江戸川乱歩のレビュー一覧
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1930(昭和5)年作。江戸川乱歩の「通俗」長編小説の代表作の一つ。とのことだが、乱歩で「通俗」以外のファインアート的なものがあったかどうかよく分からない。
娯楽作品に対比する場合のファインアートとは、大体において、大がかりなプロットに依存するのではなく一つ一つの細部、たとえば人物の心情や出来事のミニマルな部分に深く分け入る方向性に主眼がある。対して娯楽・大衆性においては、そうした細部へのこだわりは等閑に付することによって成立する。現代「純」芸術の感性はミクロなところへの眼差しにおいて際立つのであり、その姿勢は、思考の前提の部分を問い返すことにより「立ち止まる」ことを第一歩とする哲学の成立 -
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ネタバレ第4巻も楽しく拝読いたしました。
表題の孤島の鬼は、主人公とその妻がある変わった容貌をしており、なぜそうなったのか、その経緯を知る物語。主人公がある島の恐ろしい秘密に、思いがけず巻き込まれていきます。何度も、もうダメかもしれない…と読み手が思ってしまうようなスリルがあり、人しかでてこないはずなのに、何か化け物でもでてくるのではと思わせるほどのおどろおどろしさもあり、乱歩のエロ・グロ・ナンセンスを余すことなく楽しめる作品だと思いました。
乱歩は暗闇の迷路に閉じ込められるシチュエーション、好きなんですかね?この後もいろんな作品を読んで、彼を知っていきたいです。
猟奇の果は、前半と後半でかなり毛 -
Posted by ブクログ
氏の名探偵明智小五郎もの。
子供の頃夢中になって読んだという人は多いと思います。
読んでいなかった私は、食わず嫌いではいけないと思い、三島由紀夫氏が戯曲化し、舞台・映画になっているので面白いだろうとまず、「黒蜥蜴」を読んでみたのです。
正直、好きになりまししたね。
書き出しがすごくいい。
おどろおどろしいのが何ともいえずいい。
怪しい、妖し~い雰囲気がかもしだされ、次、次と読みたくなるのです。
だいたい創元推理文庫のカバーがいけない。
背のところの写真が、全巻揃えると一幅の絵になる。
マニアっぽい人は集めたくなる。
でもって、
「孤島の鬼」「D坂の殺人事件」「蜘蛛男」「魔術師」「黒蜥蜴 -
Posted by ブクログ
「江戸川乱歩ベストセレクション4」
「陰獣」「蟲」の2本収録。
内容もさることながら、もうタイトルが妖しい。
江戸川乱歩の小説がたくさん、そして同じ作品が何度も映像化されている理由が読むととてもよく分かる。陰鬱で湿っていて、じわじわと何かが迫り来るような独特な雰囲気が、映像化へと掻き立てられるのだと思う。
「陰獣」は探偵小説を書く主人公の寒川が、資産家夫人の静子という女から「かつて捨てた男から脅迫状が届いた」と助けを求められるところから物語が始まる。差出人は人気探偵作家の大江春泥。静子の美しさと春泥への興味から、寒川は出来るだけの助力を約束してしまう。
そんなある日、静子の夫である小山田の変