薬丸岳のレビュー一覧
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面白かった
「刑事のまなざし」「その鏡は嘘をつく」に続く夏目シリーズ第三段
5編からなる短編集です。
今までの物語同様、単純な謎解きではなく、人の心の複雑さをあぶりだす人間ドラマとなっています。この手の作品は大好き。
しかし、第一作、第二作に関連している人物が出てきているようですが、ほぼほぼ前作の内容を覚えておらず、その辺は楽しみ半減でした。残念。
■無縁
DVD販売店で万引きをした少年の物語。
少年は得体のしれない女性と暮らす戸籍のない子供。
黙秘を貫く子供の正体は?
なぜ戸籍がないのか?
家族とは?深い...
■不惑
ホテルで結婚式のビデオ制作する男の物語。
同じ場所で開かれた高校の同 -
Posted by ブクログ
中学校を舞台にした、社会派サスペンス。自警組織の粛清によって秩序らしきものをもたらそうとする生徒たちと、それに違和感を感じる生徒たち。その組織の存在に気づき実態を暴こうとする主人公の教師と無関心な教師たち。色々な人物が入り乱れ、名前とプロフィールを覚えながら読むのが大変。とは言いつつ、物語に引き込まれて、一気に読み終えてしまった。やるせない思いが積み重なっていくが、最後は薬丸岳スタイルの温かさに包まれる。薬丸作品の中では最も人気が高いと思う「刑事のまなざし」などのシリーズの夏目刑事が脇役的に出てくるが、彼が登場しただけで安心感が広がる。
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Posted by ブクログ
ネタバレいつものことながら、めちゃくちゃ読みやすい。すぐに世界に引き込まれてしまう、薬丸さんのうまさよ。
顔に豹柄の刺青を入れ、刑務所を出たり入ったりの生活を繰り返す片桐という男を巡る、連作短編集。
はじめに片桐が登場した時は「なんてイヤな人間…絶対近寄りたくない」と顔をしかめていたのに、まさか彼にこんな真実が隠されていたとは。娘に嫌われてでも、妻と娘への愛情のために人生の大半を費やした男。自分の手を切り落とすことも厭わない愛って、どんなものだろう。
人生のほとんどを復讐に費やし、どんなにか苦しかっただろうか。癒されることのない時間を過ごし続けた男のドラマに、なんともやりきれない気持ちになった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ顔にヒョウ柄の刺青を入れ、犯罪を繰り返す男、片桐。第一印象はただの粗暴な男で、現実にいたら嫌悪感しかないタイプ。
ですが、かつては夫婦でラーメン屋開業を目指す、ごく普通の男だったといいます。どうしてこうなった? と思い始めてからは、ラストまで一気読みでした。
読後感は、切ないというかやるせないというか…… いちおう復讐は果たせてはいますが、片桐の人生を振り返ると、先ほど書いた感情――切なさ、やるせなさ――がこみあげてくるんですよね。
変な例えですが、ペットロスに近い状態? 一気読みできたので面白いっちゃあ面白い本なのですけど、妙につらい気分にさせられて落ち込みました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ薬丸さんも好きな作家さんのひとり。
薬丸さんのミステリーは、胸が締め付けられるテーマも多いけど…
とても興味深く、惹きつけられます。
この本は、夏目刑事シリーズ。
・刑事のまなざし
・その鏡は嘘をつく
・刑事の約束
に続くシリーズ第3弾。
夏目信人。
一人娘の絵美が通り魔事件の被害者となり、意識不明となる。
当時、法務技官だった夏目は、犯人を捕まえたいとの思いから、警察官となった。
警察小説はちょっと苦手なのですが、このシリーズは別。
夏目の人間的魅力に惹きつけられる。
【刑事の怒り】は4編の連作短編集。
・黄昏
・生贄
・異邦人
・刑事の怒り
どの作品も社会問題をテーマにして -
Posted by ブクログ
夏目刑事シリーズ第4弾。
2話目からは、東池袋署から錦糸署へ異動。初日から遭遇した事件でコンビを組むのは、女性刑事本上。何やらいわくありげな相棒で、今後のコンビぶりに興味あり。
短編4編はそれぞれ、年金やレイプ、外国人労働者と、現代日本の社会問題を取り上げながら、ミステリーとしての面白さも満たしてくれる。
表題作では、夏目の娘絵美とシンクロする、身体活動や知的活動ができない患者への対応の問題を扱う。医療過誤か自死か、あるいは事件か、夏目の怒りは著者の怒りでもある。
ただ、娘絵美が作品ごとに回復しているのを見るのは、次回作への楽しみとなる。