藤谷治のレビュー一覧
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ネタバレせった君と島崎哲は幼馴染であった。
せった君は音楽家、ピアニストであり作曲家、大いなる才能の持ち主。野心や、現世的な欲とはあくまで無縁で、ただ音楽と戯れ、音楽と共にあった人。
そんな彼を間近で見続けた島崎哲。せった君の音楽仲間で、最後まで彼の理解者。
けむりに魅入られ、自己正当化をとことん進めた挙げ句に破滅へ走った不協和音の津々見勘太郎はせった君を火事で消してしまう。
島崎哲と津々見勘太郎はどこか似ている。何者かになれる、ならねばならぬという青臭い思い込み。しかし、島崎が津々見にならなかったのは、幼い頃からそばにせった君がいたからだと考えられる。せった君という素直で音楽のことばかり考えるまっす -
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この本の曲のテーマはレ・プレリュード。
リストはピアニストとして優秀だったかもですけど
正直オーケストラ作家としてはもひとつ。
洗足 レプレ youtube ぐらいでヒットします。youtubeの指揮は現田さん。
本ではずっとデフォルメしてひどく書かれていますが
舞台となっている洗足の演奏はずっと素敵です。
ハイデルベルグまで教えてもらいに行ったチェリストが先生から
Das ist cello.
と言われ弾いた先生の音階が次元の全く違うものなので正直打ちのめされますよね。
教えられていたものが実は「私の常識=世界の非常識」というあるあるネタ。
更には「音を出している‡音楽をしている」とい -
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向き合うことも、認めることも、許すことも、
今はできないかもしれない。
(以下抜粋)
○僕には先生の言葉より、その前の一瞬の沈黙のほうがはるかに重要だった。(P.20)
○僕に限らず、自分が懸命にやっていたことを、新参者がさらに器用に、そして熱心にやっているのをまのあたりにすれば、ショックを受け、無力感を覚えることは誰にでもあることだ。(P.37)
○「オーケストラに出られないんですか、って訊いたんです」(P.45)
○本当になりたいものになるには、僕はあまりに不徹底で、卑怯だ。なまけもので才能のかけもない、情けない人間なんだ。(P.153) -
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綾峰県綾峰市にある古い県立音楽堂と、そこを活動拠点とする綾峰フィルに俄かに湧き起こった音楽堂の取り壊しとオケの解散問題。音楽堂跡地の有効活用とオケの助成金打ち切りを煽るカリスマDJと、なんとか音楽を、文化を守ろうとする綾峰フィルの関係者の対立。
そんななか、綾峰フィル最後の音楽堂でのコンサート中に、楽屋で男が殺された。その男こそ、音楽堂取り壊しを先導したDJだった。
綾峰フィルの顧問としてたびたび綾峰市を訪れていた音楽評論家であり、英文学教授の討木穣太郎と共に事件を目撃した小説家・フジツボムサオ。
どうみても作者の分身(笑)のフジツボ氏が、いたって冷静に討木氏本人を分析し、ツッコミをいれながら -
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高三の秋。サトルはチェロを辞めることを決意する。
これだけ音楽の美しさと喜びを知っている人が音楽から離れられるのかとも思うが、十八歳の主人公には0か100かの答えしかなかったのかも。
ミニコンに南を参加させたことは理解できないけれど、妊娠発覚後から彼女がとった行動はとうてい高校二年生の女子ができるものではないので強い人だと思う。
祖父、佐伯先生、脇を固める人が良かった。そして金窪先生との再会。タイトルは先生がくれたニーチェの言葉から。
分かってはいたけれど、主人公がさえない中年になっていたことを少なからず残念に思う気持ちがあったのは、それが甚だしく現実的だったからに他ならない。
ポプラ文庫版で