人は二本足で立った時から、次に空を飛ぶことにあこがれてきた。
同時に、二本足になったことで感じる「不安定さ」を「不安感」という感情に置き換えて、遺伝子にインプットされてしまった。
「足元の無い」状態の「落下」に対する不安感は誰にでもあり、ある人は「刺激」として喜び、ある人は「恐怖」として忌み嫌う。
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人類が自力による飛行を諦め、飛行機械を生み出したのは、ほんの120年前の出来事。以降は移動手段として、多くの人が「あこがれ」の空を体験することができた。
そんな時代だからこそ、この本が生まれた。
気の利いたスティーブン.キングの序文や、ベヴ.ヴィンセントのあとがきを含め古今の短編が19話。
映画「トワイライトゾーン」でおなじみのリチャード.マシスン「高度2万フィートの戦慄」や、アニメ「紅の豚」で飛行機乗りの墓場のエピソードとして取り入れられたロアルド.ダール「彼らは歳をとるまい」など、どこかで一度は目にしたことのある物語もあれば、今回のための書き下ろしも含まれている。
物語は「落下」以外にも、「密室」や「未知なる世界」など様々な「不安感」の仕掛けが施されて、短編一つ一つに原題「flight or fright」(fight or frightもモジっている)が凝縮されている。
「絞首刑に遭う旅客機」の表紙絵や、意味不明な邦題「死んだら飛べる」などと合わせて、テーマを「空の恐怖」とするアンソロジーは、見事に成功している。
スティーブン.キングは、本当に飛行機が嫌いなの?