薬丸岳のレビュー一覧
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ネタバレ病が刻一刻と命を蝕んでゆく中、方やその奥底に秘めてきた欲望を開花させ、方やそれを止めるために執念を燃やす。
余命を知ったことで、愛する人から愛される喜びさえも凌駕するほどに膨れ上がる殺人衝動は、幼少期のトラウマ云々というより、『ジキルとハイド』のハイド的というか、ケモノのよう。そして愛する人の死が、愛する人にだけは本性を知られたくない、というただ一片残った人間性や理性をも奪い去り、怪物へと変貌させる。怪物に変貌を遂げた自分は地獄に落ちる、死んでも恋人と同じ世界に行くことはない、だから彼女に自分の本性を知られることはない、と安心しきっていた榊にとって(ここはなんだかロマンチスト)、蒼井の告げた -
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ネタバレ202503/上下巻まとめて。なかなかの長編だけど気になって一気読み、これまた流石薬丸岳な作品。面白かった。主人公凛子がヒロインとして完成形ではなく成長途中なとこも良いし、弁護士・西が元刑事という経歴が効いてるキャラなのも良い。展開的には都合良いところもあり、納得しがたいとこ(特に、いくらなんでも、涼香が加納の母親を慮って真実を語らなかったってのは…)もあり。なので、薬丸ミステリにしては若干物足りなさはあるけど、謎解きというよりは、弁護を通して描かれるところを味わう作品。「刑事弁護人」、まさしくなタイトル。『被疑者にとって、彼らの話を聞くことができるのは弁護人しかいない』『被疑者にとって誰も味
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ネタバレ202503/上下巻まとめて。なかなかの長編だけど気になって一気読み、これまた流石薬丸岳な作品。面白かった。主人公凛子がヒロインとして完成形ではなく成長途中なとこも良いし、弁護士・西が元刑事という経歴が効いてるキャラなのも良い。展開的には都合良いところもあり、納得しがたいとこ(特に、いくらなんでも、涼香が加納の母親を慮って真実を語らなかったってのは…)もあり。なので、薬丸ミステリにしては若干物足りなさはあるけど、謎解きというよりは、弁護を通して描かれるところを味わう作品。「刑事弁護人」、まさしくなタイトル。『被疑者にとって、彼らの話を聞くことができるのは弁護人しかいない』『被疑者にとって誰も味
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上巻で 戸籍も与えられなかった少年が
自分の知能で生き抜くというテーマなのかなと
思っていました。
下巻からは、物語が膨らんで仲間という存在を彼なりに受け入れていくという流れを読みました。
神に選ばれし子と選ばれなくても懸命に生きる子。IQ知能という側面だけでは、生き抜けない。
EQ感情知能は、経験と享受で高まることがあるのではと思わせてくれる。
表現は未熟でも 恩を返すという意識を持ち始める少年。
少年の冷静さに彼を想う少女の情熱的な行動を対比させてエンタメ感満載。
闇の組織が中途半端で、悪の頂点の男はもしかしたら小説の始まりからは違うエンドだったかもしれないなと思いました。
それでも先を -
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ネタバレ今回も、被害者遺族がメインで動いているお話。被害者遺族の抱える、加害者への報復を考えてしまう気持ちや、拭えない黒い部分を描きつつ、それでも前を向くために動く人たち、加害者などとの交わりで主人公が葛藤しながら自分の気持ちと向き合っていく。
加害者はどうしたら許されるのか、許されたいと思ってはいけないのか。被害者遺族の心情だけでなく、加害者側の心情も想像させられる。好きになった人が前科者だったらどうなるのか、知る前のように傍にいることができるかについても少し考えさせられる。
個人的には、許す許さないではなく、一生背負っていくものではないだろうかと思う。それは加害者と被害者遺族の関係で起きることであ -
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大好きな薬丸作品。
600ページ近くある分厚い文庫本なのに、あっという間に読んでしまった。
でも内容は重たかった。
自分を親友と言ってくれる友人が日本を震撼させた大事件の犯人だったら…
小説として客観的に読んでいるのと実際に自分がその立場になったのとではきっと違う。
読者の立場だと犯人だった友人のいいところも優しいところも見えるから、葛藤はあるにせよ友達として付き合えそうにもちょっと思えたけど、現実にそうなったら、どう思うのか想像出来ない。
普段は人を先入観で見ちゃいけないと思ってるけど、実際にそうなってそんな綺麗事が言えるのか…。
…どう思うのかではなくてどうすべきなのか。
きっと私には一生 -
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罪の境界という意味を知ったとき腑に落ちた。
私は、ダメなことかもしれないけど一人一人に感情移入してしまって感情が忙しかった。圭一にも恵子にも省吾にも晃弘にもこれまでの人生があって苦しみや思いがあったことに。もちろんもう1人の被害者の女性やトムの母親にも違う苦しみや思いがあっただろうなと想像した。
刑務所にいた方がマシな生活を送ってきた圭一。虐待、育児放棄、万引き。そんな生活を送ってきた子供時代と重なるトム。トムみたいな子が本当に存在するんだよなぁと考えたら悲しくなった。
誰かに優しくされたという記憶が残って大人になった時に思い出してほしいという明香里の゙気持ちがすごいよくわかった。本当にそう思 -
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『刑事弁護人 下』。
ホスト・加納怜治を殺害した被疑者として、逮捕された、元刑事・垂水涼香。
涼香の弁護人、持月凛子と西大輔は、涼香の供述に虚偽があることに気付く。
その理由に4年前の涼香の息子・響の死が関わっていることに…
子どもを殺された親がその加害者を一生許すことはないだろう。
一方で、怜治が犯した罪は一生消えない。
怜治から受けた心の傷がまだ消えていない匠海のように。
怜治の母親はこれをどう思うのか…
匠海の苦しみは棚に上げて、怜治の死の責任のみを涼香に問うのか…
もとは響の死に怜治がかかわっていた可能性があることだし、幼い子どもを虐待していたことにあるにもかかわらず…
結局、因果 -
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初作家さん。
主人公はバツイチの「吉永」
ある日、雑木林で少年が殺害されているのが見つかる。警察は行方不明届けが出されている中学生二年男児とみて捜査中…とのニュース。
別れた妻と暮らす自分の息子の「翼」と同い年だなぁ…なんて思っていた吉永。
そんな吉永は事件が起こった日、翼からの着信があった。飲み会だったのですぐに出ず、後でかけ直したが翼は出ず…留守電を残したが、その後の返事はなし。大したことない内容だったのだと気に求めずにいたが……
元嫁からの電話…「翼が逮捕された」
そう、翼はクラスメイトを呼び出しナイフで殺害していた。
弁護士にも父親にも母親にも心を開かず、殺人の経緯、動機…何も話さ