ネタバレ
Posted by ブクログ
2021年02月24日
短編集の第1巻。10個の話があった。どれも読んだ後げっそりする後味の悪さ。しかもどれも種類の違う後味の悪さで、ただただ嫌な目に遭ったやつや人間不信に陥るものまで多種多様だった。
表題作の「マイル81」はアメリカの交通量の少ないマイル81に停車している人を食べる車の話。いろんな人がその車に食べられて...続きを読むいく。どのキャラも簡単に人物紹介のエピソードが描かれることによって、感情移入ではないがもうすでに他人ではなくなる。名前と人物像を知ったちょっとした知り合い、顔見知りの隣人になる。顔は想像するしかないけど。そんな人があっという間に車に食べられる。辛い。終盤には4人家族も登場する。尚更つらい。最後はちょっとした「IT」的な展開となる。面白かった。
どの作品にもその前に、キングによるちょっとした制作裏話が書かれている。
「バットマンとロビン、激論を交わす」では、認知症気味の父親とレストランで食事をとった後、車で帰宅中に前に割り込まれたため、中指突き立てたらその車の運転手にぶん殴られる話である。そう裏話にも書いてある。大まかな筋をしてなお面白かった。
中指を突き立てた後、そんなことをしなきゃよかったと振り返って後悔する1文がある。その後、前の車から降りたその人物は見るからに人を殴りそうだと1ページにも渡って描写している。こちらとしてはもういっそ早く殴ってくれよとなる。この焦らしがすごいストレスになっていて、かつ怖さに拍車をかけてきた。そしていざ殴るシーンになると、それはまたえらく生々しくエグイぐらいにボコボコにされる。人間には必ず良い面と悪い面があると思うようにしてるし、ライムスター宇多丸も「あんなんでも誰かにとって大切な人」と歌っている。しかし、この殴ってくるやつには絶対良い面なんて無いと思わせて来るし、こんな奴のこと大切な人なんていんのかよってくらい瀕死に追い込んでくる。やばい。やばかった。
ちなみにバットマンとロビンは、主人公親子の関係性を表現しただけである。
他にも、近いうちに死ぬことになる人の名前が表れる砂浜を描いた「砂丘」やひどい悪口によって死に追いやる子供の幽霊を描いた「悪ガキ」、町の少女を殺した罪で死刑となった男がもしかしたら無罪かもしれないと疑う保安官を描いた「死」、同じ人生を何度も繰り返す「アフターライフ」が面白かった。
「砂丘」はこないだ見た志村けんのコントにも通じるところがあった。散々フッといてそっちか!と思わせるコント。なんのこっちゃと思うだろうけど。
盲腸か何かで入院してくるダチョウ倶楽部肥後。そこには老人の志村けんが入院していた。志村は言う、「そのベッドはしょっちゅう人が入れ替わるんだ」と。僕もすぐ退院する予定ですと肥後が答えると、「みんな死んでるんだよ」と志村は言う。ただの盲腸ですよと肥後は答えるも志村は「みんなそう言うんだよ」と。
その後も「お前で13人目だ」や「白い注射器ならいいけど赤い注射器はもう末期だ」などと不吉なことをどんどん告げる。
そんな2人の元に注射を打ちに医者がやってくる。肥後は白い注射器で安心する。
一方、志村の方は赤い注射器を打たれようとしていた。
「砂丘」もこんな感じだった。
「死」もこんな感じだったかも。人間には必ず良い面があると思ったら。。。
結論として「マイル81」「砂丘」「死」が面白かった
いくつかネットで無料で読めるらしい。