江戸川乱歩のレビュー一覧
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乙女の本棚シリーズから、江戸川乱歩さんとしきみさんのコラボ作品「押絵と旅する男」です。表紙からは、なんとも言えない違和感を感じてしまったけれど、読み進めるとその訳もわかってきます。
蜃気楼を見に行った帰りの汽車の中で、押絵を持った男性と出会う…。男性は押絵を車窓にむけて、押絵に外の景色を見せているかのように見えたため、興味を持って近づくと見事な押絵を見せてくれた上にその由来を語りだす…。
押絵の初老の男性は兄で、兄のために押絵を持って旅を続けているのだと…。この兄弟の想いを推し量ろうとすると、切ない気持ちになってそれが読後の余韻として広がります…。しきみさんのイラストも、この作品にぴったりです! -
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きらびやかな宝石に囲まれた美しく孤高で知的で大胆で残忍な女怪盗。そして探偵と繰り広げる騙しあいの果てにいつしか芽生える探偵への恋情。ジャンルのマスターピースと言われるのは、しっかりしたプロット(要点)とアイデアに富んだディテール(素材)が提示されていて、後から読んだ人が自分のポイントでいろいろ深掘りして脚色したくなるようなシンプルな作りにあるからかも知れない。三島由紀夫がこれをバレエにしたいと思ったり、映画よりは舞台で有名なのは、やはり最後の探偵と女盗賊の場面がもともと舞台映えするような描写だからだろう。「定型の美」はやはり動画やアニメより、額縁に飾ってみるように舞台が似合うということかも。
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「人間椅子」・・・
現代にも通ずるストーカーのような話。怖さが絶妙。男はその容貌が醜悪(らしい)のだが、どの程度醜悪なのだろうかと想像すると、これはあくまで私のイメージなのだが、かの有名なフランケンシュタインに登場する怪物を彷彿とさせる。男が歪んだ愛情を抱くに至った原因はおそらく他者からの著しい愛情の欠落であるように思う。男は人一倍愛に飢えているにもかかわらず、その姿形により愛を与えてもらえない。そうした時期が男の歪曲した愛着スタイルを形成し、ついには「人間椅子」のような奇怪千万な考えに至ったのではないか。
本来、スキンシップというものは、互いの意思疎通が取れて初めて意味をなす行為である。男の潜む「椅子」に何者かが座り、その「椅子」を介して快楽に浸るなど、到底スキンシップとは言えまいが、それでも男は心地よさを覚えるのである。このことは男がこれまで他者から愛情を注いでもらえなかったからであろう。
偏見かもしれないが、異性慣れしていない男性は、異性に少しでも優しくされると恋に落ちてしまうようだ。
この男はついにある女性に恋心を抱いてしまう。その絶妙に気色が悪いことの成り行きをぜひ本書で確かめてもらいたい。
ゆめゆめ油断する勿れ。何気ない日常にこそ恐怖の影は落とされている。 -
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ネタバレ・百面相役者
→最後オチがあっても気持ち悪い
人の顔の皮をはぐとか想像するだけでゾワゾワした
・一人二役
→なんとも言えない、女が賢いと夫婦円満なのか
・疑惑
→人間不信になる話笑
なんか少し赤い部屋のこうしたらこうなるみたいな、
悪意のない犯罪にもなる気がする。
・接吻
→乱歩さん、女嫌いなのか、ずる賢いキャラにするの好きね
・踊る一寸法師
→単純に不気味、下衆、気持ち悪い
・覆面の舞踏者
→昔っぽい、結構下らない
・灰神楽
→やっとミステリっぽくて面白かった
・モノグラム
→オチが面白い、巡り巡ってがっかりするのが最高笑
・人でなしの恋
→これが読みたかったの!
うーん、やっぱり好き、こういうの。
ピグマリオンシンドロームみたいな、
この時代の狂気耽美みたいなの好き。
最後の人間の醜さと、相反する美しい儚さが良い。
最高です。
・木馬は廻る
→昔のパパ活話笑
昔の貧富の差や貧困って切ないなと感じる。
自註自解とか解説も丁寧で有り難い。
乱歩作品全て読みたいけど、基本不気味だったり気持ち悪いの多いんだよね…。
現代の気持ち悪さとは違う、たちの悪い気持ち悪さ。
なんか苦手なんだよね…言葉や描写が陰気というか。
明智小五郎シリーズとかのミステリ全フリも読みたいけど、
まあぼちぼち好きなものから読み進める。 -
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ネタバレ江戸川乱歩は初めて。
まず序盤から、諸戸と主人公の関係が妖しくてドキドキする。退廃的でアングラで、京極夏彦みたいな作風の祖なのかな、とか思っていたら、哀しい恋の話だった。
私はずっと諸戸が黒幕ではないかと疑っていた。
研究していくうちに生き物の体を弄ぶ楽しさに溺れ、親父と同じことをしようとしていたのではないか、とか、秀ちゃん吉ちゃんのように自分と蓑浦をくっつけようとしていたのではないか、とか。
だから意外とあっさり島の事件にカタがつき、気楽な後日談になり、すっかり油断していた。そこを射抜いてくるラストは切れ味鋭い。
主人公は無邪気で残酷だ。
諸戸の愛は拒みつつも、ずっと思わせぶりである。弱さを盾に、都合の良いときだけ諸戸に頼り、甘える。初代を失ってすぐに秀ちゃんに切り替え、最後にはちゃっかり財宝も手にするしたたかさもある。
激しい恐怖から、主人公の髪は真っ白になった。
その理由が、死の恐怖と諸戸への恐怖のどちらであったかのは明言されない。
しかし主人公は、諸戸の髪は白くならなかったのは、諸戸の方が強い心の持ち主だったからだろうと推測している。つまり、主人公と諸戸の共通の体験が原因になったということであって、つまりは死への恐怖のほうが原因だったのだと考えられる。
作者は、いかに恐ろしい体験をしたかを繰り返し匂わせ、ハードルをがんがん上げる。
そのわりに、いざ明かされると拍子抜けだ。あくまで、弱い蓑浦から見た激しい恐怖だったのだ。いや、洞窟で死にかけたら当然怖いだろうが、探偵ものや冒険ものとしてはありそうな話で、上がりに上がったハードルを越えるレベルではない。
それはおそらく、作品の最大の見せ場がそこではなく、あの哀切なラストだからだろう。
タイトルについて考える。
「孤島の鬼」とは誰なのだろう。
①丈五郎
②秀ちゃん吉ちゃんら、人造の身体的マイノリティたち
鬼畜の所業をしていた丈五郎のことだと考えるのが自然だろう。
また、丈五郎に造り出された身体的マイノリティたちもまた「孤島の鬼」だと読むこともできる。人外境とも表現されているとおり、孤島自体がこの世のものではないような雰囲気がある。そこに住む身体的マイノリティたちも、体のつくりが「大半の人間とは違っている」という意味で、作者が「鬼」と表現していたとしてもおかしくはない。
そしてこの②の意味、つまり「鬼」という言葉が「大半の人間とは違っている」という意味で使われているとするならば、性的マイノリティである諸戸もまた「鬼」なのではないか(言葉の使い方の是非の問題はあろうが、ここではおいておく)。
諸戸の思いは永遠に届かない。諸戸は主人公から断絶こそされないが、ずっと孤独だ。対岸は見えているのに隔絶された、孤島のような寂しさだ。
丈五郎は、気が狂う。結果、悪魔の所業をやめることができて、ある意味彼は救われている。身体的マイノリティたちも解放され、主人公と秀ちゃんに養われる。ひとりだけ、最後まで救われなかった孤独な「鬼」がいる。
「孤島の鬼」は、ミステリのていをとった諸戸道雄の物語なのだろう。少しオペラ座の怪人と似ているかもしれない。
主人公の白くなった頭髪を見て、諸戸は泣きそうな顔をした。秀ちゃんとの結婚は邪魔をしなかった。その心を思うと辛い。 -
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ネタバレ殺生を好まぬ稀代の盗賊、黄金仮面。相対するは明智小五郎、二人の戦いが今ここに火蓋を切って落とされる……とまぁそんな話なわけだが、黄金仮面の正体が明らかにされた時、私の顔は宇宙猫顔になった。
ある意味、元ネタの作者がした事を乱歩も真似たと言えようが、いやはや、元ネタのファンとしては「こんなに格好悪くねーし」と眉根を寄せてしまったのも致し方ない。とはいえ不肖私、元ネタの作者が同じことをした時も「こんなに格好悪くねーし」と眉根を寄せたものである。世界的に著名な登場人物を二次創作的に自作へ登場させるときは、ゆくゆく取り扱いに気をつけられたし。
とまぁ、故に私の本作に対する評価は星がマイナス一となったわけだが、総合的には良作であり楽しかったといえる。
元ネタの人物を取り入れたことで、狙われた品が国宝玉虫の厨子であったというのも、大掛かりな仕掛けもなんとなーく納得させるものがあるし、明智小五郎よ良く健闘した、とも言える。
結論、黄金仮面の正体を知ってどう思うかは読者次第であるし、その印象によって本作に対する評価も真っ二つに分かれるのではなかろうか、と思った。 -
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ネタバレ「一寸法師」と「何者」の2作品が収録されている。「一寸法師」では明智小五郎が謎解きをするが、「何者」では謎解きでは出てこないが、作品内の小説としてのみ出てくる点が特徴的かもしれない。
さてはて内容であるが、特に「一寸法師」については結末が非常に時代を感じさせるものだった。
真犯人がその性別と「反省している」の二点において情状酌量の余地ありと明智は判ずるのである。いやそこは司法に任せるべきでは? と思うし、また、被害者の無念が晴れぬのではないか、と思ってしまい、釈然とできないものが残った。少なくとも現在の作家、特にライトノベルやTL系であれば確実に「ざまぁ」されるパターンの犯人である。とはいえあまりに酷い因果応報も如何なものかと個人的には思うが……。
「何者」に関しては、犯人の動機がなるほどと納得できるものであった。二兎を追った犯人は一兎も得ることができず、得られたと思った双方を逃す事になった……ということが最後に示唆されて終わる。
結果的に犯人がどうなったのか、冒頭で作者が述べていた「事件の主人公」が果たして真犯人を指していたのかはたまた濡れ衣を着させられた人物を指していたのか、それが分からぬので、やはり終わりは謎が残る形となり、それがいっそうこの作品の釈然としなさに拍車をかけている気がする。