藤谷治のレビュー一覧
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある、架空の商店街の物語、第2弾。
ファッションビルにテナントが入っている、とか、お菓子の箱にケーキのアソートが入ってる、とか、アンソロジーによってイメージはそれぞれだが、やはり、これはまぎれも無く商店街なアンソロジーだ。
家族や親戚のような、血の繋がりでもあるような不思議な統一感。
他のお店の話題が出たり、人物が出たり、ひとつの世界を作り上げている。
中でも伊藤米店のおにぎりの人気ときたら、スカイツリーもうらやむくらい?
幽霊が出たり、逃亡者が立ち寄ったり、商店街の人々に見守られて幕が下りたり、小さな事件を繰り返しながらも生活は続いていく。
どれも良かったけれど、「おまち堂」と「カサブランカ洋装店」が特に好き。
一軒目『古書卯月』 藤谷治
店を開いて10年。ある日、せどりのサイトウさんから押し付けられた、いわくつきの重たい辞書。
怖いはずなのにユーモラス!
オチも極めつけ。
二軒目『あったか弁当・おまち堂』 あさのますみ
スナックでバイトをする売れない漫画家。
お弁当に入っていた料理に、アシスタントを務めてくれた人を思い出す。
三軒目『水沢文具店』 安澄加奈
都心の小学校の先生をする水沢栞は、落ち着かない学級に自信をなくしかけていた。
ふと入った文具店では、ペンとノートを買うと、そこに主がお話を書いてくれるという。
四軒目『台湾茶「淡月」』 加藤千恵
女性週刊誌の編集をやめて台湾茶の店を出した沼野。
ある日、同じ編集部の学生バイトだった、10歳年下の女性が訪ねてくる。
五軒目『カサブランカ洋装店』 吉川トリコ
父の洋装店を引き継いで、姉妹で続けてきた、節子と妹の治子。
節子は独身、治子は出戻りで、二人きりの家族。
もう70を過ぎた。
六軒目『やきとり鳥吉』 大沼紀子
果穂と高校からの友人、キヨこと有吉希世子。
キヨは男に金を持ち逃げされ、一人で焼き鳥屋を営む。
果穂は、夫に年下の愛人ができて…
人生の苦さと、無条件で受け入れてくれる友の温かさをしみじみ感じる。 -
Posted by ブクログ
さまざまな要素を含む第二部だから、感想を綴るのはとても難しい。
我が世の春を歌う恋人たちが希望に満ちた未来を夢見る冒頭から、二人がそれぞれ償いきれない罪を犯して魂の地獄へと落ちていく、その落差はあまりに大きい。
津島サトルは、南枝里子が行くからという理由で、高校受験の折には一度は不合格となった芸大を再び目指すことになる。
去年と同じく、オーケストラの練習も始まり、伊藤と文化祭で合奏することになり、更に北島先生には生演奏の仕事を持ちかけられるなど、サトルは多忙であった。
更に、祖父の勧めで、ドイツに二カ月の留学に行くことになる。
チェロを学ぶためだ。
彼はそこで…気取った書き方をすれば、
『世界の大きさと自分の小ささ』を知ることになる。
そして、メッツナー先生の最後のレッスンで、音楽に対する認識も変わることとなった。
大きな成長だった。
しかし、その裏で進行する、不気味な旋律。
これまでいろいろな作品を読んで来たが、主人公の相手役というものは、とことん、彼を苦悩させるために存在するものだと思い知った。
彼を苦しめれば苦しめるほど、彼女は大きな存在になる。
そして、その点で南は素晴らしくいい仕事をした。
思えば、彼女はそういう性格だった。
彼女の不幸は身から出た錆である。
そして、自分が不幸になる事によって、サトルをも同じ淵に引きずりこむ。
彼女の行動は陳腐で、ありきたりな転落である。
なのに、どうしてこの小説は、こんなにも格調高いのだろうか。
金窪先生の「最後の授業」も印象的。
そして、佐伯先生を語る時だけは必ず敬語で通しているのも、何か、気になる。 -
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音楽に打ち込む若者たちの青春小説。
三部作の第一弾。
津島という苗字は、もしかして、恥の多い人生を送ってきた例の文豪から取ったのだろうかと思ったら、やはりそのようでした。
失ったものを語る口調の回想から入るあたり、何か残念なことが起こってしまったのだろうとは想像するけれど、第一弾は、まだ、華やかな登り坂だ。
滑稽なほど思い上がった可愛げのない子供だった津島サトルは、その鼻っ柱をへし折られて、華麗なる音楽一族の長である祖父が学長を務める「三流の」音大附属高校に情実入学を果たす。
津島サトルが気取った仮面を脱ぎ捨て、素直に音楽に傾倒し、情熱を傾けるようになるまでが、この一冊。
楽器の演奏、合奏、自分を磨くこと、人の音を聴くことは、スポーツに通じる。
だから、音楽家たちの青春ものは、熱くて爽やかで、輝いている。
前半、哲学の話題が多かったが、津島くんがそういう小難しいことばかり考える少年だったのだから仕方がない。
彼が普通の(才能と育ちを考えると全然普通じゃないが)DKになった、と思った瞬間は、戸田先輩に「オイ!」と突っ込みを入れた時。
そして、普通の高校生らしく、恋に落ちて行くのだ。
美少年・伊藤の眼差しが気になる。
健気なポニーテール・鮎川の語らぬ思いが気になる。 -
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帯の「最後の瞬間、彼はピアノを弾いていた。」に引き付けられ手にした本。後ろを見ると、「余力をまったく残さず書きました。これ以上のものは、書けなかったと思います。」という藤谷氏のサイン入りの言葉。
今年、「船に乗れ!」を読んで感動した記憶がよみがえり、もう、買うしかないでしょ!と即購入。
早速読んでみたら、なにこれ~!せった君の友人、作家の島崎哲って、「船に乗れ!」の津島サトルじゃん。おまけにピアノの北島先生まで出てくるし~。もう、「船に乗れ!」の前日譚、後日譚といったところ。
相変わらずサトルは肥大した自意識に悩まされているが、せった君という友達がいたから、音楽の道を外れても、まっとうに生きて来たんだなあ~。
「世界で一番美しい」というタイトルが何を指しているかは、作品を読むと、切なさや哀しみとともに胸にストンと落ちてくる。
ーー美しい人間とは、人を美しくする人間のことだ・・・
この作品を読んで、私も少しは美しい心になれたかな~
最後の数頁でうるうるきていたが、ラスト1行で我慢できなかった。 -
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ネタバレ序盤のインテリぶった文体に少し嫌悪感を抱きました。
けれど芸大付属高に落ちたり南枝里子を強く意識するようになると、サトルの“素”の部分がドンドン前にでて来、サトルがとても魅力的な人物に(いいヤツ、という意味ではないです)思えてきました。
サトル以外の人物もキャラが立っているし、演奏や人間関係で上手く行ったり行かなかったりと展開にメリハリがあって、のめり込むように読んでいました。
気づけば一気に読み終えていました。
唯一説明が不足していると感じたのは、南がどうしてサトルを意識し始めたのか、という点。
南はプライドが高そうなので、チェロが上手いと評判だったサトルが気になっていた、ということでしょうか?
この点については続く2作目、3作目で明らかにしてほしいところです。 -
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ネタバレBook 1st.を見つけるとおススメ本を必ず買う今日この頃。
旅本を買いに入った銀座店で、「いなかのせんきょ」の
著者サイン本を見つけて買いました。
素朴な表紙がほのぼのしていて最近、荻原浩著
「オロロ畑でつかまえて」という田舎本が
面白かったのも手伝いました。
政治だ、選挙だに、恥ずかしながらあまり興味が持てない私。
それがこの本の中で、選挙というものに引き込まれて行きました。
なにかをよくしたい!
政治家の先生程の知識・学歴・家柄がなくてもその気持ちを
かねがね強く持っていて、土地の人たちからの人望もあった
イチ村民がまさかの選挙に候補者となるところから物語は始まります。
独特の田舎訛りに素人らしい言動と思いつきが可笑しくて、
ニヤニヤしながら一気に読んでしまいました。
村長への候補者が2人だけっていう設定もよくて、
それぞれの陣営に深く入り込む事ができました。
たわいもない選挙戦(?)とも言える、気楽な読み口で
したが、サラサラ楽しく読めてヒットでした☆
あとがきに辿りついたら、なんと、ほのぼのの神様
と内心崇めている荻原浩さんが書いていて、
その萩原さんもこの選挙ネタを温めていたらしく。。。
その悔しさ加減にもまた笑ってしまいました。 -
Posted by ブクログ
とある寒村で数十年ぶりに村長選挙が行われることになった。元村議の深沢清春は、助役に唆されて立候補するも、その助役が突然対抗馬として村内の実力者たちの支持を得て選挙戦がスタートする。
田舎ならではの濃密な人間関係と事なかれ主義、過半数以上の票を押さえられた対抗馬をいかに逆転していくのか。
漫談風の語り口と、深沢一族を中心としたユニークなキャラクターたちが有権者とともに読者を惹き付けていく。
21世紀の選挙は、誰の一票が重くて誰のが軽いなんてことはない。候補者の話をよーく聞いて、どっちが村の将来のためになるのか、自分で判断してほしい。そんな深沢清春の一世一代の演説は必見! -
ネタバレ 購入済み
明日町こんぺいとう商店街の第二弾、六軒。色んな人の色んな人生。水沢文具店の話、何処かで読んだ事が、あるような…………古書卯月の、古書卯月(小正月)犬茂桑奴(犬も食わぬ)ダジャレにもクスッと笑いが出た。