薬丸岳のレビュー一覧
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主人公は59歳。顔まで刺青がびっしりと彫られ、左手は義手。傷害事件を起こして服役して以来、何度も刑務所を出たり入ったりの生活を送る男…実はこれには胸に秘めた思いがあった。
古くからの友人、元担当弁護士など主人公を取り巻く5人の視点が各章になっていて、主人公の過去を解き明かしていく。
『運が悪い』と言ったら、それで全てが当てはまってしまうが、生い立ちから不幸がつきまとう人もいるだろう。お金に目が眩み、誰かを陥れたり、騙されたり…そして『恨み』が生まれ、『復讐心』が芽生える。
『復讐』をする話って、ドラマや小説に多い。そこには殺人事件が絡んでいたり、ミステリー要素が多分にあるもので、僕も好ん -
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YouTube配信のネットニュース『ブレイクニュース』の編集とレポーターをし、一千万超えの再生回数を連発する謎の女性:野依美鈴(のよりみすず)。
テレビや雑誌では描けない真相を追求するためには強引な取材を行い、時にはコンプライアンスにも違反するような番組編集をおこなう。
小説は短編集だが、それぞれのテーマも8050問題、パパ活、冤罪、ヘイトスピーチ…旬な話題をYouTubeで番組として取り上げて、問題提起する。一歩間違えたら、迷惑系YouTuberである。だが、実際にありそうな内容ばかりだ。
最後に野依美鈴が何故この『ブレイクニュース』を続けているのかがわかり、解決に向かう途上で小説は終わる -
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渋谷のスクランブル交差点で起こった無差別殺傷事件。
被害者の1人である明香里は、付き合っている航平との約束がドタキャンされた後に事件に合った。
その際、明香里を助けてくれた男性は死亡する前、明香里に訴えてきた言葉があった。
その言葉を、本人の代わりに伝えたいと動き出す明香里。
しかし、そこまでの道のりは決して楽ではなかった。
明香里は顔やその他の身体に数十ヵ所の傷を負わされ、その恐怖からなかなか立ち直れずにいた。
航平とも別れ、家族にも辛く当たってしまう日々…
一方、事件を起こした犯人の小野寺の過去を知ったライターの溝口は、自分の過去に重なり小野寺に興味を持つ。
小野寺から送られてくる手紙を元 -
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ネタバレ・終の住処
「思い出ですよ。ご主人との思い出を嚙み締めながら最後の時間を過ごしたいというのが彼女の希望だったんじゃないですか」
・刑事の約束
「人を憎むことでしか生きられない、人を殺すことでしか生きられない心をなくした人間だっているんだ。ぼくのようにね」
まさかの連続でした。娘さんが目覚めるのがまさかでしたし、前作の「オムライス」の少年が今度は犯罪者になってしまうのもまさかでした。でも親に殺されそうになったことがある子どもが真っ当な人生を歩めるはずもないと思う。犯罪までは犯さないかもしれないけどずっと人を疑いながら生きていくような人生なんかじゃないかな。母親が子どもの心を殺さなければ今 -
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人生を振り返ったときに、あの時もしこうだったら加害者になってしまっていたかもしれないと思うことは人間誰しもあるだろう。
軽い気持ちで、たまたまが重なり、実際に加害者になってしまうこともあるだろう。
起こしてしまった罪を消すことは当然できない。
その罪にどう向き合っていくのか大変考えされられた。
当人がどれだけ反省しているかは周りはわからない。
罪に向き合い、正直に、誠実に生きていこうとする姿が描かれているが、自分が被害者遺族の立場であったらどう思うのだろうか。自分だけスッキリすんなとでも思ってしまうかもしれないな。
誰にでも起こり得る可能性がある題材で、良く考えされられた良作であった。
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ある目的のため、女はひとり、立ち上がった。
ユーチューブで人気のチャンネル『野依美鈴のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌なども相まって、動画の視聴回数は1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、週刊誌記者の真柄は情報を収集し始める。すると彼女の過去が見えてきて……。
デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新たな社会派小説。