白井聡のレビュー一覧
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たいへんコンパクトなマルクスの思想の入門書です。
もっとマルクスの思想の現代的な意義にかんする議論に振りきった内容を予想していたのですが、商品形態論や剰余価値論など、マルクス経済学の基礎にかんする説明に、思った以上に多くの紙幅をついやしているように感じました。
もちろん現代においてマルクスを読むことの意義にかんする著者自身の意見も、とりわけ最終章ではかなり踏み込んで語られています。資本主義における疎外が労働者の搾取だけでなく、人びとの考えかたにまでひろくおよんでいることを指摘し、そのことがもたらす閉塞感の正体をついて読者の考察をうながしています。ただそれでも、思いのほか正統派のスタイルの入門書だと感じました。 -
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本書は1977年生で、レーニンを専攻する気鋭の政治哲学者である白井聡氏が『週刊金曜日』などに掲載したものや、書き下ろしの論考を一冊にまとめたものです。白井氏が提唱する「永続敗戦レジーム」の発展形です。
本書は1977年生で、レーニンを専攻する気鋭の政治哲学者である白井聡氏が雑誌『週刊金曜日』に発表した時事評論を中心に、あらたに書き下ろした論考や白井氏が世に出るきっかけとなった、『永続敗戦論』(太田出版)で受賞した石橋湛山賞を受賞した際の記念講演を書き起しなども収録されており、白井氏が提言する「永続敗戦レジーム」の発展形といった内容に仕上がっております。
僕は白井氏の書いたものにはほぼ全て目を通しておりますので(学術論文が基になっている『未完のレーニン 〈力〉の思想を読む (講談社選書メチエ)』(講談社)や『「物質」の蜂起を目指して――レーニン、「力」の思想』(作品者)に至るまで)白井氏の主義主張の「根幹」は一応「理解」しているつもりであり、本書の中でも
「「戦後」の断末魔=安倍政権を歴史の屑籠に叩き込め!」
「永続敗戦レジーム」という構造を用いて歴史的、社会的、精神的に舌鋒鋭く批判を加えております。
本書を読んでつくづく思ったことは、「言論空間」におけるネットの影響の大きさで、本書の中でもネットの中で取りざたされている事象―ヘイトスピーチから(僕は本書を読むまで一切関心がなかった)「ラッスンゴレライ」の話まで…。
読み勧めていくとネットが世の中に普及する「前」と「後」がこれだけ如実にわかる本も類を見ないのではあるまいかと。そんな事を考えておりました。
そして、白井氏の鋭い舌鋒は安倍政権のみならず、一般国民にも向けられるも、沖縄知事選での翁長氏の勝利。2015年に学生団体「SEALDs」を中心に国会議事堂前で展開された安保法制反対デモに一縷の希望を見出しているようです。これからも白井氏のラディカルな論考に期待しております。
※追記
本書は2018年5月25日、KADOKAWAより100頁以上の新章を加えた増補決定版で『増補 「戦後」の墓碑銘 (角川ソフィア文庫)』として文庫化されました。 -
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学生時代、ソ連の威光はだいぶ落ちていたが、レーニンは毀誉相半ばしており、ロシア革命への興味から、『国家と革命』も『何をなすべきか?』も読んだのだが、今回本書を読んでみて、いかに読めていなかったのかを痛感した。
著者は、この2つの著作を精緻に読み解くことによって、レーニンの思想、国家・革命についての考え方を丁寧に辿っていく。決して読みやすくはないが、著者は一つ一つ順を追って論を進めていくので、諦めることなく読み進めていけば、これまで思いもよらない新しい地平に連れて行かれる。
ただ、第3章、第4章ではフロイト思想との関係が論じられるのだが、抑圧されたもの、<死の欲動>についての議論は、正直良く分からなかった。 -
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著者は本書では先進的な事を言っている訳でも、複雑な事を分かり易く噛み砕いている訳でもない。シンプルな事をそのままぶつけているだけだ。
それでも著者の思いが感じられる理由として、右翼の旗は掲げつつもその延長線上に何か釈然としないものがあれば立ち止まり周りを眺め、納得出来るものがあればそれがいかに左翼の持ち物であっても採り入れる、懐の深さが挙げられると思う。
やがては著者一個の愛国心として確固たるものとなっていく。右翼でもなく左翼でもない、鈴木邦男のこころ(一種の保守正道とも言えようか)が本書に書き連ねられている。
ふたば書房紫野店にて購入。 -
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今回まとめて読んだ新書群は、ほとんど自分が書店で選んで入手したってこともあるんだろうけど、驚くほど似た主旨のものばかりになってしまった。興味の対象だから仕方ないとはいえ、もっと多方面的に選書しないとって、ちょっと反省。それはさておき、本書も内田印の安心の一冊。新たな戦前よろしく、もはや新たな戦中って主張にはドキッとしたけど、言われてみれば…ってところ。何を言ってもどうしようもないなら、いっそ行き着くところまでっていう、加速主義も確かに分からんこともないんだけど、やっぱり自分としては、あくまで内田さんの言うような、ソフトランディングを期待してしまいます。中高一貫でキャラが固定、体育座りは自分を縛る、などなどいちいちごもっとも。
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2020年、COVID-19が席巻した世界では次々と社会の歪みが露呈した。そのコロナ期とポストコロナ期に、次世代の若者たちがどう生きるべきかを内田樹をはじめとした様々な年代の言論人たちが語る。
内田さんが声をかけて集まった様々な分野の今をときめく著名人たちがコロナとコロナ後の世界をテーマに執筆しました。内田さんのセレクトだけあってみんなけっこう尖っていて(偏っていて)どれも読み応えのある内容でした。中学生向きということで平易な文章で一編が短いのも読みやすくていいと思います。そしてみんな分野が違うので、コロナ期というものを違う角度から見ているのも面白い。また、分野が違っても結局、多くの著者が今世紀に入ってからの日本の教育が間違っていると言及しているところが内田さんセレクトらしくていいし、実際にその通りだと感じます。
近代に入ってから特徴的なのは膨大な富を得た後に残る負債を残らず次世代に押し付けるところ。これを明確にあぶり出したのがコロナで、コロナがあってもなくても次世代の若者たちは老人たちのケツを拭きながら生きる羽目になります。そのことに若者たちと、おそらく現役世代に含まれる私たちがどう向き合って生きなければならないのか、時代のまさに転換点に生きているということを感じさせる本でした。
特にキューバを例とした無料医療に言及した三砂ちづるさんの章が勉強になりました。ということでゲバラの若き日の旅路を描いた「モーターサイクルダイアリーズ」も併せてお楽しみください。この映画はすごくよかった。本も出てる。
あ、あとバランスを取るために武田邦彦の「君が地球を守る必要はありません」もどうぞ。 -
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少子高齢化社会でも経済成長を続けることは、お米が足りないのにおにぎりをもっと作れって言ってるようなものなのかな。無理よね。
まず、無理を認めること。
それから、資本主義社会の外の世界があることを知り、体験し、その世界の間でバランスをとっていくことが鍵だと思った。
・大切なことを持続させるために、我々はこれまでの手法からの撤退を学ぶべきなのである。
・社会の内と外、此岸と彼岸、文明と自然、常識と非常識などなど、二つの原理を行ったり来たりすることで、問題を「なんとなく」暫定的に解決する。これが地に足を着けることである。
・現代における下野とは、他社のニーズを全く気にせず、とにかく徹底的に主観を認めることだと言えます。
・僕らが生きている時間の中には、大きく分けて二つの相があります。ひとつは必ず前に進む「文明の時間」、もうひとつは循環し回帰する「自然の時間」です。猫には、循環する時間だけが流れているのです。彼らにら「進歩」の概念がない。
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斎藤幸平さんの名前があったので読んでみた。
一番心に残ったのは平川克美さんの文章だろうか。会社勤めするようになって当たり前のように見聞きしてきた経済合理性。原価を絞り、無駄を排除して、より低価格の製品を提供する。お客様の要望に応え、お客様が期待する以上の価値を生み出すこと。製造業をはじめ、経済はそのようにして成長するものだと思っていた。
しかし、現在は総供給が総需要を上回っている状態。必要ないものを売るための広告やマーケティングなど、ブルシットジョブ(この本で言及してる人の多いこと!)が蔓延し、限られた利潤を確保するために「集中と選択」という言葉に現れるように、偏った資源配分をし、競争優位性のない部門は排除すべきとの考え。この競争優位性、経済合理性といった考え方は、巨大企業や金融市場が成長を続けるために流布されたもの。これが人々の価値基準や判断基準のモノサシとなり、格差やブルシットジョブを生み出すことになった。コロナ禍はその脆弱性を露呈させた。無駄を排除した結果、緊急時の備蓄がない、余剰人員を持たない保健所や医療現場、高齢者より若者を優先すべきだとの優生思想。さらに、経済かコロナ対策か、という議論自体が、経済合理性というただ一本のモノサシで語られているということ。
大学生活が単に勉強をすること、即ちオンライン授業さえ受けていれば事足りるのとは違うということもコロナ禍で見えてきた。
仕事とは何か、大学とは何をする場なのかを再考する機会を持とう、社会で当たり前とされる考え方、メディアの喧伝するものに次第に染まってしまう危うさを意識するようにしよう、そう思った。