藤谷治のレビュー一覧
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綾峰県綾峰市にある古い県立音楽堂と、そこを活動拠点とする綾峰フィルに俄かに湧き起こった音楽堂の取り壊しとオケの解散問題。音楽堂跡地の有効活用とオケの助成金打ち切りを煽るカリスマDJと、なんとか音楽を、文化を守ろうとする綾峰フィルの関係者の対立。
そんななか、綾峰フィル最後の音楽堂でのコンサート中に、楽屋で男が殺された。その男こそ、音楽堂取り壊しを先導したDJだった。
綾峰フィルの顧問としてたびたび綾峰市を訪れていた音楽評論家であり、英文学教授の討木穣太郎と共に事件を目撃した小説家・フジツボムサオ。
どうみても作者の分身(笑)のフジツボ氏が、いたって冷静に討木氏本人を分析し、ツッコミをいれながら事件と、事件に至った経緯を記していくという作中作。
藤谷さんらしい音楽要素満載の物語はその大部分を綾峰フィル存続の反対派と賛成派のやり取りを中心に語られ、苦しい地方財政の中で文化を維持していくことの難しさや市民オケの存在意義、音楽を守ることの難しさなどに頁の大半が割かれている。
あとで推理に役立つかと一生懸命書き出したオケのメンバーの編成図すら全く必要もなく、肝腎の殺人事件はどどうなったんだ~と思った頃にあっさり犯人と事件のあらましが明らかになり、なんだか完全に添え物じゃん!と思った最後の最後、討木氏が示す事件の裏側にゾワッ。ん~後味わる~。 -
Posted by ブクログ
高三の秋。サトルはチェロを辞めることを決意する。
これだけ音楽の美しさと喜びを知っている人が音楽から離れられるのかとも思うが、十八歳の主人公には0か100かの答えしかなかったのかも。
ミニコンに南を参加させたことは理解できないけれど、妊娠発覚後から彼女がとった行動はとうてい高校二年生の女子ができるものではないので強い人だと思う。
祖父、佐伯先生、脇を固める人が良かった。そして金窪先生との再会。タイトルは先生がくれたニーチェの言葉から。
分かってはいたけれど、主人公がさえない中年になっていたことを少なからず残念に思う気持ちがあったのは、それが甚だしく現実的だったからに他ならない。
ポプラ文庫版ではサトルと伊藤の27年後を描いた短編が収録されていたみたいだけれど、小学館文庫にはなかった... -
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8篇の物語が収められている。
今回の物語に特徴的なのは、「小説とは何か」という疑問だ。
「青と赤の物語」では、物語が禁止された世界を描いている。
物語があるから悪いことをする人がいる、そんな考えを持ったエライヒトたちが物語を禁じてしまったのだ。
全く因果関係はないのに、AだからBと決めつけてしまったのだ。
物語は、文学は、何の役にも立たない。
本当にそうだろうか。
物語は時に残酷なものも、悲しいものも、苦しいものもあり、そんな世界を目にするのは時には恐ろしい。
けれども、そんな世界があるから救われる人もいる。
物語に書いてあることは、どんな物語にせよ、誰かから、読者に、あなたに、向けたメッセージだからだ。
困難な世界に立ち向かったり、悲しみと対峙したり、失敗し、絶望することもあるかもしれないが、それだけが物語の価値ではないのだ。
「ゴールデンアスク」は物語を作る側、つまり作家の姿が描かれている。
よく、登場人物たちが勝手に動きだす、なんて言うけれどきっとこんな感じに違いない。
作家が言う言葉にイラつきながらもいちいち納得させられる。
本を読め、というのは大人が安心したいだけ、なんて。
「あかがね色の本」も同じく作家の側からの物語。
言葉とは難しいもの。
人との関係も難しいもの。
だからこそ、言葉を発し、相手に伝えること、そしてその言葉を信じることは尊い。
あかがね色の本。
きっとこの本はこうしてたくさんの人たちに影響を与えた。
今までも、きっとこれからも。
世界を共有する、それは、人と人とがつながること。
その結晶の一つがが、あかがね色の本だったのだ。 -
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タイトルの通り、小説にまつわるアンソロジー。
ラノベっぽい軽さのものが多くて中高生向けかな。
それでも小説の存在意義を説くような話が読めてなんだか嬉しかったです。
本を読んで驚いたり、感動したり、幸せな気持ちになったり、そういう純粋に読書を楽しんでいた頃の初々しさを思い出しました。
「青と赤の物語」 加藤千恵
「あかがね色の本」 千早 茜
「新刊小説の滅亡」 藤谷 治
この3つが好きです。
私の人生、何度小説に救われてきたんだろう。
探さなくてもいつだって必要なときは必ず寄り添ってくれてた。
その経験はその本とともに、何年経っても何が変容しても移ろわなくて、私にとって本当にかけがえのないものです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ仕事でアメリカに赴任した短い数年の出来事。
日本では地下鉄サリン事件が起きた年で、ワシントンD・Cは大雪が降ったなかで
友人もいない異国での、たった一人での静かな生活。
国籍も様々なそっけない国で誰もが差別に敏感で
風俗店で知り合ったエミイは店を逃げ出して
日本の知り合いはオウム真理教に皆が傍観者だった。
その他短編。
新宿から金沢まで逃亡劇。
メタボ解消のためのサイクリングと、その途中で出会った世田谷の壁を見つめる老人。
最後のじいさんの神託はちょっと不可思議で不気味だった。
村上春樹の影響受けすぎかな~。
カッコつけている感じが鼻持ちならないけど
嫌いじゃあないよ)^o^(