白石朗のレビュー一覧
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エドワード・ホッパーの絵画から生まれた十七の短編。
それぞれ全て異なる作家の手によって物語が編み出されており、短編好きも、絵画好きも、うまく取り込まれてしまう。
正直なところ、絵画を眺めているだけでも楽しい。
絵画は、18枚修められている。一枚は、読者が自分で話を作ってみてね、という序文の心憎さよ。
翻訳物なので、独特のクセがある。
決して変な日本語ではないし、つまらないわけでもない。
翻訳者も12人(贅沢!)いるので、この翻訳者だと合わない、といったことがあるわけでもないのだが、やはり「ニュアンス」「空気」という見えないものを取り入れることは、難しいのだろうか。
「キャロラインの話」はある老婦人の物語だ。
視点が変わっていくところ、また、老婦人の秘密がポイントだ。
老婦人の心の中にあったしこりは解消されただろうか。また新たなしこりを生んだだろうか。
願わくば、ハッピーエンドに、と思うが。
家族の問題は近しいだけに問題も起こりやすいことも、必ずしも皆が幸せにはならないだろうという、ざらついた余韻の残る物語であった。
「映写技師ヒーロー」
映写室にいる、少し引っ込み思案な男性の物語。
いかにもアメリカらしい展開だ。
小さな映画館にみかじめ料を求めてやってきた男たちから映画館と、経営者と、受付嬢を守るため、映写技師は立ち上がる。
でも、その「誰かのため」は表に出ることなく、消える。
そしてまた日常に戻る。
アメリカらしい解決方法だが、アメリカンヒーローらしからぬヒーロー。
いや、スーパーマンも普段は冴えない、んじゃなかったっけ。
だとすれば古典的なヒーローがここにいる、のかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ交換殺人がメインテーマかと思いきや、ガイとブルーノの愛憎模様や葛藤などの心理描写がメインだった。
勝手に殺人を犯した末に脅迫してくるブルーノをガイは憎しみつつも愛してると言ったりどんどん情緒が不安定になっていく様は読んでてこちらも不安な気持ちにさせる。
ブルーノは一貫してガイに執着してたので(最後はアル中になって余計言動がひどくなったけど)わかりやすかったけど、ガイの気持ちは上がったり下がったり揺らぎすぎてて掴みづらかった。
普通に生活してた人間がこういう風に追い詰められればこうなってしまうものなのかなとも思ったけど。
ブルーノの最期は呆気なかったけどガイのしめかたは良かった。 -
Posted by ブクログ
「短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション)」
新ジャンルに遭遇。
エドワード・ホッパー(1882-1967)。 作家ローレンス・ブロックは、ホッパーの作品は「絵の中に物語があること、その物語は語られるのを待っていること」を強く示唆していると語り、ホッパーの絵から物語を紡ぐこの短編集を考えついた。
しかし、良く思いついたなぁ。それが率直な感想。ブロックの呼びかけに集まった面々の中にスティーヴン・キングが居るからと言う理由だけで読んだ私は、美術に全く詳しくない為、ホッパーが如何に偉大な画家だったなのか全く分からない。
各短編を読んでみて、よくここまで膨らませてストーリーを書けるなぁと思った。作家は0から話を考えることもあるから、ホッパーの絵が題材になる今回は多少は楽なのかも知れない。しかし、題材にするからには、ホッパーの絵の意図を汲み取ること、汲み取るまでにはいかなくとも、絵を見て感じなければ、きっと小説を書くことは出来ないし、きっと当て書きよりも難易度が高そうだ。更に、もしかしたら小説を読んだ熱狂的なホッパーファンが、やんや言ってくるかもしれないのだ。なんと面倒なことだろうか。
とは言え、「ガーリー・ショウ」を読むときっと熱狂的なホッパーファンも納得してくれるのではないか。序盤からすると暗めなストーリーと思いきや、最後のオチ。去り際には女性のキレを感じる。おぉ、ポーリーンよ!と思っちゃう。
「キャロラインの話」は、きっと良い話なんだろう、いや、違うのか?と思わせる。あれ?さくっとバレて意外な方向にいくと思いきや、もしかしたら違うかも?と思ってしまった。間違いなく良い終わりに行くはずなのになんでだろう。インパクト弱めだが、気になる短編。
「アダムズ牧師とクジラ」はユーモラスな締め。「音楽室」はキングらしいダークなストーリー。音楽は野蛮な野獣を抑えるって言う台詞がまあ何ともで、最後はローレンス・ブロックによる 「オートマットの秋」 。
どれもホッパーの絵からインスピレーションを受けて描かれていたとは思えない。ホッパーを知る人ならば、きっと楽しめるのだろう。知らない人でも、純粋な短編として楽しめる。 -
Posted by ブクログ
このミス海外編2014年版1位。ケネディ暗殺の真相に迫るミステリ。タイムトラベルSFでありラブ・ロマンスでもある。過去に行ってケネディ暗殺を阻止するってのが主要テーマであり、それにともなうオズワルド単独犯の検証、歴史改変の影響想定、そして、過去の世界でのロマンスのジレンマ。小説世界の構想、設計、ストーリー展開、特にラブロマンスの部分の表現、どれをとっても良くできた小説。ケネディー暗殺の映像は昔よくみたけどかなり衝撃的だったしテーマ自体もとても興味深いものであり、タイムパラドックスの処理も上手。ホント、素晴らしいのだけど、長いのと全体としては読みにくいのが難点。翻訳の問題なのか、自分の調子の問題なのかよくわからないんだけど、読んでる途中で集中切れることが多々あるのです。時間かかった。
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読むのに3ヶ月かかった。登場人物の感情の動きが激しくてついていけない。相手を嫌いだと思ったら次には好きになったり…。読んでいて疲れるし感情移入できない。
本書はブルーノという金持ちのドラ息子・アル中・ホモ・マザコンの悪魔がガイという男を洗脳し狂気に陥らせるサスペンス。ブルーノはサイコパスである。ガイ自身最後の最後でそう表現している。そのためブルーノ自身の心境を語ったページは全く理解できないしそんなブルーノに愛憎入り交じった感情をいだくガイも理解しがたい。
これでブルーノが女だったら悪女に引き寄せられる男(ガイ)の感情だと理解もできるが、なぜこんなサイコパスの言いなりになって遠ざけられないのか。感情移入が厳しいところだった。読者が女性ならこの辺の同性愛じみた部分を楽しめるのかもしれないが、男の自分にはブルーノとの縁を切れないガイが理解不能だし、ひたすら悩み続け情緒不安定なガイも嫌いだ。
解説によるとこの本のパターンが作者の基本らしい。もうこの一冊で十分。他を読む気はしないな。
ガイは「物事はすべて反対の部分を併せ持っている」と語る。これはラストのセリフのところですらそのままである。しかしラストに至ってまで、一本心の通っていないガイ。彼の心がジェットコースターのごとく揺れ動き続けるのを追いそれを理解しようと努めるのは大変疲れる読書体験だった。