薬丸岳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
久しぶりの薬丸作品。
私がこれまでに読んできた薬丸さんの小説と比べると異端な印象を受けました。
コロナ禍で居場所をなくした若者たちがこうふくろうというコミュニティを立ち上げ、互助会的な活動を行うストーリー。
多感な時期に血の繋がった家族からの愛情が感じられず苛まれる登場人物の心理描写はさすがです。
序盤は人助け中心で物語が展開していきますが、中盤から不穏な空気が漂い始め、あっという間に真っ暗闇へ。人間は環境の産物となり得ることを知らしめさせられ、読んでいてヒリヒリしました。
登場人物が多くコミュニティ内でのニックネームがあり、ニックネームが付く前と付いた後で時系列も行ったりきたりするので私 -
Posted by ブクログ
薬丸さんの作品はいくつか読んできたけれど、この作品はこれまでとは少し違う印象を受けた。
テンポよく読めて決してつまらなくはないのに、どこか物足りなさを感じる。これまでのようにガツンと心を揺さぶられるような衝撃や余韻が、少し薄く感じられた。
「どうしてあんたがここにいるんだ!」その一言から裕輔の人生が一変し、男を殴り死なせてしまう。
20年前に母が父を殺害し、孤児となった兄妹。兄として妹を守り続けてきた裕輔が、なぜ逃亡という道を選ばなければならなかったのか。その理由が明かされたとき、胸の奥に哀しさと虚しさが残った。
これまでの薬丸作品に比べ、社会的テーマに加えて「家族とは何か」に深く踏み込んだ -
Posted by ブクログ
コロナ禍は人々の心に暗い影を落としたと思う
産業的打撃もすごかっただろう
自分の仕事はたまたま影響を受けなかったけど
簡単に職を失ってしまい救済されない人が多くいたのだろうなぁ
しかしこのお話の中心は学生が多いし、どちらかというとコロナより家庭の事情が大きいから
一概にコロナのせいとも言い切れないがキッカケにはなったのだろう
コミュニティが大きくなれば一枚岩でいられなくなり、
もともとの思想は良いものだったのに、悪いことを考える人はいる
清涼な水に一滴落とされた染料のように広がっていく
時系列がバラバラにされているのは何か意図があるのかもしれないがちょっと読みにくかった -
Posted by ブクログ
本書を読んでコロナ禍を思い出した。あの頃は蜜を避けるために人との交流は減り、常にマスクを着用し、外出や人混みには神経をすり減らすような生活だった。振り返ってみると、よくあんな生活をしていたと思う。
コロナ禍で人との繋がりが減ると、人恋しくなる気持ちはとてもよくわかる。ずっと一人でいたら、気づけば一日声を出すこともなく、自分だけが取り残されたように感じることもあった。特に家族と離れていたり、家族とうまくいっていなければ、その気持ちは一層強くなるだろう。
本書『こうふくろう』では、まさに一人で寂しい気持ちを抱えた人たちが集まり、「家族」を作っていく。コロナ禍でなくても、仕事で嫌なことがあったり