藤谷治のレビュー一覧

  • ニコデモ

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    様々な視点の一人称で語られる、ある音楽家の数奇な運命。
    音楽と人との巡り会わせとその語り口に、不思議と引き込まれてしまった。

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    2022年04月30日
  • ニコデモ

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    タイトルの意味わからん、なんだこれ・・・ファンタジーか、
    こりゃ、挫折するね・・・の読み始めに対し、
    途中からグイグイ引き込まれる。

    今、遅まきながら「ニコデモ」をウィキで調べ、
    小説の展開が腑に落ちた次第。
    当初は、主人公のこの名前に違和感があったのだけれど・・・
    そういうことだったのね。

    そうと知らず手に取ったけれど、ひとつの大河小説だったのだと、
    胸が熱くなる。

    藤谷作品としては、今までにない異色の作品ではないかな。
    それでも、必ず、通奏低音のように音楽が語られているところが
    藤谷さんらしくて、いい。

    ちょうど今ドビュッシーの「レントより遅く」を練習中で、
    パリのけだるい雰囲気の

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    2022年04月01日
  • 世界でいちばん美しい

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    音楽に纏わる小説は、知りたくて決して解ることのできない厳しいような苦しいような側面を垣間見せる。絞り出すように書かれた随所に息を詰めながら、また、せった君の口調や折々精一杯に考えた末のことばに沁み入りながら読ませていただいた。
    美しい、とは圧倒的にその世界に集中していること、それは羨みとか妬みを完全に超えてただそこにある姿。生き方。
    自分たちの生きた、ということが、尊い実りではなくても、大地へ落ち滲みていく一滴の雨であるように、虚しいところから目を背けないまま、美しいもの、幸福、思いやりを創造しようとするおこないが生の本質、との言葉に、思わず背を正し、深く息を吸う。
    印象的なエピソード「五十の

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    2022年01月09日
  • 小説は君のためにある ──よくわかる文学案内

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    本を読めばいくつもの人生を体験する事ができる、という言葉はよく耳にしますが、この本は“何故”そうなのかを分かりやすく親しみやすい言葉で教えてくれます。本を読んで情報を得るのではなく、経験を得る為にはどうすれば良いのか……

    読み終わった後、自分の本棚に並ぶ本たちが愛しく思えます。

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    2021年07月19日
  • 船に乗れ! I 合奏と協奏

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     音楽高校の青春小説。
     主人公の津島サトルは音楽一家の息子。一家の敷いたレールに乗り、チェリストを目指し、東京芸術大学附属高校を受験するが、失敗し祖父が学長を務める私立の音大の附属高校へ進む。
     ちょっと身近にはいない、雲の上の存在。でも、音楽高校には音楽高校の青春がある。
     サトルも友人ももちろん「上手い」と言われたくて日々個人練習に励む。昼休みなどの時間も惜しんで。
     しかし、音楽高校の活動はソロとしての練習のみではなく、合奏の練習も厳しい。毎年、音楽科全員によるオーケストラの発表がある。殆どの学生がピアノ専攻なので、メンバーのいないパートはピアノの専攻の学生が副専攻として、弾いたことの

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    2020年10月16日
  • 小説は君のためにある ──よくわかる文学案内

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    ネタバレ

    なぜ小説など読むのか。いったい何の役に立つのか。そんな無粋な質問をしてくるような人が目の前に現れたら、スッと差し出したくなるような一冊でした。非現実の自由な世界に国語のテストのような正解はなく、誰かの評価はその人自身のもので、読んだ本人が自分で評価しないと意味はない。そのことを踏まえた上で、同じ小説を読んだ人の感想に触れるのは楽しいですし、多様性を認識する訓練にもなるのではないかと思いました。

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    2021年04月08日
  • 猫がかわいくなかったら

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    文庫の表紙からもっとお気楽な猫ちゃんの内容かと思ったら 現代の社会問題である高齢化を考えさせられる話だった。
    望月夫人は悪い人ではないが、高齢が故に 自分の飼っていた猫ちゃんについて思考が追いつかなくなってしまっている これからこのような問題は増え続けていくのだろう
    自分はがどうにかなった後を考えたら 子どもがいない人は猫は飼いたくても飼えないのだろうか

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    2020年02月08日
  • 花や今宵の

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    ネタバレ

    過去と現在と、いろいろな未来と、
    時間が異なるつなぎ目も読みやすく
    歴史あり、少しの物理学あり、とても面白く印象にのこる1冊でした。

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    2019年12月20日
  • 明日町こんぺいとう商店街2 招きうさぎと六軒の物語【電子限定特典付】

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    ちょっとさびれた商店街?
    第1集から続けて、いやこんな商店街あったら人が溢れそうじゃやない?と思ってしまう素敵なアンソロジー。
    今集も、初読み▶もっと読んでみようと思える作家さんにであえました。第3集も楽しみー!

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    2019年12月21日
  • 船に乗れ! II 独奏

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    まさかの展開に驚きだった。一生懸命に生きているのに、それが故に犯す過ち。それは若さゆえとは言い切れない、人間なら誰しもが起こしうる過ちなのかもしれない。サトルの絶望も、南の嫉妬と行動も。金窪先生という友人であり師を陥れてしまった過ちも。人生というリセットできない環境で、サトルは今後なにを思いどう行動するのか。今これを書いているサトルはどういう状況なのか。音楽的な内容は何一つわからない。タイトルの船に乗れという言葉と、今の物語がどうつながっていくのか、心の動きに注目しながら次の巻へと進んでいきたい。

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    2019年05月06日
  • 船に乗れ! I 合奏と協奏

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    あるかしら文庫で読んだ。何も期待しないで読んだが、音楽の知識は全くない私でもそのテンポだったり緊張感だったり、青春の甘酸っぱい感じを存分に感じることができた。蜜蜂と遠雷以来の感覚だった。1巻で終わらないとわかって、先が気になるが、まずは小休止したい。あの熱量をあと2巻味わうのもなかなかハードルが高い。しかも、挫折が待っていそうな予感。まずは、津島と南がいい感じでいい方向にいきそうなところでホッと一息つきたい。また、続きが気になる時に次の巻に手を伸ばそう。

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    2019年04月27日
  • 明日町こんぺいとう商店街2 招きうさぎと六軒の物語【電子限定特典付】

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    アンソロジーで2巻(も3巻目も)出るのって、やはり人気があるからでしょうね。

    今巻も、1巻や他のお話で出たお店や人がちらりと登場していて、それぞれの著者さん同士のリスペクトを感じました。

    近所に、こんぺいとう商店街が本当にあればいいのになぁ。

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    2018年11月27日
  • 明日町こんぺいとう商店街2 招きうさぎと六軒の物語【電子限定特典付】

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    シリーズ第2弾。
    スカイツリーを見上げる下町の片隅に、ひっそりと息づく商店街。
    それが「明日町こんぺいとう商店街」

    明日町こんぺいとう商店街を舞台にした6人の作家さんのアンソロジー。
    『古書卯月』 藤谷治
    『あったか弁当・おまち堂』 あさのますみ
    『水沢文具店』 安澄加奈
    『台湾茶「淡月」』 加藤千恵
    『カサブランカ洋装店』 吉川トリコ
    『やきとり鳥吉』 大沼紀子

    大沼紀子さん以外は初読みの作家さんでした。

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    2018年11月05日
  • あの日、マーラーが

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    ネタバレ

     「船に乗れ!」が代表作の藤谷治の新作。どの小説も自分も音大志望だった作者の「音楽観」が覗き見られて楽しいです。
     これは3.11当日の夜に錦糸町のトリフォニーホールで演奏されたマーラーの「交響曲第5番」を主題に、4人の観客と1人の演奏家のを描いたオムニバスのような作品。このコンサートは2012年にNHKでドキュメンタリーになったほど有名なもので、「音楽の力」か「不謹慎」かで(演奏家個人にとっても)今でも評価が分かれるようです。
     小説の方は多彩な人物の描写がちょっととっちらかってたり、藤谷治の特徴でもある「描写のバラツキ」があったりしますが、安心して読めます。僕が好きなのはコンサート終了後す

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    2017年10月23日
  • 船に乗れ! III 合奏協奏曲

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    完結編。
    だが、何かがスッキリと解決したわけでもないのだ。

    「船に乗れ!」
    誰かからそう叱咤されなくても、誰もが人生という船に乗って、いや、乗せられているのではないか。
    そして、現在の、これを書いている津島サトルは、
    「船に乗ることは乗っているのです。でも僕は、櫂を無くしてしまった」
    そう言っているようだ。

    くたびれた大人になった、津島はしかし、高校の三年間を眩しそうに目を細めて見ている。
    書き切ったところで、告白を終えたところで、少しもすっきりしないと言っているが、彼は音楽と和解しつつある。

    ひとつ。
    私は、南枝里子という女が許しがたい。
    誰もが悩み、思い通りにならない人生にどこかで折

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    2017年02月14日
  • 船に乗れ! III 合奏協奏曲

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    ネタバレ

    青春特有の、何者にもなれるという期待と、結局何にもなれない現実。

    平凡な大人になったサトルの過去の回想。
    どこまでも肥大した自意識が痛い。
    もっと楽に生きられるのに…
    サトルは音楽に対して真摯で、誠実だった。
    南は強く、
    千佳は思いやりに溢れ、
    伊藤くんは潔い。

    ブランデンブルグ協奏曲が、ジュピターが聴こえてくる。
    音楽が輝きを与え、哲学が深みを与え、この作品を力強く、美しい青春小説にしている✨

    私たちもまた、船に乗っているのだろうか…

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    2016年08月26日
  • 本をめぐる物語 小説よ、永遠に

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    今回は私好みのSFっぽい話が多くて面白かった!(^^)でも読み終えてみたら、青春甘酸っぱ系だった千早茜さんの「あかがね色」が一番好き(*^^*)

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    2016年08月09日
  • 船に乗れ! II 独奏

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    一巻の最後では南と付き合うことになり、芸大に行ってデュオを組もうと約束する。順風満帆だったはずの二人に暗雲が立ち込める。
    高二の夏、サトルに持ち上がった二か月間のドイツ留学の話に、あなたは私より才能がないくせにお金持ちだから行けるのだ、と著しく不安定になる南。サトルは留学先から手紙を送り続けるが、帰国後、南の様子があきらかにおかしくなっていく。そして突き付けられた真実。その後主人公がとった卑劣な行為。
    心臓が鷲掴みにされる、苦しい。
    ただの青春小説と侮るなかれ。

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    2016年07月02日
  • 船に乗れ! I 合奏と協奏

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    音楽一家に生まれた津島サトルは、一家の敷いたレールに乗ってプロのチェリストを目指すが、芸高に落ち、失意のまま三流音楽高校に入学する。そこで生涯忘れられない同級生たちに出会う。
    青春音楽、時々哲学。
    大人になった主人公の独白形式で物語は進むが、振り返るあの頃に不穏な空気を孕んでいるのが気になる。

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    2016年06月19日
  • あの日、マーラーが

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    ネタバレ

    東日本大震災が起こった日、東京フィルがそれでもコンサートを強行したという事実をもとに、再構成した小説です。
    さまざまな立場の人間の群像劇になっており、それらはすべてフィクション。
    ただし、だからと言って嘘はないんだと思う。

    色々なバックグラウンドを持つ人々、音楽というものに対する知識も感じ方も関わり方も違う。
    未曾有の大災害に対して何を考えたかも違う。

    何かドラマティックなことが起こったわけでもないし、
    災害に対する音楽の力を強調する作品でもない。

    ただ、あの日、東京にいたみんなが多分感じたことを、キャラクタを通じて描いています。
    それは、罪悪感であったり、東北の現状を知りながら自分のこ

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    2016年03月01日