藤谷治のレビュー一覧
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街の物語、第2弾。
ファッションビルにテナントが入っている、とか、お菓子の箱にケーキのアソートが入ってる、とか、アンソロジーによってイメージはそれぞれだが、やはり、これはまぎれも無く商店街なアンソロジーだ。
家族や親戚のような、血の繋がりでもあるような不思議な統一感。
他のお店の話題が出たり、人物が出たり、ひとつの世界を作り上げている。
中でも伊藤米店のおにぎりの人気ときたら、スカイツリーもうらやむくらい?
幽霊が出たり、逃亡者が立ち寄ったり、商店街の人々に見守られて幕が下りたり、小さな事件を繰り返しながらも生活は続いていく。
どれも良かった -
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さまざまな要素を含む第二部だから、感想を綴るのはとても難しい。
我が世の春を歌う恋人たちが希望に満ちた未来を夢見る冒頭から、二人がそれぞれ償いきれない罪を犯して魂の地獄へと落ちていく、その落差はあまりに大きい。
津島サトルは、南枝里子が行くからという理由で、高校受験の折には一度は不合格となった芸大を再び目指すことになる。
去年と同じく、オーケストラの練習も始まり、伊藤と文化祭で合奏することになり、更に北島先生には生演奏の仕事を持ちかけられるなど、サトルは多忙であった。
更に、祖父の勧めで、ドイツに二カ月の留学に行くことになる。
チェロを学ぶためだ。
彼はそこで…気取った書き方をすれば、
『 -
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音楽に打ち込む若者たちの青春小説。
三部作の第一弾。
津島という苗字は、もしかして、恥の多い人生を送ってきた例の文豪から取ったのだろうかと思ったら、やはりそのようでした。
失ったものを語る口調の回想から入るあたり、何か残念なことが起こってしまったのだろうとは想像するけれど、第一弾は、まだ、華やかな登り坂だ。
滑稽なほど思い上がった可愛げのない子供だった津島サトルは、その鼻っ柱をへし折られて、華麗なる音楽一族の長である祖父が学長を務める「三流の」音大附属高校に情実入学を果たす。
津島サトルが気取った仮面を脱ぎ捨て、素直に音楽に傾倒し、情熱を傾けるようになるまでが、この一冊。
楽器の演奏、 -
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帯の「最後の瞬間、彼はピアノを弾いていた。」に引き付けられ手にした本。後ろを見ると、「余力をまったく残さず書きました。これ以上のものは、書けなかったと思います。」という藤谷氏のサイン入りの言葉。
今年、「船に乗れ!」を読んで感動した記憶がよみがえり、もう、買うしかないでしょ!と即購入。
早速読んでみたら、なにこれ~!せった君の友人、作家の島崎哲って、「船に乗れ!」の津島サトルじゃん。おまけにピアノの北島先生まで出てくるし~。もう、「船に乗れ!」の前日譚、後日譚といったところ。
相変わらずサトルは肥大した自意識に悩まされているが、せった君という友達がいたから、音楽の道を外れても、まっとうに生きて -
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ネタバレ序盤のインテリぶった文体に少し嫌悪感を抱きました。
けれど芸大付属高に落ちたり南枝里子を強く意識するようになると、サトルの“素”の部分がドンドン前にでて来、サトルがとても魅力的な人物に(いいヤツ、という意味ではないです)思えてきました。
サトル以外の人物もキャラが立っているし、演奏や人間関係で上手く行ったり行かなかったりと展開にメリハリがあって、のめり込むように読んでいました。
気づけば一気に読み終えていました。
唯一説明が不足していると感じたのは、南がどうしてサトルを意識し始めたのか、という点。
南はプライドが高そうなので、チェロが上手いと評判だったサトルが気になっていた、というこ -
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ネタバレBook 1st.を見つけるとおススメ本を必ず買う今日この頃。
旅本を買いに入った銀座店で、「いなかのせんきょ」の
著者サイン本を見つけて買いました。
素朴な表紙がほのぼのしていて最近、荻原浩著
「オロロ畑でつかまえて」という田舎本が
面白かったのも手伝いました。
政治だ、選挙だに、恥ずかしながらあまり興味が持てない私。
それがこの本の中で、選挙というものに引き込まれて行きました。
なにかをよくしたい!
政治家の先生程の知識・学歴・家柄がなくてもその気持ちを
かねがね強く持っていて、土地の人たちからの人望もあった
イチ村民がまさかの選挙に候補者となるところから物語は始まります。
独特の -
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とある寒村で数十年ぶりに村長選挙が行われることになった。元村議の深沢清春は、助役に唆されて立候補するも、その助役が突然対抗馬として村内の実力者たちの支持を得て選挙戦がスタートする。
田舎ならではの濃密な人間関係と事なかれ主義、過半数以上の票を押さえられた対抗馬をいかに逆転していくのか。
漫談風の語り口と、深沢一族を中心としたユニークなキャラクターたちが有権者とともに読者を惹き付けていく。
21世紀の選挙は、誰の一票が重くて誰のが軽いなんてことはない。候補者の話をよーく聞いて、どっちが村の将来のためになるのか、自分で判断してほしい。そんな深沢清春の一世一代の演説は必見! -
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小説はなぜ存在しているのか。
小説は実用書やビジネス書、自己啓発本とは違って、読んですぐに役立つものでもないし、体系だった知識を得られるわけでもありません。
「小説を読むなんて時間の無駄だよ」と言う人もいるかもしれない。
でも、「無駄でもいいじゃん」と僕は思います。無駄こそ楽しかったりするし。
それに、「想像力」って人生を豊かに生きるうえでとても大切で、小説なんてまさに人間の「想像力」の結晶です。書く方も読む方も。
想像することって、簡単なようで意外と難しかったりするんですよ。
世の中に「面白い小説」も「つまらない小説」もなくて、あるのは「自分にとって面白い/つまらない小説」だけ。