あらすじ
定年まで、あと四年――。長らく会社の花形部門で働いてきた吉岡だが、ここ数年はデータ管理の閑職についている。年齢なりに、体調ははっきりと怪しくなってきた。娘が就職して家を出た今となっては、妻の多恵子と共に静かに老いていくだけの毎日だ。ところが、近所に住む望月夫妻が二人とも入院したことから、状況が一変。彼らが飼っている老猫をどうするかを巡って、町内は大騒ぎとなる。望月夫妻が住むアパートの大家も、警官も救急隊員も生活支援課も、救いの手を差し伸べようとはしない。ある理由から、この猫を引き取ることができない吉岡と多恵子の選択は……。
誰もが身につまされること間違いなしの、ユーモアと愛情に満ちた人間ドラマ。
【目次】
日曜日に (その1)/他生の縁/望月盛衰史/日曜日に (その2)/吉岡家の猫/猫に通う/祇園精舎の鐘の声/里親さがし/最後に見た姿/奇特な人/深き淵より/静かな夜のために
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
たまたま知り合った近所の高齢者夫婦が、突然ふたりとも入院することになり、そこに居合わせたばかりに猫の面倒を見ることになった夫婦の話。
高齢者問題、ペット問題を扱ってはいるが、ドタバタコメディだ。藤谷さんの表現、物語は面白い。
まさにこれと同じような状況にうちもあったので、感情移入がすごい。違うのは、望月夫妻は義理の親、そしてそこには犬も猫もいたことだ。
うちは犬も猫も飼っていたことがあり、亡くしたときの悲しさに、もう2度と飼わないと決めていたのだが、また面倒を見ることになり・・・
「猫がかわいくなかったら」いや、犬も。いやいや、ペット全部だ。ホントにそう思う。
Posted by ブクログ
文庫の表紙からもっとお気楽な猫ちゃんの内容かと思ったら 現代の社会問題である高齢化を考えさせられる話だった。
望月夫人は悪い人ではないが、高齢が故に 自分の飼っていた猫ちゃんについて思考が追いつかなくなってしまっている これからこのような問題は増え続けていくのだろう
自分はがどうにかなった後を考えたら 子どもがいない人は猫は飼いたくても飼えないのだろうか
Posted by ブクログ
65歳の定年まで、あと4年。
吉岡は妻の多恵子と静かに暮らす。
ところが、近くのアパートに住む老夫婦が入院。
アパートには、老夫婦が飼う猫が残された。
誰が世話をするのか。
それぞれに事情があり、簡単に「引き取ります」とは言えない。
吉岡夫妻の猫への愛情と苦心にホロリとさせられた。
老夫妻の過去など、エピソードも満載。
おもしろく読み終えた。
思い出しことがある。
公園の茂みから子猫の鳴き声が聞こえた気がするが、空耳だとわかった時の安堵。
もし、そこに子猫が捨てられていたとしたら。
吉岡夫婦の様に親身になることができるだろうか。