あらすじ
内容
【※電子書籍版にはロアルド・ダール「彼らは歳を取るまい」は収録されておりません。ご了承ください】
あなたはその飛行機と呼ばれる、柩のような金属とプラスチックのチューブが安全だと信じているのか?
このアンソロジーを読めば考えが変わるかもしれない。
ひとたび機上のひととなってしまえば、あなたはもう何もできない。
積んでいる貨物が恐ろしい音を立てようが、大空でモンスターと遭遇しても、
未来人の誘拐部隊がやってこようとも、戦争が始まっても、
ゾンビが襲ってこようとも、密室殺人が起ころうとも、あなたは何もできないのだ。
飛行機に乗るご予定がおありの方は強い勇気をお持ちであることを願う。
なぜならこの本を読めば、どれだけ統計上は飛行機が安全だと言われようが、
決して統計ではわからない恐怖が待っていることがわかるはずだから。
スティーヴン・キング、ジョー・ヒルの書き下ろし作品など初訳10篇を含む、全16篇の恐怖のフライトへようこそ。
収録内容一覧
「序文」スティーヴン・キング/白石朗訳
「貨物」E・マイクル・ルイス/中村融訳 ★初訳
「大空の恐怖」アーサー・コナン・ドイル/西崎憲訳
「高度二万フィートの恐怖」リチャード・マシスン/矢野浩三郎訳
「飛行機械」アンブローズ・ビアス/中村融訳 ★新訳
「ルシファー!」E・C・タブ/中村融訳 ★初訳
「第五のカテゴリー」トム・ビッセル/中村融訳 ★初訳
「二分四十五秒」ダン・シモンズ/中村融訳 ★初訳
「仮面の悪魔」コーディ・グッドフェロー/安野玲訳 ★初訳
「誘拐作戦」ジョン・ヴァーリイ/伊藤典夫訳
「解放」ジョー・ヒル/白石朗訳 ★初訳
「戦争鳥(ウォーバード)」デイヴィッド・J・スカウ/白石朗訳 ★初訳
「空飛ぶ機械」レイ・ブラッドベリ/中村融訳 ★新訳
「機上のゾンビ」ベヴ・ヴィンセント/中村融訳 ★初訳
「プライベートな殺人」ピーター・トレメイン/安野玲訳 ★新訳
「乱気流エキスパート」スティーヴン・キング/白石朗訳 ★初訳
「落ちてゆく」ジェイムズ・ディッキー/安野玲訳 ★初訳
「あとがき――操縦室より重大なメッセージがあります」ベヴ・ヴィンセント/中村融訳
「作者について」 中村融訳
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人は二本足で立った時から、次に空を飛ぶことにあこがれてきた。
同時に、二本足になったことで感じる「不安定さ」を「不安感」という感情に置き換えて、遺伝子にインプットされてしまった。
「足元の無い」状態の「落下」に対する不安感は誰にでもあり、ある人は「刺激」として喜び、ある人は「恐怖」として忌み嫌う。
人類が自力による飛行を諦め、飛行機械を生み出したのは、ほんの120年前の出来事。以降は移動手段として、多くの人が「あこがれ」の空を体験することができた。
そんな時代だからこそ、この本が生まれた。
気の利いたスティーブン.キングの序文や、ベヴ.ヴィンセントのあとがきを含め古今の短編が19話。
映画「トワイライトゾーン」でおなじみのリチャード.マシスン「高度2万フィートの戦慄」や、アニメ「紅の豚」で飛行機乗りの墓場のエピソードとして取り入れられたロアルド.ダール「彼らは歳をとるまい」など、どこかで一度は目にしたことのある物語もあれば、今回のための書き下ろしも含まれている。
物語は「落下」以外にも、「密室」や「未知なる世界」など様々な「不安感」の仕掛けが施されて、短編一つ一つに原題「flight or fright」(fight or frightもモジっている)が凝縮されている。
「絞首刑に遭う旅客機」の表紙絵や、意味不明な邦題「死んだら飛べる」などと合わせて、テーマを「空の恐怖」とするアンソロジーは、見事に成功している。
スティーブン.キングは、本当に飛行機が嫌いなの?
Posted by ブクログ
飛行機に関するアンソロジー。どれも良かったけど、「第五のカテゴリー」と「落ちてゆく」はあまり合わなかった。お気に入りは「高度二万フィートの悪夢」と「ルシファー!」かな。 作品群にはホラーがあり、戦争物があり、ミステリがあり、SFがあり、ファンタジーもゾンビもあり…こうみると、飛行機というだけでも幅広く読めるなぁ、と。
Posted by ブクログ
これたぶん「トワイライトゾーン」で見たよね、と思われるマシスン『高度二万フィートの悪夢』は、やっぱり秀逸だなあ。
筒井康隆『五郎八航空』も入れていただきたいところ。
Posted by ブクログ
スティーヴン・キング&ぺヴ・ヴィンセント編「死んだら飛べる」。飛行機に纏わる「恐怖」を描いた短編を編んだアンソロジーで、SF、ゾンビもの、怪談風のもの、リアルに怖い話からファンタスティックなもの、ミステリーまで、多種多様。そして、最後の一編は小説ではなく詩、というところが、一ひねり加わっていていっそう印象深いものになっていると思います。
全17編中初訳が10編。編者のキング大先生とご子息ジョー・ヒルはこのための書下ろし!私はヒルのことを「もしかしたら父親以上の天才では」と思っているのですが、今回も「よくこんなことを思いついたな」というような、絶望と希望が入り混じった一編だし、われらがキング先生はやっぱりキング先生で、ただし「優しい方のキング」というのも、父子でバランスがとれていると思いました。
どれもこれも際立っていて、すべてを一つ一つ紹介したいのですが、さすがに多いので心に残ったものだけ紹介しますと、まずはコナン・ドイルの「大空の恐怖」から。飛行機が飛び始めて間もない時代にこの着想を得たドイル先生はさすがとしか言いようがありません。とある有名な飛行士が消息を絶ってのち、彼が書き残した手記が英国の片田舎の農場で見つかり、一部が欠損しているものの、その手記に書かれていたのは想像を絶する大空の恐怖、というもの。高度四万フィートがまだ人類未到達だった時代の大空への憧れと恐怖を描いています。
「高度二万フィートの悪夢」はみんな大好きリチャード・マシスンの作品。そう、あの映画(もとはドラマ)「トワイライトゾーン」の中でジョン・リスゴーが主演した一本の原作です。これは外せませんね!
レイ・ブラッドベリの「空飛ぶ機械」は古代中国を舞台にした不思議で残酷なお話。詩情と悲しみに彩られた幻想小説です。
「彼らは歳をとるまい」は「チャーリーとチョコレート工場」でおなじみのロアルド・ダールの作品。ダールは第二次大戦のエースパイロットであり、瀕死の重傷から一命をとりとめたという事実を鑑みれば、この短い物語はもしかすると彼自身が体験したのでは?と思いたくなります。
順番は前後しますが「戦争鳥(ウォーバード)」(デイヴィッド・J・スカウ)は爆撃任務を行う兵士たちの戦場(空中)での生々しい描写に息をのむ一編。松本零士の戦場まんがシリーズにも通じる戦場の恐怖と戦争のむなしさに慄然とします。
そして、最後を締めるのはジェイムズ・ディッキーの詩「落ちてゆく」。飛行中の旅客機の非常口が突然開いて、客室乗務員が空に吸い出される(放り出される)という珍しい事故の実話をに着想を得て書かれた、恐怖と美しさに満ちた短い叙事詩。大空を漂う客室常務員は、地上に墜落したあともしばらく息があったという・・・。なんというこのアンソロジーを締めくくるにふさわしい一編であることか!
ああ、最後に一つだけ。この本は空の旅へのおともにはお勧めできません。空の恐怖をリアルに味わいたい、というのなら別ですが。
Posted by ブクログ
17編の航空機にまつわる恐怖短編集。
恐怖と言っても、化け物が出てくるような怖さもあれば、墜落の恐怖もある。
こんな鉄の塊が空を飛んでいるってこと自体、そもそも恐ろしいこと…
ささ、搭乗手続きが終わったのなら荷物を持って快適とはほど遠い空の旅へ。
本書を旅のお供に持ってきた、だって?
そりゃああなた、いいセンスだ。
どうぞご無事で。
いきなり最後に収められた話だが、「落ちてゆく」は本書の締めくくりにふさわしい。
荒唐無稽?
いや、この信じ難い出来事は実際の事件に着想を得ている。
流れるような詩が、近づく死が、美しく残酷に迫る。
空から人が落ちてくる、なんてラピュタじゃあるまいし。
「彼らは歳をとるまい」は、ロアルド・ダールの作品だ。
『チャーリーとチョコレート工場』で有名な著者だが、別人の作品に思える。
本作の飛行機乗りが見たのは幻だったのか。それとも。
既に他界した私の親族に第二次大戦時の飛行機乗りがいた。
似たような体験をしたこともあったのだろうか。
言葉少なに語ってくれたのは、「戦争は、絶対だめだ」の言葉だけ。
幸いなことに、親族は歳を重ねて家族に見守られて亡くなったが、若くして消えた人々も多くいただろう。
本作は怖くて不思議で、とても、悲しい。
Posted by ブクログ
スティーブン・キング編の飛行機を題材にした恐怖小説アンソロジー。
当たり外れが大きいように感じたけど、訳文の読みにくさのせいかもしれない。
中村融訳の作品は読んでて意味がとれないような箇所が結構多くて難儀したので、正直途中から雰囲気で読んだ。
以下個別感想
「貨物」★★★
カルト宗教により毒殺された大量の子どもの死体を運ぶ貨物機の話。怖いというより物悲しい話。あまり面白くはないけど、最後の「あの子たちを外で遊ばせてやったんですか?」って台詞は良かった。
「大空の恐怖」★
コナン・ドイルの恐怖小説。まだ飛行機が登場して間もない頃の作品で、流石に時代を感じてピンとこない描写が多い。ダラダラしている。
「高度二万フィートの悪夢」★★
旅客機の翼にグレムリンを発見した男性が、何とか他の人に伝えようとするも信じてもらえず孤立していく。あらすじ通りの話で、想像通りに終わる。いまいち印象に残らない。
「飛行機械」★
航空産業を皮肉ったショートショートなんだけど、小説としての面白さも皮肉としての面白さもあまり感じず。
「ルシファー!」★★★
時間を戻せる指輪を拾った邪悪な男の顛末。オチよりも指輪の力で、殺人や暴行をしては無かったことにする主人公の邪悪さが怖い。
「第五のカテゴリー」★★
米政府の法律顧問として、拷問を正当化するための覚書を作成した法学者が航空機内で異常な事態に遭遇する。
一番楽しみにしてたけど、とにかく読みにくくて苦労した。
「二分四十五秒」★
シンプルな話のはずなんだけど、これも読みにくい。あんまり印象にない。
「仮面の悪魔」★★★★
呪いの仮面による機上の惨劇。シンプルでおどろおどろしいホラーらしいホラー。
「誘拐作戦」★★★
未来人による飛行機事故で死ぬ予定の乗客らを対象にした誘拐作戦。SFらしいSFで普通に楽しい。オチが嫌な感じなのも好み。
「解放」★★★★★
飛行中に核戦争が勃発した旅客機の混乱の様子を描いた群像劇。本アンソロで一番好き。段々状況の最悪さが判明していく様子はスリリング。誰かにとっては悪質なレイシストの男性が他の誰かにとっては人生の救世主だったり、そういう多面性を描いていたのもよかった。
ここまで書いて疲れちゃった。気が向いたら残りを書くかも。