白石朗のレビュー一覧
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狙いを外さない殺し屋が、悪党だけを始末してきた自分に区切りをつけるため、最後の仕事は“作家”として潜伏する物語です。
原稿用紙に向かううち、過去の戦場や殺しの記憶が物語になって立ち上がり、クライム小説がいつの間にか「書くことで生き直す話」へ変わっていくのがたまらなかったです。
狙撃の緊張と、郊外での地味な生活、偶然出会う他者の痛みが同じ重さで描かれていて、乾いた暴力の匂いと、ふと差し込む優しさの温度差で何度も飲み込まれました。
反面、道中は寄り道も多く、展開が都合よく転がる瞬間もあるし、著者特有の長尺には体力は要りましたし、上巻の前振りの長さに少し退屈さを覚えました。
しかし、下巻での回収は素晴らしく、読む手が止まりませんでした。 -
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狙いを外さない殺し屋が、悪党だけを始末してきた自分に区切りをつけるため、最後の仕事は“作家”として潜伏する物語です。
原稿用紙に向かううち、過去の戦場や殺しの記憶が物語になって立ち上がり、クライム小説がいつの間にか「書くことで生き直す話」へ変わっていくのがたまらなかったです。
狙撃の緊張と、郊外での地味な生活、偶然出会う他者の痛みが同じ重さで描かれていて、乾いた暴力の匂いと、ふと差し込む優しさの温度差で何度も飲み込まれました。
反面、道中は寄り道も多く、展開が都合よく転がる瞬間もあるし、著者特有の長尺には体力は要りましたし、上巻の前振りの長さに少し退屈さを覚えました。
しかし、下巻での回収は素晴らしく、読む手が止まりませんでした。 -
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ファンタジーが苦手な自分としてはこの直球すぎるタイトルに怯んだ。しかもコロナ禍で発表された作品で尚且つ著者75歳の時の作品。不安しかない。しかし、そこはキング!さすがというか、そんな年齢でなんでこんなに引き込まれる物語を描けるのか?特に最近のキングは凄まじい。とはいっても、まだ上巻だし、ストーリー的には異世界に入ってからの展開次第ではどうなるかわからないから油断は禁物。
登場人物としては、まず頑固な老人と老犬に主人公の高校生がからんでくるのだけれど、この犬がいい。こんな犬使うのずるい。泣ける。犬好きはいちころだ。主人公の青年もただただ清純な青年というわけではないところもいい。異世界に向かう動機がこの犬のためなのだけれど、ここは本当の犬好きからすると意見が分かれるところではないだろうか?キングのことだから意地悪な仕掛けが用意してあるのかもしれない。
ブラッドベリやラヴクラフトの作品や最近発掘して夢中になっているウールリッチの作品も出てきて楽しい。久々のダーク・ファンタジー。このままホラー・テイストを楽しみつつ下巻へ。 -
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ケネディ暗殺を阻止するジェイクの物語も佳境を迎える下巻。元夫クレイトンにより顔に傷を負いふさぎ込むセイディーをジェイクの献身が癒し、あとはリー・H・オズワルドの凶行を止めるのかと思ったが、“時は変化することを嫌う”という原則から一時、ジェイクは記憶障害を伴う重症に陥ってしまう。しかしそれを乗り越えセイディーとともにケネディ暗殺を阻止するもセイディーはオズワルドの凶弾に斃れてしまう。そしてジェイクはセイディーとの愛のために再び兎の穴で過去をやり直そうとするも…。
ラストまで読むとジェイクの体験したこの5年とはいえ長大な旅路はまるでセイディーと“イン・ザ・ムード”を踊っていたかのようだと思える演出で、キングってやっぱり良いなと思った。文庫にして上中下巻合計1420ページの超長編だけど大満足な読書体験になった。 -
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ジョン・F・ケネディ暗殺事件が起きるまでまだ3年以上ある1960年9月から幕が開ける中巻では、ジェイクは生活費を賄う必要からテキサス州ジョーディで作家志望の非常勤講師という立場で日々を過ごしながら、オズワルドの動向を追っていく。その過程で高校での演劇顧問をしたり、新任司書のセイディーとのロマンスだったり、未来から来たという秘密を打ち明けられないことからのすれ違いが描かれながら、ジェイクは過去に介入していく。これがどんなバタフライ・エフェクトをもたらすのか。ジェイクのドラマが本筋(ケネディ暗殺を阻止)にどう絡んでどんな結末になるかが先が気になる。
デ・モーレンシルトとオズワルドの会話の中でオズワルドが資本主義を憎むマルクス主義者であること、キューバに平和な社会主義の理想像を見ていたりすることが描かれている。そして、キューバを51番目の州にするためキューバを爆撃をするべきだと主張する右派政治家のウォーカー元少将の話や、ケネディがカストロ暗殺を企てているという話をするデ・モーレンシルトはオズワルドを教唆しているように描かれていて、事実が分からなくてもスリリングなシーンで、かつケネディ暗殺の背景や時代の空気を掴む上で重要なくだりだと思った。
ラブロマンスや友情といった人間関係を軸にしたエンタメ展開で読者を惹きつけながら、レッド・パージだったり、人種差別撤廃が社会主義者と結びついていることなど、それとなく社会や政治背景が語られており、ストーリーの厚みを生み出す作家の手腕は、さすがはスティーヴン・キングだ。 -
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原本では「チャックの数奇な人生」も合わせて一冊だったとのこと、日本版だと2冊に分冊ですが、「イフ・イット・ブリーズ」だけでもかなりの厚みです。
「イフ・イット・ブリーズ」はホリー・ギブニーが主人公。読んでなくても大丈夫とのことですが、ホリーはミスターメルセデスから始まるホッジス3部作、アウトサイダーの登場人物なので、出来れば読んでるとすっと入りやすいかも。特にアウトサイダー。
事件現場に現る謎のリポーターに立ち向かうホリー。ストーリーもよきながら、ホッジス亡き後の彼女が悲しみや淋しさも抱えながらも支える人がいて、きちんと自分の足で立っているところを見れたのは喜び。どんな自分でも大丈夫だよ、ホリー。
「ラット」は不気味さが漂う一編。短いですが私は好きでした。主人公の作家が山小屋で一人ということもあり、ミザリー系列の怖さ、という帯でしたがそこは全然別物です。
いずれにせよキングの本を今でも読める喜びよ!本作も楽しみました。
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凄腕の暗殺者が最後の仕事として請け負ったのは、200万ドルという破格の報酬の仕事。ただし暗殺のチャンスが巡ってくるまでに時間がかかる。それまでに町の住人として馴染んでおくという準備期間も含めた報酬。仮の仕事は駆け出しの小説家。どうせならと自伝を描き始める。彼の過去と現在が並行して語られていく。いつもと違うスタイルの仕事に、違和感もあり警戒しながら、偽装の日常生活を送る主人公。生き生きと描かれた日常生活も魅力的だ。読者としても、あぁ、このまま暗殺なんて起こらず、このままの日常が続けば良いのにと思ってしまう。(それでは小説にならないのはわかっているのだけど。)とても面白かった。
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話のあらすじとしては本作の語り手である2011年を生きるリスボン・ハイスクールの英語教師のジェイク・エピングがジョン・F・ケネディの暗殺を阻止するために過去にタイムトラベルをする物語。
上巻はケネディ暗殺阻止の前にバタフライ・エフェクトの検証実験としてリスボン・ハイスクールの校務員ハリー・ダニングの壮絶な過去を変えようとして、主人公が奔走するエピソードが主な内容。
まだ上巻だけど、キング作品に通底する特徴としてエンタメで魅せながら、本作の背景にあるようなケネディ暗殺事件、ベトナム戦争といった社会や政治に対する善悪を問うまなざしがあり、話の展開やキャラクターの説得力だけに拠らない深みがあるように思う。 -
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本邦初単行本となるトマス・リゴッティの短編集。
日本ではなかなか名前が知られていない(自分もそうだった)トマス・リゴッティだが、本国アメリカではカルトホラー作家として名高いベテランで、ブラム・ストーカー賞を4度受賞している。更に驚くのがペンギン・ブックスの古典シリーズであるペンギン・クラシックスにトマス・リゴッティの作品が名を連ねている。
この『悪夢工場』で自分も初めて触れるのだが、決して読みやすいわけでもわかりやすい恐怖が描かれているわけでもないのに妙に印象に残る作品が多かった。
何なら描かれている出来事を理解できなかったり、呑み込めなかったり、わからなかったり、怖くなかったりする人も結構な割合でいそうではあるのだが、一部の層には強烈な影響を残しそうでもあった。
正直、この短編集だけでは物足りない。もっとくれよ、もっとこの世界に浸らせてくれ、という気持ちになった。
次の作品が出ることに期待。 -
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ネタバレなかなかイギリス秘密情報部の英雄ジェームズ・ボンド(ダブルオーのコードは殺人経験あり、任務遂行中に殺人の特権を付与されている)がでてこない。151頁/405頁にやっとボンドが登場する。闘う相手は殺害実行機関のSMERSHの首席死刑執行官グラント《政治的価値:ゼロー作戦遂行上の価値:最高度》しかも満月の夜のグラントは制御不能である。
愛らしい秘書に13日の金曜日にフライトを選ぶなんてと心配されながら送られるボンド…私もここから心臓がバクバクしてきた。飛行機は絶え間なく歌いながら、果てしなく広がるホイップクリームのような雲海の中でボンドの思考が止まらない…
ウィンザーノットのナッシュは、やはり…グラント。
そろそろ登場のはずだから違いないと思った。
そんなー
無敵だからと思ってたのに…涙 -
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ネタバレ最後の最後に泣かされてしまった。
たとえ嫌いな人間でも最期は助けてやれると、そのためにこそ生まれてきたと自負しているダンに涙が出てきた。一度どん底まで落ちたダンが、長い年月をかけてしっかりと自分の立ち位置を見つけたことが嬉しい。
物語としては、ローズとトゥルーノットを殺してきれいさっぱり終わりました、という形にしないところに好感が持てる。悪の組織は倒しても、人生は続く。正当防衛とはいえ殺したという事実は自分の中に残る。怒りを抑えられない思春期に突入しているアブラにはダンが必要だったなと思う。
これが読者にも無関係ではないのは、残忍で冷酷な喜びは程度に差はあれど誰の胸の中にもあり、強い者が暴力行為をはたらく事件は世界中で無数に起こっているからだ。
ホラー要素やスリリングな要素以外にも、人と人との繋がりにかなりのページを割いていて、重みがあった。人々は支え合いながら生きているのだと感じられた。このリアルな人々の描写が土台となっていることが重要だと思う。そういうところに心を掴まれた。 -
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ネタバレシャイニングに続編があると知って手に取った。ダニー少年のその後の話だ。
あの素直で可愛い少年が成長して、アルコール依存症になっていたのは読者としてショックだった。父親ジャックを思わせる荒々しさが宿っていて二重にショックだった。
あんなことがあったのに何故酒をと最初は思ったけれど、私が間違っていた。「自分が狂うかもしれない」という恐怖までは想像できていなかった。ダンにはアルコールに頼るか、狂うかのどちらかしか選択肢がなかったということだ。人が内側に何を抱えているかは、外からは分からないものなのだということを、改めて心に刻んだ。
赤ん坊のアブラがテロを予知したと分かったシーンは鳥肌が立った。情報が繋がっていくところが本当に面白い。同時に心配と不安もあって心臓に悪いけれど、下巻も楽しみ。 -
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映画の007シリーズは全部観ているはずなので、本も読んでみようかなあと思って。
ボンドにはやっぱりショーン・コネリーの印象が強い。『カジノ・ロワイヤル』映画のボンドは六代目のダニエル・クレイグなので、シリーズの数冊目かと思っていたのだが、小説では一作目がこれなのですね。
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ジェームズ・ボンドは007のコードネームを持つ英国の諜報員。今回の彼の任務は、カジノでロシアのスパイであるル・シッフルから資産を取り上げること。ル・シッフルはフランスでの活動組合の会計係だが、組合の金を使い込んだ。それを補填するためにカジノでバカラの大勝負を計画していた。そこで英国諜報部は、ル・シッフルを破産させロシアのスパイ組織を壊すために、ギャンブルの名人に挑戦させて彼を破産させるという大胆な計画をたてたのだ。挑戦相手に選ばれたのがジェームズ・ボンド、持たされたギャンブル資金はイギリスの国家予算。(後にアメリカの国家予算も追加)
ジェームズ・ボンドの上司は「M(エム)」、今回の計画の協力者は、フランス国家安全保障局のルネ・マティス、英国諜報情報局の一員であるヴェスパー・リンド、そしてアメリカからCIAのフェリックス・ライター。
私はギャンブルも、そもそもゲームも相当苦手。一つ一つにドキドキしちゃって先の見通しも、楽しむことも、駆け引きもできません(-_-;)
本書ではギャンブルについて、凄腕ギャンブラーについて書かれるけれど、まず席につく時点で「この客はこんな勝負をしそう、この客は…」と人物を読む。バカラは「配った2枚、または3枚のカードの合計点数が9に近いほうが勝つ」というシンプルなものらしい。これに数千万の金が動くヽ(゚Д゚)ノ
これってただの運!?凄腕ギャンブラーって何?…かと思ったら、参加者の性格を読み取り、このカードが配られたらこの人物はどの行動をするかを読み取って勝ち上がるんですね。でも最後は結局は運。三枚目になんのカードが来るかなんてどんな凄腕でも何にもできないじゃん。これを「楽しい」と言えるギャンブル好きの胆力は怖いと言うかやっぱり私はやらなくていいや(-_-;)
しかしこの「運」に関して言えば、ル・シッフルはイカサマはしなかった、己の胆力だけで勝ち残ったってことは少なくとも卑怯者ではないのね。…まあそのあと卑怯で卑劣な振る舞いに及ぶわけだけど。
そう、作戦は成功したんだけど、この大勝負の朝から翌日の早朝までの間に、ジェームス・ボンドは三回命を狙われている。ジェームズ・ボンドも引退を考える。
映画では数作目なのでボンドベテランのつもりで観ていたんだが、小説では一本目で「引退」の言葉が出てくるのね。
007といえば映画ではおしゃれさやアクションを楽しみストーリーはツッコミながら(敵のアジトへの出入り簡単すぎる!とか・笑)観ていたのだが、小説は思っていたよりも精密で、ボンドも酷い目にも合う。人物の冷静な描写でギャンブル場面の緊迫、ボンドの味方の性格や立場に夜協力の度合い、そしてボンドの心意気は読んだほうが感じる。
ジェームズ・ボンド像にはどうしてもショーン・コネリーが思い浮かぶけれど、拷問とか引退を考えるとか女性への想いだとかの深刻さで考えると合うのはやっぱりダニエル・クレイグかなあ。
ヒロインのヴェスパー・リンドは、まあこの時代(第二次世界大戦後)「女性は男性の補助として働く、女性の魅力た大事」なので仕方ないけど、影のあるミステリアスな美女なのか、ボンドの足を引っ張るドジっこなのかが判断つけづらい(-_-;) (映画を観ているので知っていますけど)
そしてラストでジェームス・ボンドは英国諜報機関の仕事に新たに向き合う決意をします。この一冊かけて「凄腕諜報員ができるまで」という感じ。
ソ連の活動組織は「スパイに死を」を意味する「スメルシュ」。ボンドは、会議室での頭脳戦や他の国との取引は他の人達に任せて自分は泥臭い現場でスメルシュのような相手と戦い続けようと決意を新たにした。 -
Posted by ブクログ
最初の「戯れ」でセンセーショナルに見せつけられ、あとはじわじわドキドキ。
難解で哲学的で芸術的で、なかなか理解できず読み返すこともしばしば。はっきり理解したいけど、それができるようになってしまったら、もう引き返せない気がする。終始不気味で薄気味悪い。曖昧で退廃的。
もみくちゃで意味わかんなくて、この世の終わりって感じ。
感想を言おうとしたらぼんやりした言葉しか出てこない。読解力がないせいかも。
道化師の最後の祭り、魔力、ツァラルが印象深かった。
赤塔はまさにこの本の自己紹介って感じ。
あとがきで、リゴッティが評価され第二集第三集と続いてくれたらと書かれており、同じく私もそれを期待してます。 -
Posted by ブクログ
長かったー。2段組の小説なんて久しぶり。細かい描写が多すぎてもっと文字数減らしても話の筋は通るのでは…と上巻の最中は思ったけれども、下巻からはハイスピードで物語が進み始めて読む手が止まらなかった。あの上巻じれったくなるご近所さんとの平和な日常や子供たちとの時間は下巻への伏線だったと、今なら分かる。
物語の背景では、アメリカの所得階層と生活レベルがよく分かるし、銃とドラッグが合法的な文化ならではの不幸もよく読み取れる。トランプとメディアのことも。
スティーブン・キングの作品は初めて読んだ。心に残る作品だと思う。しばらくじっくりと余韻に浸りたい。隅々にまで本当らしさを感じる作家だと思う。悪人を殺すスナイパーは、大部分は善人で本人も自分は悪人であることを知っていて葛藤しながら、善くありたいと望む姿が人間らしく素晴らしく感じた。
壮大なる殺し屋のストーリーだった。