薬丸岳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
少年鑑別所の法務技官から警察官に転職した、刑事・夏目信人が活躍する短編集。
『彼が何故転職したのか』を含めて物語は進んでいく。
刑事といえば、視線が鋭く無骨なイメージがあるが、本書の夏目刑事は物腰がとても柔らかく温かい眼差しの“らしくない刑事”だった。
そんな“らしくない刑事”の魅力は、人間に対する温かいまなざしと犯罪に対する厳しい姿勢。洞察力と観察力の鋭さに、ただただ感心した。夏目刑事の魅力的な人間性で、読後は完全に心を奪われた。
良し悪しは別として、大切な何かを守りたいというのは全編に流れるテーマ。
薬丸岳さんらしい『憎しみの連鎖』『贖罪とは何か』について問う深くて切ない社会派ミステ -
Posted by ブクログ
ネタバレ上下巻900ページ以上の長編であったが、先が読めない展開で最後まで飽きる事なく読み終えた。
下巻は町田が少年院を出て大学生になり、学生達と起業する。平穏な日々の一方で、得体の知れない闇組織の室井がふたたび町田に接近する。その真意は…
凄く面白かったけど、ラストに並外れた知能指数をもつ室井と町田の頭脳戦を期待していたので、あっさりとした結末は少し残念だった。
自分の頭脳しか信じられなかった町田が、仲間の大切さに気が付き少しづつ人間らしい感情が芽生えていく姿が嬉しかった。特に最後のおにぎりのシーンは本当に心が温かくなり、穏やかな読後感が得られた。 -
Posted by ブクログ
訳ありの過去を持つ主人公が、過去を打ち切る為に交わした復讐代行の約束。16年後妻子にも恵まれ平和に暮らしていた主人公に突然手紙が届く「その約束を守らなければ家族の命を奪う」と。脅迫者は誰か、家族は守れるのか。スリリングな展開に手に汗握るミステリー小説。
薬丸岳さんは『更生・償い』のテーマの作品が多いが、本作は『恨み・復讐』が全面押し出されている作品だった。
主人公の過酷な幼少期には同情するが、やや身勝手な言動に感情移入出来なかった。ラストの主人公の涙もモヤっとしたし、昔犯した罪への贖罪が最後まで私は感じ取られなかった。
『犯罪被害者の家族が加害者になる』という憎しみの連鎖について考えされられ