薬丸岳のレビュー一覧
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薬丸岳『刑事の怒り』講談社文庫。
刑事・夏目信人シリーズの短編集。人間の犯した罪の背後にあるものを夏目の鋭い目が暴き、事件の真相を明らかにする。時に暖かく、時に残酷な夏目の目。『黄昏』『生贄』『異邦人』『刑事の怒り』の4編を収録。
『黄昏』。娘が高齢の母親の腐乱遺体を隠し続けていた理由とは……人びとが隠していたい人生の影の部分をも暴き出す夏目の鋭い目。ちょっと残酷のように思う。日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
『生贄』。極悪非道なレイプ犯罪。公園のトイレでレイプ被害にあった女性が加害者を刺し殺し、警察に自首する。事件に違和感を覚えた夏目は……夏目の正義感は十分理解出来るが、暴かなくとも -
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ネタバレ面白かった。
平和な中学校には、平和を維持するために実は自警団が存在した。
自警団は、本当に必要なのか?
「臭いものには蓋をする」ではないけれど、根本を解決せず上辺だけきれいにする。
一時的には生徒みんなに安心と平穏をもたらすけど、本質的には何も解決はしていない。
まだ未熟な中学生にはそれで平和に卒業できれば何も問題はないと考えるのは当然の事。
秋葉先生が、それに必死に立ち向かい、生徒一人一人に向かい合う姿はとても感動した。
それなのに。。。。最後の一文。
えっ?!今までの感動は?
世の中、綺麗ごとだけでは平和は維持できないということか。
でも、友情とか先生の熱い思いとか、とても良かった。
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「みやつじやくとうぐう」と読むんだそうです。
好みの作家さんが名を連ねていて、その豪華な面々に、思わず即買い。
ミステリーというよりはホラー寄り。勝手にリレー形式のミステリーだと思っていたので、連作短編集のようなものをイメージしていましたが、それぞれが独立したアンソロジーですね。
リレーだと思うと、前の作品を強引に入れ込んだでしょ感が出ちゃってる。でも、宮内さんの作品のラストは秀逸でした。リレー形式ならではの〆だと思います。
アンソロジーって、好きな作家さんの作品を、濃密に、いいとこどりしたような感覚で楽しめるのはもちろん、知らなかった作家さんや、興味はあったけれどまだ読めていなかった作家さ -
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平和な中学校生活を送るために、SNSを使った、生徒達による自警団は必要なのか。
中学時代は、友達間のいざこざや、学校でのトラブルは、つきもの。
ガーディアンと呼ばれる自警団が、加害者や問題児を色んな手段で、不登校に追い込むので、この学校は一見平和です。
赴任したばかりの秋葉先生は、その妙な雰囲気に違和感を覚え、真相を調べ始めます。
こんな組織が、必要なのか、不要なのか。
それは、ガーディアンのおかげで、直接的な被害を受けなくなった生徒の言葉にあると思います。物語の要なので、その言葉は言えないけど、心に響く、深い言葉でした。
大人になっても、人間関係のトラブルは -
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元警官の朝倉のもとに娘からと思われる不審な電話を受け、元妻の奈緒美に電話する。暫くして奈緒美のところに娘の梓を誘拐したとの電話が入る。3年前の事件で警察を追われた朝倉は警察が信用できないために自力で誘拐犯に立ち向かうことを決意する。誘拐事件の影には3年前の事件が大きく拘わっていることが明らかになり、朝倉は3年前の事件の真相を探るとともに誘拐犯と警察と同時に対峙する。携帯電話を駆使して誘拐犯が朝倉と奈緒美を誘導し、朝倉と奈緒美は携帯を利用して協力者と連絡を取ろうとする、携帯をうまく話の中で活用している。最後にすべてが明らかになり、ハッとさせられるとともに大きく感動する素晴らしい小説。
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『決して警察を信用してはいけない、俺と自分だけを信じろ!』
少年犯罪や冤罪などの社会派ミステリー作家の色が強い薬丸氏にしては、珍しい誘拐ミステリー。
三年前のある事件で、警察を辞めた主人公・朝倉 真司。
妻とも別れ、冴えない一人暮らし。
そんな彼に、娘・梓を誘拐したとの電話が...
犯人はだれか、なぜ娘を誘拐したのか?
全ては、三年前の事件が、発端なのか?
誘拐にまつわるハラハラドキドキは、もちろん、登場人物の心理のすれ違いも垣間見え、読む方もドキドキします。
朝倉のバディは、一癖も二癖もある人物ばかり。
果たして、彼は、真実を掴み、娘を取り戻すことが出来るのか?
真実の裏の裏から -
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ネタバレ日雇いでネットカフェに寝泊まりしながら、その日暮らしをしていた主人公。ルームシェアを持ちかけられた男に裏切られ、わずかな財産も全て失ってしまう。仕事もお金もなくなった主人公は闇掲示板で集った仲間と強盗に押し入った。最中、主人公は何者かに殴られ意識を失う。気付いたときには屋敷は燃やされ、中からは3人の遺体が見つかる。主人公は身に覚えのない放火と殺人の容疑をかけられ、警察から逃亡しながら真犯人を探すことになる。
主人公がどん底と呼ばれるところまで堕ちていくのが、とてもリアルだった。しかし、真犯人の絶望や悲しみは想像を絶するものだった。それで人を殺していいとはならないが、だったらどうやって彼は幸せ -
ネタバレ 購入済み
よかった。
犯罪者遺族の苦悩が色々な立場から描かれていて、読んでいて辛くなりました。
でも、人はこうであってほしいというラストにたどり着けて、よかったです。 -
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「刑事のまなざし」で良くも悪くも印象的だった「オムライス」がまさか絡んでくるとは。
表題作以外は、暗い気持ちだけじゃない、ほのかなあたたかさや希望や愛が見えて、一作目とは雰囲気が違うな~しみじみと良いな~と思ったけど(不惑はそういう話じゃないけど、なんとも言えない面白さがあった)。表題作が苦しくて苦しくてしょうがない、大人の身勝手な欲望と期待がこどもの心と人生を壊すんだなあと痛感。このレベルではなくてもこういう子はたくさんいるとも思う。
この子が復讐を叶えたこと、悲しいけど私は肯定したい。もしかしたら数十年後には許せるかもしれないけど、大人にされたことを子どもの間に許せ、というのはエゴでしかな