんのレビューでビビビッときた!!!
最初の頁を捲る
はしがき〜プロローグで物語は始まるがその時点で
ノックアウトだ
740頁にも及ぶ濃密且つ総重量も相当だが
どの章も面白過ぎて箸休めや息継ぎが出来ない
良い意味でアップアップしながら物語は終結へと
一気に向かっていく
本作は、真珠湾攻撃が主ではない
そこに至るまでの過程や駆け引きが主だ
また、日本が犯した数々の罪も赤裸々に描いている
そして、各国の思惑や思想は前提にあるものの
最終的にそこにあるものは、個だ!
人間が決してあがらう事が出来ない、血や本能、
そして愛という感情の前には誰もが平伏すのである
作中に何度も登場する“アメイジング・グレイス”に
なぞらえた、魂の歌、人間讃歌に他ならない
日本冒険小説協会大賞
日本推理作家協会賞
そして山本周五郎賞の納得の3冠である!!!
エピローグ
荒れた岬の先、朽ちかけた監視塔が一本、空に向かって突き刺さる
錆びた鉄骨は赤黒く、過去の緊張と血の気配を今も孕んでいるかのようだ
足元の苔は濃く、湿った土と混じり合い、踏みしめるたびに鈍い音を立てる
ここでは一歩一歩が、生きている証明であり、同時に島への挑戦でもある
ただ、冷たい風と荒波、そして重苦しい静寂で、訪れる者の覚悟を試す
この島で邂逅した登場人物たちは、何を思い
何を護って生きてきたのか
そして、何を糧に生きていくのか
その答えは、我々読者に委ねられているのかもしれない
完