白井聡のレビュー一覧
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現在のシステムの潮流でのカタストロフィの生じる前の方向転換を撤退論としている。
コモンの再生と撤退ということで、斎藤幸平が、『資本主義から撤退して里山に行くだけでは不十分。何故ならそのままでは、資本主義が里山を含めた環境を破壊するから。』と言っていたところに納得。彼はだからこそ資本主義は止めなければならないという。当方はまだ、サステナビリティは社会という形での対応が必要と思っている。戦争、技術進化などに対応する上で、経済を止め切ることはできないと思うため。
撤退とは、単に行くか戻るかの二者択一を意味しない。そのような二者択一を自分に迫っている世界観とは、全く異なる世界観へのパラダイムシフトを -
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講談社新書の100ページ+αで思想がわかる「今を生きる思想」シリーズのマルクス編。
このシリーズは、最初、そんなページ数じゃあ無理だろうと思ったのだけど、これまで読んだフーコーとアーレントはどちらもなかなか秀逸だった。今、資本主義について考えているので、そんな関心からマルクスを読んでみる。
本は126ページあって、帯にあるように「一気に読める」わけではない。が、全体像を概観したうえで、マルクスの「資本論」の1巻を読み解き、そしてその現代的な意味を語るという構成で、わかりやすいと同時にかなり刺激的であった。
マルクスのいわゆる史的唯物論的な歴史観は、ツッコミどころ満載で、自分のなかでは批判 -
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『永続敗戦論』の、その先へとあるが、まさに『永続敗戦論』の要素をふまえているので、著者の主張の総まとめがコンパクトにまとめられていて、1冊目コレでもいいのではと思う。
『戦後レジームからの脱却』をとなえた安倍晋三は、実際には「戦後レジームの死守」とも呼ぶべき政策を強行してきた。本当の意味での「戦後レジーム」とは? 「脱却」とは、と本書は問う。
本書に寄れば、「戦後レジーム」とは「永続敗戦レジーム」そのものである。日本はアメリカに対してのみ敗戦を認め、アジア方面に対しては認めていないという二重性のなかに生き続けている。しかし、アメリカにとって日本の重要性は決定的に低下した。アメリカに従属するこ -
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ー 新自由主義が変えたのは、社会の仕組みだけではなかった。新自由主義は人間の魂を、あるいは感性、センスを変えてしまったのであり、ひょっとするとこのことの方が社会的制度の変化よりも重要なことだったのではないか、と私は感じています。制度のネオリベ化が人間ネオリベ化し、ネオリベ化した人間が制度のネオリベ化をますます推進し、受け入れるようになる、という循環です。
ですから、新自由主義とはいまや、特定の傾向を持った政治経済的政策であるというより、トータルな世界観を与えるもの、すなわち一つの文明になりつつある。新自由主義、ネオリベラリズムの価値観とは、「人は資本にとって役に立つスキルや力を身につけて、は -
Posted by ブクログ
「資本論」の解説本の中では一番わかりやすいと感じた。資本主義は、ひたすらに生産性を向上させることを追求するものであり、その結果として労働の価値が低下するとの指摘が一番の学んだ点。
共同体の中では、富や労働の貸し借りが頻繁に行われ、人間的な付き合いもする。商品は共同体の間の交換によって発生していた(p.54-55)。近代資本主義が始まると、生産的労働が商品交換を介して行われるようになり、労働力が売り買いされるようになって、共同体の外の原理が共同体を飲み込んでいった(包摂)(p.60)。
マルクスは、生産の目的が商品を売ることによる貨幣の獲得になること(形式的包摂)と、生産過程の全体が資本によ