【感想・ネタバレ】江戸川乱歩傑作集1 孤島の鬼【イラスト入り】のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年03月28日

中学生の時に読んで放心した作品。
主人公の婚約者が殺され、犯人を探すために雇った友人の探偵が殺され、原因を探るために自分に好意を寄せる青年医師と行った孤島で、、、あらすじを書くとありふれているのだけれど、被害者の主人公よりも相手役の方が不憫でしょうがない。
似ているものだとオペラ座の怪人を思い出す。...続きを読む主人公の視点のようで、物語としては怪人の一生をかけた破滅を描いたものだ。
この作品の主人公が哀れなはずが、自覚のない、そんなはずはないと思う、行動が相手役の心を揺さぶるは尊厳を踏みにじるわでなんだかイライラしてしまう。
孤島にいる鬼と出会い、鬼になりはててもいいと全てを諦め、そして助かり、最後の2行に行き着いたのかと思うと、他にラストはなかったのか、いやここにしか落ち着けなかったんだと放心してしまう。
誦じられるほど衝撃だった。

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Posted by ブクログ 2023年10月12日

某古本屋を探索中にこちらを発見。ファンの中では1番の傑作との呼び声も高い本作、自称乱歩ファンの私なんと未読でした。(ファンの名を返上しよう…)
こりゃあかん!表紙も格好良いし買うぞ!と手に取った私、帯の裏に気付く。「乱歩が遺した最高傑作にして唯一の同性愛小説!」とそれはもうピンクの字で強調されている...続きを読む
そう言われるとそうにしか見えない装丁(でも本当に格好良くて面陳にして飾ってます)勇気を振り絞りレジへ。
「頼む!裏返さないでくれ!あっ!だめっ、あかん!!いやぁぁあああ!!」
店員さんは気にしていないだろうに、ノミの心臓なのでそそくさと退店したのですが、本作はホラーミステリーの様相を呈した純愛物語でした。
今回は2つのテーマに分けて感想を書いてみます。
かなり長くなりますので、気が向いた方はお付き合い下さい。

【ミステリー】
主人公の蓑浦の独白で物語は進むのですが、冒頭からぐいっと引き込まれる世界観の作り方が流石は乱歩さん!30代にして頭髪が全て白くなってしまった程の恐ろしい体験が今から語られるというのに、こちらも期待を胸に恐怖に備えます。
蓑浦の婚約者が密室殺人で殺された後、探偵役の深山木までもが群衆の中で殺害。この後に探偵役を引き継ぐのが、同性である蓑浦に10年以上も片思いをしているThe一途な男、諸戸。
非常に頭が切れるので割と早くにこの2件の不可能犯罪については解決します。この犯人も驚きでしたが、凄いのはここから。
2人の死に共通する点を探っていく内に、いよいよおどろおどろしい乱歩ワールドへ突入。
「孤島の鬼」とは一体何なのかが明らかになった時は恐ろし過ぎて私も白髪になる所でした。
今では禁止用語になる「かたわ」等の用語がバンバン出て来ますし、なんならこの物語自体が発禁スレスレなのでは…と思うと、2015年に再販して下さった出版社には感謝です。
話が逸れましたが、ミステリーとして話の構成が素晴らしく、エピソードの一つ一つに全く無駄がありません。点と点が線になるとは正にこの事。諸戸が蓑浦を愛する理由と、それ故の行動にも全て意味があり改めて乱歩さんの凄さを見せつけられました。

【恋愛(悲恋)】
乱歩さんの文章があまりにも美しいが故に、生々しいシーンは無いのに諸戸が蓑浦の手を握るだけでエロス満載になってしまいます。
2件の殺人について蓑浦の肩を抱きながら囁くように推理を話す諸戸。前代未聞、どんな探偵役やねん?!蓑浦曰く「いつもの愛撫の表情がうせて」いつもどんな顔してんねん?!と、突っ込みが止まりませんがうっかり危ない道に走りそうになりました。(諸戸が良い男すぎるのが原因です)
しかし蓑浦はノーマルなので運命の女性と言い切る初代を愛していますし、初代が死んだ後も彼女の灰を喰らう奇行に走る程の熱愛ぶり。
しかし諸戸は一貫して変わらぬ熱愛運動(作中で何度も求婚する事を求婚運動と書いてたのが妙にツボってます)に励むのに、もう頼むから諸戸のモノになってくれ!と切に願っていた私を尻目に、なんと蓑浦はとある驚きの女性を愛してしまいます。
これには何故?!と度肝を抜かれましたが、これにもしっかりとした理由がありやはり乱歩さんには叶わないのでした。

しかし私は蓑浦に物申したいのです。
君、諸戸を拒絶してる癖に、彼の気持ちを知っていて甘えたり思わせぶりな態度をしてみたり…酷いじゃないか!改めたまえ!!!
という私の叫びも虚しく、諸戸の悲恋は最も悲しい形で終わりを迎えるのでした…。
蓑浦の為に新しい恋人の体を手術して治してあげる諸戸。我が身も危ないのに蓑浦を勇気付けて守ろうとする諸戸…。
最後の一文があまりに切なく、私が美青年なら諸戸を幸せにしてあげられたのになあ…と訳分からぬ事まで考えてしまう始末。(レーエンデ国物語の時とは真逆の意見)

という程に、ミステリーにも悲恋物語にもどっぷりと浸れる名作でした。
最高傑作と仰る方の気持ちも頷けますね。
安易にはオススメできませんが、耽美ホラーな世界がお好きな方はハマると思います。

しかし、悲しい…。諸戸…涙。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年04月13日

ミステリーでもありサスペンスでもあり、終盤は冒険小説のようでもあり、大変面白かった。

退廃的な雰囲気あり、グロあり、不具者の表現ありで現代ではもう醸し出せない乱歩ワールドにどっぷり浸かりました。そしてBL乱歩と銘打って出されてるだけあって、その乱歩ワールドに加えての道雄と箕浦の関係性に悶えました。...続きを読む
箕浦、君は天性のタラシなのか…小悪魔通り越して大魔王的な言動だったよ…

序盤は密室殺人、衆人環視下での殺人、そして暗号と詰め込まれていて、その謎解きも楽しい。
伏線も綺麗に回収して、すっきり終わるのだけど。
だけど、だけども。
最後切なすぎる。
幸せな自分と秀ちゃんの傍に道雄を呼ぼうだなんで、最後まで箕浦が鬼すぎて泣ける。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年09月23日

すごく面白かった。
江戸川乱歩作品、きちんと読んだのは初めてだったけれど、序盤からしっかり惹き込まれて、最後までずっとハラハラゾクゾクさせられた。
面白かったし、読みやすかった。
現実離れした内容でありながら、実際に起こりうるかもと納得させるだけの説得力があって、どうしてこんなことが思いついて文章に...続きを読むできるのか、本当に天才だと思った。

主人公の蓑浦、おそらく綺麗な美青年で周りの人がつい惹かれて近づきたくなってしまう。
本人もそれをうっすらと自覚していながら、自分に心地よい状況をそのままにしていて、子どものような無邪気さと好奇心、甘えが見える。
実際にいたら本当に愛らしくて魅力的だろうなと思う。
悪いやつでは決してないけど、本当に無邪気に人を惹きつけて狂わせることができる素質を感じる。

諸戸は恵まれた才を持ちながら、こんな蓑浦にずっと好意を抱いて、いわゆるキープみたいな扱いもされ、決して実らず、生い立ちも相まって本当に不遇だ…。
最初と最後に出てくる文言に、最後ぐっと心を掴まれた。諸戸……。

とても面白くて読んでよかった。他の江戸川乱歩作品も読みたい。

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Posted by ブクログ 2017年07月08日

読むべきときに読めた。
諸戸は切ないな。
今ではあらゆる題材が尽くされ、真新しさは失われているはずなのに、ぞくりと心臓の裏に触れられているかのような恐怖。
使い古された言葉を使おう。
江戸川乱歩、凄い。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年03月12日

▼あらすじ
どうか僕から逃げないでくれたまえ。
そして僕の友情だけなりとも受け入れてくれたまえ。
僕が独りで思っている、せめてもそれだけの自由を僕に許してくれないだろうか。

***

江戸川乱歩に興味こそあれど買って読むまでにはなかなか至らなかったのですが、今回、あのITWシリーズでもお馴染みの...続きを読む咎井淳先生が表紙イラストを担当した事もあってファンとしては買わずにはいられず、良い機会だと思って傑作集1~3まで予約して買い揃えました。

こちらの『孤島の鬼』は“BL乱歩”と紹介されていた事もあってシリーズの中でも特に気になっており、主人公に恋心を抱く諸戸諸戸が咎井先生の手によりまさに眉目秀麗と言うに相応しいビジュアルで描かれ、主人公の方も諸戸に引けを取らぬ美しさで描かれていた為、BL好きとしてはその暗澹たる表紙の雰囲気に嫌な予感を抱きつつも非常にワクワクしながら本を開いたのですが…案の定、読むのに少し苦労しました(笑)

今では使えないであろう漢字や差別的な表現が多く、当たり前ですが現代の小説とは勝手が少し違うので、出だしは正直なところ微妙な感じだったのですが、それでも中盤からガラリと雰囲気が変わり、それから徐々に不気味さと謎が増して面白い展開になって行き、最後の方は常にハラハラしっぱなしで早く結末が知りたいと思いながら読み耽っていました。

中でもやはり、諸戸の存在は大きかったですね。
あらすじを読んだ時は諸戸が犯人だと思っていて、それが違うと分かった後も実は犯人サイドなんじゃないかと一抹の疑いを拭い切れずに最後の方までちょっとだけ諸戸を心のどこかで疑ってたりもしてたんですが、諸戸は最後まで蓑浦側の正しい人間で安心しました。
BL好きとしてはどうしても諸戸に肩入れしてしまうと言いますか、諸戸がなまじ健気で報われない片想いをしているものだからつい応援したくなってしまうんですよね…諸戸、頭も容姿も抜群のイイ男だし…(笑)
反対にそんな諸戸の恋心に気が付きながらも都合の良い時だけ利用するように甘えたり頼ったりする蓑浦にはノーマルだから仕方が無いと分かっていながらも、諸戸に対するその冷たくも思える仕打ちや差別的な見方にムッとする場面もしばしば。

特にこの作品で一番印象深かったのは洞窟のシーンですが、もう死を待つしかないような絶望的な状況下で本気で迫った諸戸を蓑浦が全身全霊で拒絶するシーンは、何だかなぁ……と。
諸戸の知恵と支えがあったからこそここまで来れたのに、そんな諸戸に気遣いも出来なければ、優しい言葉の一つだってかけてやれない蓑浦の性格にいよいよ作品の趣旨も忘れて本気で腹が立つほどでした(笑)
更にラスト、全ての問題が解決して物語が良い方向へ進む中、諸戸だけがあっさり病死ってそんな仕打ちあんまりじゃあないですか……。
しかも蓑浦からの手紙を抱きしめながら蓑浦の名前だけを呼んで亡くなるって…。
諸戸があまりにも可哀想で読み終わった後、何とも言えない後味の悪さが残りました。

“同性愛小説”、“BL乱歩”と謳い、それを期待して読むとおそらく私のようにとにかく諸戸に感情移入してしまい、結果、そのあまりにも徹底した報われなさに途方もなく落ち込んでしまわれる方が殆どかと思います。本当に切ない…。
時代背景が違うのですから同性愛に対する考え方や風当たりが今と異なっているのは
当然ですし、そもそもこれはBL小説ではないので、諸戸の扱いに不満を言うのもどうかと思うのですが…それでも私は、彼の幸せを考えずにはいられないのです……。

正直、茫然自失となるラストでしたが、忘れたくても忘れられない作品となったので評価は★5です。
死ネタが苦手な方には注意が必要な作品ですが、とにかくストーリーは読み応え抜群なので是非とも色んな方に読んでいただきたい作品の一つです。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年08月16日

江戸川乱歩は全作読破したわけではないけれど、元から読みやすいので好きでした。そこで、リブレ出版で咎井淳さんが表紙を手掛けた新装版だと聞き、悩みもせずに買った珍しい本。

江戸川乱歩の「芋虫」は有名で、一度傑作選で読んだことがあったので、それに近い雰囲気を纏った作品。ミステリーやホラーのテイストを持ち...続きを読むつつも、諸戸や箕浦の感情の揺らめきの方が印象に残る。
どうか僕から逃げないでくれ、と懇願する諸戸に対し、箕浦は身体を這いずりまわられるような恐怖に拒絶することしかできない。だが箕浦も友人として、頼れる存在として諸戸を信頼していることを否定できない。諸戸はそれに縋りついて、彼に受け止められなくとも想い続けている。まさに身を焦がすような情欲に身悶えし続けている苦行だ。
彼の執念は蛇のように箕浦を離さない。まるで献身的な言動の裏に、箕浦が端々に感じる恐怖は、はたして諸戸が意図していたものだろうか。
そうでなくても、箕浦にとっての鬼は、丈五郎だけではなかったはずだ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年05月26日

江戸川乱歩は初めて。
まず序盤から、諸戸と主人公の関係が妖しくてドキドキする。退廃的でアングラで、京極夏彦みたいな作風の祖なのかな、とか思っていたら、哀しい恋の話だった。

私はずっと諸戸が黒幕ではないかと疑っていた。
研究していくうちに生き物の体を弄ぶ楽しさに溺れ、親父と同じことをしようとしていた...続きを読むのではないか、とか、秀ちゃん吉ちゃんのように自分と蓑浦をくっつけようとしていたのではないか、とか。
だから意外とあっさり島の事件にカタがつき、気楽な後日談になり、すっかり油断していた。そこを射抜いてくるラストは切れ味鋭い。

主人公は無邪気で残酷だ。
諸戸の愛は拒みつつも、ずっと思わせぶりである。弱さを盾に、都合の良いときだけ諸戸に頼り、甘える。初代を失ってすぐに秀ちゃんに切り替え、最後にはちゃっかり財宝も手にするしたたかさもある。

激しい恐怖から、主人公の髪は真っ白になった。
その理由が、死の恐怖と諸戸への恐怖のどちらであったかのは明言されない。
しかし主人公は、諸戸の髪は白くならなかったのは、諸戸の方が強い心の持ち主だったからだろうと推測している。つまり、主人公と諸戸の共通の体験が原因になったということであって、つまりは死への恐怖のほうが原因だったのだと考えられる。

作者は、いかに恐ろしい体験をしたかを繰り返し匂わせ、ハードルをがんがん上げる。
そのわりに、いざ明かされると拍子抜けだ。あくまで、弱い蓑浦から見た激しい恐怖だったのだ。いや、洞窟で死にかけたら当然怖いだろうが、探偵ものや冒険ものとしてはありそうな話で、上がりに上がったハードルを越えるレベルではない。
それはおそらく、作品の最大の見せ場がそこではなく、あの哀切なラストだからだろう。

タイトルについて考える。
「孤島の鬼」とは誰なのだろう。
①丈五郎
②秀ちゃん吉ちゃんら、人造の身体的マイノリティたち

鬼畜の所業をしていた丈五郎のことだと考えるのが自然だろう。
また、丈五郎に造り出された身体的マイノリティたちもまた「孤島の鬼」だと読むこともできる。人外境とも表現されているとおり、孤島自体がこの世のものではないような雰囲気がある。そこに住む身体的マイノリティたちも、体のつくりが「大半の人間とは違っている」という意味で、作者が「鬼」と表現していたとしてもおかしくはない。

そしてこの②の意味、つまり「鬼」という言葉が「大半の人間とは違っている」という意味で使われているとするならば、性的マイノリティである諸戸もまた「鬼」なのではないか(言葉の使い方の是非の問題はあろうが、ここではおいておく)。
諸戸の思いは永遠に届かない。諸戸は主人公から断絶こそされないが、ずっと孤独だ。対岸は見えているのに隔絶された、孤島のような寂しさだ。

丈五郎は、気が狂う。結果、悪魔の所業をやめることができて、ある意味彼は救われている。身体的マイノリティたちも解放され、主人公と秀ちゃんに養われる。ひとりだけ、最後まで救われなかった孤独な「鬼」がいる。
「孤島の鬼」は、ミステリのていをとった諸戸道雄の物語なのだろう。少しオペラ座の怪人と似ているかもしれない。
主人公の白くなった頭髪を見て、諸戸は泣きそうな顔をした。秀ちゃんとの結婚は邪魔をしなかった。その心を思うと辛い。

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購入済み

BL的な描写はないです

2022年10月08日

江戸川乱歩らしく、グロテスクな部分もありましたが、そういうのが苦手な私でもなんとか最後まで読めました。BLらしき描写があるとネットやレビューで見ましたが、登場人物の1人がゲイというだけで、そういった接触はほぼないです。これを元にした漫画ではそういった描写がありますが、実際の本編では官能的には書かれて...続きを読むいません。主人公は常にヘテロです。私は普段BLを読みますが、BLとしては全くオススメしないです。

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Posted by ブクログ 2021年05月16日

初めての江戸川乱歩。初めての江戸川乱歩がBLだった…けどなんか諸戸が可愛そうじゃねーかよぉおおぉ!そして蓑浦、お前はもちろん悪く無い。けど結果なんかなんだかなぁ…。ふんわり殴ってやろうか(╹◡╹)
シチュエーションがもろにミステリー感あって楽しめました。

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Posted by ブクログ 2016年01月13日

江戸川乱歩だけあって不気味な場面の描写が非常に巧み。エグい。様々なところに伏線が張られていてそれが1つ1つ解消されていく、これは小説の醍醐味とも言える。そして最期の何と切ないことか。同性愛者はあの時代、今よりもっと辛く苦しい目にあっていたに違いない。幸せになってもらいたかったけれど、あれが事実なのだ...続きを読むろうな。不気味だけれど切ない、これは現代でも読み継がれてゆく小説に相応しい作品だと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年08月17日

恥ずかしながら江戸川乱歩の小説をほとんど読んだことがなかったため、咎井さんの美麗な表紙だし良い機会だと思い購入しました。
内容はやはり凄い、の一言しか出ませんでした。ここまでの展開を頭の中で考えて文章にできるというのが、常人ではないなと思います。乱歩小説に対してはおどろおどろしい血なまぐさいイメージ...続きを読むが先行して、あまり率先して手をつけようと思わなかったのですが、これを機に読まず嫌いをやめて読んでみようと思います。

BL的な観点ですが、勝手に想像して「諸戸が箕浦さんに関わる人間を全員消して、僕だけを見てください系ヤンデレ化する話なのかな」と思っていたので、話の顛末には驚きました。箕浦さんがノンケで自分を愛さないことを聡明な諸戸が理解していないはずはないし、それでも友情を続ける精神力と異常なまでの箕浦さんに対する愛情を考えてみると、諸戸って凄い一途な男ですよね。しかも長い付き合いの中で、あの洞窟で理性がぶっ飛ぶまで一度も行為に及ぼうとしなかったとこらへんも、諸戸がどこまでも紳士的で箕浦さんを大事に思っていたかを表してます。死ぬ時までもずっと箕浦さんの名前を呼び続けていたという最後の文章に少し切ない気持ちになりました。
それに対してどこまでもノンケの姿勢を崩さない箕浦さんもなかなかだなあと思います。所々、諸戸のことを意識する場面も出てきはしますが、あくまで彼の情欲とは結びつかない。頭脳明晰で容姿端麗な諸戸が自分のことを盲目的に愛している、という事実が箕浦さんにとっては得意に感じる部分ではあるかもしれないけれど、結局のところ自分の肉欲には一切関係がないというのが本当にノンケな気がします。自分は秀ちゃんと一緒になって、近くの病院の院長に自分に恋焦がれているはずである諸戸を選ぼうとしていたところからも、一時襲われそうにすらなったのに箕浦さんには諸戸の感情に応える気は一切ないのだな、というのが伺えます。そう考えると、一生自分の恋する男が違う女と仲良く生きていくのを見続けるよりは、二人しか世界には存在しないとある意味では幸福に思えるような経験をしたことを胸に病で死んでしまった方が、諸戸にとっては幸せだったのかもしれません。
しかし個人的には、箕浦さんが諸戸と二人きりになった時、どちらかが異性になったように感じると言っていた描写がめちゃくちゃ萌えました。罪深い腐女子の業です。


ここまで長々と書きましたが、あくまでBLは話を構成する一要素で、それだけが全てではないことは頭に留めておくべきだと思います。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年01月03日

咎井淳さんイラストでまた読んでみたい…と思いつつ。
孤島の鬼といえば、ゲイの男と洞窟?に閉じ込められた男主人公が一夜で総白髪になったシーンしか覚えていない(笑)大人になった今読んだら違う印象を受けるかもしれないから、いつか読めたら読もう。

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