穂村弘のレビュー一覧

  • ぼくの短歌ノート

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    この本は以前地元の文芸の講座に穂村弘さんをお迎えしたときに、予習として単行本を買って読もうとしたのですが、その時はおそらく通読できなかった本です。
    初版の2015年発行のものを買っているので9年程前になるかもしれません。

    今、少し短歌を勉強して、やっと最後まで読めたという感じです。

    『群像』誌上に連載していた「現代短歌ノート」をまとめたものだそうです。近現代の名作から中学生の投稿歌までテーマごとに気になる短歌を集めて、あれこれ考えてみられたそうです。
    穂村さんの『はじめての短歌』に「現代短歌ノート」に引いた例歌を挙げて話した部分があるそうで、だから最近読んだ短歌や改悪例が載っているのかと思いました。

    こういう歌の解説付きの本は短歌初心者の私には大変ありがたいです。



    どのような感じか本書から少し引用します。




    p97より 
    今と永遠の通路

    <さりげなくさしだされているレストランのグラスが変に美しい朝>  早坂類
    解説略

    <目の前のコップがびっくりするくらい光ってて、今日犬が出ていった>  陣崎草子
    解説略

    <夕光のなかにまぶしく花みちてしだれ桜は輝きを垂る>  佐藤佐太郎
     写実の名作である。「夕光のなかにまぶしく花みちて」という状況説明の中に、眼前の今が特異点になる予兆がある。そしてポイントは「しだれ桜は輝きを垂る」。実際に垂れているのは「しだれ桜」だが、それを「輝きを垂る」と表現することによって、今から永遠への回路が開かれている。しかも、永遠のまぶしさは、あくまでも「夕光」のなかの「しだれ桜」のそれとして現実的にも説明され得る。この踏み留まり方が、前掲の二首とは決定的にちがっていて、短歌共同体の名歌とされる理由でもある。

    <湯口より溢れ井でつつ秋の灯に太束の湯かがやきておつ>  宮柊二
    解説略

    <金色に砂光る刹那刹那あり屋出でて孤り立ちし広場に>  宮柊二
    「刹那刹那」とは今、今、今、今、今のことだろう。ここでは目の前にある「砂」に宿った小さな永遠が、連続的に煌めきを放っているのだ。
     佐藤佐太郎は斎藤茂吉の、宮柊二は北原白秋のそれぞれ高弟であり,引用歌はさすがに鍛えられた目の力と手の業を感じさせる。しかし、平成の歌人たちは、このような今が永遠に繋がるプロセスをダルマ落としにすることに、倒錯的なリアリティを感じているようにみえる。結果的に現実的な状況から算出できないほどのまぶしさを抱えた歌が生まれてくる。それに伴って短歌の価値観にも変動が生じているようだ。
     冒頭の二首の他にも、こんな極端な例がある。

    <唐突に村上姓は素敵だと気づき村上さんに言いにいく>  小林真実
    解説略

    <流れつつ藁も芥も永遠に向ふがごとく水の面にあり>
     とうとう目の前に「永遠」の一語が現れた。「藁」や「芥」が、「グラス」「コップ」「村上姓」などよりもさらにありふれた存在であることに注目したい。「宝石」からの距離が遠ければ遠いほど今から「永遠」への通路は開きやすくなる。そのまぶしさの源にあるのは現世的に確定された価値ではなく、不定形な可能性の塊だからだ。

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    2024年02月14日
  • 蚊がいる

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    ゆるいけど、なんか核心をついているというか、「そういうこと、あるある。なんだろうね、あの気持ち」みたいな共感できることもあり、穂村弘のエッセイは本当に好き。

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    2024年02月11日
  • もしもし、運命の人ですか。

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    恋愛のエピソード中心のエッセイ。自分に刺さりまくって動揺してしまうような内容だったらとうしようかとドキドキしながら読み始めたら、いつものほむほむのエッセイで安心した。言葉を自在に操っていて、絶妙なニュアンスの表現がすごい。

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    2024年01月24日
  • 短歌のガチャポン

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    ガチャポンというタイトル通り、いろんな人のいろんなシチュエーションにおける技法も年代もごちゃまぜの短歌集。最初に25句が解説なしで、挿絵とともに一ページに一句ずつ載っていたので、やばい、意味わかんないと焦ったら、そのあと全句(その25句も含め)解説付きで載っていた。全く意味が分からないと悩んだ句も、穂村弘さんもこういうことかな?みたいな解説だったので、なんか安心。
    私の好みでカシャポン当たり句
    「おふとんでママとしていたしりとりに夜が入ってきてねむくなる」松田わこ
    「前科八犯 この赤い血が人助けするのだらうか輸血針刺す」金子大二郎
    「ラジオ体操の帰りにけんかしてけんかし終えてまだ8時半」伊舎堂仁
    「今日君が持ってる本を買いました。もう本当のさよならなんだ」福島遥
    「歩道橋の上で西日を受けながら 自分yeah 自分yeah 自分yeah 自分yeah」後藤諭
    「ニワトリとわたしのあいだにある網はかかなくていい? まようパレット」やすたけまり
    「見えるでしょうこれが破壊というものですぽろぽろぽろぽろうるさい涙」干場しおり
    「あの羽は飾りなんだよ重力は天使に関与できないからね」木下龍也
    「私には才能がある気がします それは勇気のようなものです」枡野浩一
    「羽のある者達が急激に増え恋をするという蟻の世界は」田中有芽子

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    2024年01月23日
  • にょっ記

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    日常の中でのくすっと笑える発見や、物の見方、妄想など、想像力に満ちた「日記」。
    そんな日記の中に挟まれたメルヘンチックな話もほっこりする。

    フジモトマサルさんの挿絵も素敵。本文の内容をそのまま絵にするのではなく、少しずつ文章の内容からアレンジが加えられた作品になっています。

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    2024年01月21日
  • もしもし、運命の人ですか。

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    あいかわず面白い

    いちご狩りでミルクを持ってきた男に冷めた話とか面白かった
    一緒に経験したかった、たとえそれが罠に掛かることでもとかなるほどなーと

    あと全体的にわけわかんない人に憧れてしまうところとか

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    2024年01月14日
  • 彗星交叉点

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    いつもながらの言葉のマジシャン、穂村先生のエッセイにハズレはありません。
    しいて言えば、自分の拙さ情けなさ語彙の少なさ頭の悪さ、思い知らされたよう。
    クスッと笑ったり、しんみりしたり。

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    2024年01月06日
  • 鳥肌が

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    タイトル通り鳥肌のたつような話が集められていて、普段の穂村さんのエッセイ集とは少し手触りが違います。独り暮らしの女性がある日目を覚ましたら部屋の中にシャボン玉が浮いてたという話と、作家の曾祖父が階段の踊り場で殺されてた話が特にゾゾゾでした。あ、あとあの、検索してもハートなんて動物が出てこないんですけど…(怯)。

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    2024年01月02日
  • 世界音痴

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    ネタバレ

    太宰よりも好きかもしれない。
    私も世界音痴なのでとても面白く哀しく読めた。


    ⚪︎
    自然さを奪われた者は、世界の中に入れない。

    不意に「ああっ」と叫びたくなる。「人生って、これでぜんぶなのか」
    ⚪︎

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    2023年12月22日
  • 短歌のガチャポン

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    「天国に行くよ」と兄が猫に言う 無職は本当に黙ってて 山川藍

    ふと本屋さんで手に取り立ち読んだ一冊
    単行本冒頭に掲出されたこの句にやられてしまいました
    その日は買わずに帰ったのですが、数日たっても忘れられず結局購入
    バラエティに富んだ短歌100首、とても面白い一冊でした

    ……というか、100首どころじゃありません
    穂村先生の解説欄に頻繁に引用句が登場するものだから、最終的には200首くらい載っているのでは?ってな印象

    句を読んだ感想も、穂村先生の解説とは全然違う事を感じたり、なんなら一日置いて読み返しただけで初読時の自分と全然違う事を感じたりと、ずっと手元に置いて読み返したい作品集でした

    他ジャンルで活躍中の人の句も掲載されていてビックリ
    ハルカトミユキのハルカは作詞もしているしわかるけど、まさか女子プロレスラー・ハイパーミサヲの名前をここで目にするとは……


    いくつか気に入った句を紹介してみる

    おふとんでママとしていたしりとりに夜が入ってきてねむくなる 松田わこ
     ー作者は当時7歳の少女だそうで。ひえー、すごいー

    ラジオ体操の帰りにけんかしてけんかし終えてまだ8時半 伊舎堂仁
     ー少年の日のキラキラした一日を思い出す、好き

    くちづけをしてくるる者あらば待つ二宮冬鳥七十七歳
     ー最初は読み方がわからなかったのだけど、二宮冬鳥(にのみやとうちょう)が作者名だと知れた瞬間に笑ってしまった、かっこいい老人だ

    朝を知る野鳥の声を聞きながらまだ夜のまま君を思へり 高山邦男
     ーこれは掲載100首ではなくて解説欄に引用された一句
    私が大好きなバンドの曲に「ねぇ新聞屋さん 僕の今日は 君にとって昨日のこと?」という歌詞があるのですが、こういった夜更かしした人の今日と早起きした人の昨日が混ざる、みたいなちょっとクラクラするような感覚が好きなんです

    花の下を歩いたときのなぞなぞの答えを君は今も言わない 竹内亮
     ーもちろんこのままズバリな経験があるわけじゃないんですけど、恋人同士の間だけで通じるお約束のやり取り、みたいなあの雰囲気・空気感がしてすごく好き


    ってキリがないよ!
    だって素敵な句ばかりだもの、しょうがないよね

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    2023年12月12日
  • 鳥肌が

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    共感の嵐。特にあとがきの飲み会の話に共感してグサッときてしまった。コロナ禍以降、そういう飲み会もないのだけど。
    製本に使われている糸が蛍光のピンク色だったりシュールなイラストがあったりと、装丁が個性的かつきれいですてき。

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    2023年11月12日
  • 世界音痴

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    穂村さんの人柄。
    あまり分析しようしようとしていないのに、パッと的確な見解が生まれているという、すごく聡明で、自分は自分で、他人は他人で、事実を事実としてそのまま見ているような、すごく惹き込まれる人柄。

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    2023年11月11日
  • よくわからないけど、あきらかにすごい人【毎日文庫】

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    2019年刊行された『あの人に会いに 穂村弘対談集』の文庫化。横尾忠則さんが装幀という豪華さ!

    本当に穂村さんの心が躍っていたんだろうなあという様子がわかる対談で、読んでいる自分も本当にワクワクする。「昔から憧れていた人たちと一緒に仕事ができるようになって、いま嬉々として会いに行っている」

    憧れの気持ちが隠し切れない表情のモノクロ写真がまたご褒美。相手との距離感や姿勢、眼差しが素敵。対談相手の世界観、秘密を引き出してくれて、インタビュアーとしての穂村さんの素晴らしさに触れることもできる。日経歌壇の穂村さん評の書き写しをされたという佐藤正彦さん直筆ノートに感激。高野文子さんの新刊がでるたびに緊張したという穂村さんや、甲本ヒロトさんと体育すわりで熱心に語り合う姿にも出会える。

    名久井直子さんとの『解説のような、あとがきのような、ふむふむ対談』がまた対談を振り返るのに贅沢な時間にもなる。お二人の出会いと絶大な信頼関係が素敵すぎる。
    ひょんなことで穂村さん好きだと知った友人に今度プレゼントしようと思う。

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    2023年11月08日
  • 鳥肌が

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    鳥肌が立つような「怖いもの」がテーマのエッセイ。私はホラー苦手派だけど、大丈夫な系の怖さです。たしかにぞわっとしたりもするんだけど、なんだか笑える。
    あらためて眺めてみると、この世は不思議に溢れているんだなあ。

    楽しく読んでいただけなのに、自然と臆病な人の素敵なところが見えてきた。
    些細なものも含めて色々なものを怖がる穂村さんは、すっごく臆病。でも、そんな穂村さんだからこそ見えてくるものがあって、感性があるのがわかる。
    めちゃくちゃ怖がりだとしても、あるいはこの世が怖いものだらけだとしても、別にいいんじゃないかな。むしろそのままであってほしいくらいかも。と人生で初めて思えた。
    私も、ホラーが苦手なままの私でいいや。みんなで一緒に怖がろうぜ。

    穂村さんは、ファンタジーがすぐ隣にあるかもしれないっていうユーモア感覚を持っていておもしろい。だからあんな風にファンタジーと現実が違和感なく素敵に入り混じった短歌を作れるんだなあ。それにやっぱり文章がとっても上手。
    やっぱり大好きだなあと思ったので、いつかサイン会に行きたいです。穂村さんは怖いかもしれないけど。


    〈装丁のこと〉
    引いちゃうほど怖くも気持ち悪くもないし、なんだか手に取りたくなる不思議な可愛さがあるんだけど、ちゃんと不穏さも感じ取れる。完璧なデザインだと思う!
    装画の力はかなり強い。なんとなく怖いような可愛くも見えるような、気味が悪いとまでは思わないけどなんとも言えない違和感のあるこの絵。画家さんのチョイス、絶妙です。ピンクのような紫のようなアクセント色も近づきたくなる魅力がありつつあやしいし、抱えているぬいぐるみ?も可愛いけどなんか怖い気も…。まさにこの本にぴったり!
    中の扉絵を見た感じ、この絵にはもともと乳首が描かれていたようだけど表紙では消したようです。大人の事情か何かの配慮かわからないけど、セクシー要素は本作にはないし間違った印象を与えたくないので、画家さんさえ不服でなければ英断だと思います。
    さらに特殊加工でこの人物部分のみドットの凹凸加工がされていて、鳥肌が立っているように表現されていました。ちょっとキモいかと思いきやギリギリキモくない楽しさ。ドット同士の間隔の広さがすごくいいんだと思う。もっと狭かったら気持ち悪くなってた。これも絶妙です。

    そして中身、非常に読みやすい本文デザインの中にまたこの画家さんの謎の絵が差し挟まれる……薄めの紙で。しかも文の途中とかでも全然かまわず急に……!それがワッとおどかされるような小さな気味の悪さがあって、素晴らしかった。でもやっぱり嫌な怖さじゃないんだよなあ。
    しおりひもも、可愛い明るいピンクなんだけどなんか知らんけど普通より細いのがいっぱい何本もあってなにこれ意味わからんくてキモい!!(褒め言葉)
    最後に目次があるのもなんか変な違和感があって、でもキレイで好きだった。これ怪談集だったんか?みたいな気分で振り返ることができた。

    いやあ最高でした。と思って奥付見たらたしか祖父江慎さんだった。さすがだ。さすがすぎる。

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    2023年10月22日
  • 整形前夜

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    穂村さん独特の観点が相変わらず最高な短編エッセイ集。ライバル同士の感情が恋人同士のそれに近いと語られる 「来たれ好敵手」 がめちゃめちゃ好きだった。

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    2023年10月16日
  • 君がいない夜のごはん

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    筆者のエッセイはいくつか読んだけど、テーマを「食」に絞ることでまとまりが出て読みやすくなっているように思う。言い回しがいちいち面白く、センスを感じる。
    『況やコアラのマーチをや』が頭から離れない。

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    2023年10月08日
  • ラインマーカーズ ~The Best of Homura Hiroshi~

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    ネタバレ

    2003年刊行の歌集『ラインマーカーズ』に単行本未収録の『ピリン系』『手紙魔まみ、教育テレビジョン』の連作を加え文庫化。
    表紙のLinemarkersの文字は、装丁を請け負った名久井直子さんが、以前文通していた外国の男の子の手紙の文字を切り貼りして仕上げたそうだ。
    よく見ると“k”が“R”にも見えていて、そこがこの歌集にぴったりだと思う。
    間違った“聖書”ということなのだろうか。

    穂村弘さんの単独歌集を読むのはたぶんはじめてだと思うが、穂村さんが影響を受けたという少女漫画みを強く感じた。
    そういう目で見るからかもしれないけれど、特に私も大好きな大島弓子さん色が強い。
    脆くて強い、理想の“女の子”を大島作品で理想化したのだろうか。
    昔、なにかの文章で、穂村弘の歌はマッチョ、という評を読んだのだが、意識してみるとそれも感じる。
    弱々しいふりして、その実“男らしさ”にも憧れていて、女の子を守るふりして守られたい。のかも。

    『手紙魔まみ』から抜粋された歌は、私も好きな歌が多い。

    特に好きなのは『手紙魔まみ、完璧な心の平和』の中にある、有名な一首。

    [ハロー 夜、 ハロー 静かな霜柱。 ハロー カップヌードルの海老たち。]

    優しくてあたたかくて泣きそうになる。

    暗く冷たい夜と朝をいくつも越えて、まみは夜中に起きだした。
    お腹が空いてカップヌードルの蓋をめりりと開ける。
    外は寒い。
    こんな寒い日は霜柱がいつもの土手で育っているだろう。
    カップヌードルに熱いお湯を入れて待つ。
    静かに育っているあの土手の霜柱に心の中で挨拶する。ハロー。
    キッチンタイマーが鳴り響き、カップヌードルの蓋をまた開ける。
    湯気とともにピンクの小海老たちが揺らめく。
    ハロー カップヌードルの海老たち。
    容器の熱さがもどかしくも嬉しい。

    夜は辛いばかりではない。
    美しい霜柱は夜のうちに育ち、干からびた小海老たちはお湯の中でまた泳ぎだす。
    『完璧な心の平和』を手に入れたまみは最強なのだ。


    って、すみません。
    読んでくださった奇特な方、ありがとうございます。

    あと、この本とはなんの関係もない私事ですが、憧れの新聞歌壇に初掲載されました。
    中日新聞の中日歌壇、小島ゆかり先生選で、祖母の集めた五円玉のことを詠ってます。
    地方紙なので、購読者が少なさそうですが、もしも購読されている方がいたら、どれどれ、と、覗いてくださったら幸いです。
    作者(私)の心情まで想像してくださった小島先生の評が嬉しかったです。








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    2023年09月10日
  • 蚊がいる

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    ニッチでありながらも、どこか感じたことのあるような情景に共感できた時、何とも言えない気持ちになる。

    横尾忠則が手がけた装丁は圧巻である。

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    2023年08月31日
  • ラインマーカーズ ~The Best of Homura Hiroshi~

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    2003年単行本を歌集未収録連作を加えて文庫化。レビュー書けず積読状態でした。
    名久井直子表紙装丁デザインの秀逸さ。穂村さんの歌の余韻が残る。
    一首一首が濃厚で、自分の中の何かと外界とをつなぐような異次元穂村ワールド。上の句と下の句の組み合わせが衝撃的。
    夏の歌ばかりを抜粋してみた。他の季節よりも増して内的不穏を抑えきれない、不可解さも混じる。読むたびに新鮮な驚きがある。私の勝手な解釈ご了承ください。

    『ドライドライアイス』 
    弟よ 目醒まし時計を銀紙でくるめ夏休みの始まりだ
    (銀紙に包まれたお菓子、駄菓子屋へ通った幼き頃の自分と兄弟との夏が始まるワクワク感を郷愁を帯びて眩しく思いだされた)
    ピーマンの断面きみに見せたくて呼び鈴押しにゆく夏の夜
    (ピーマンという選択の挙動不審さ。なんでも話したい、きみに会いたい、という想いがだた漏れ)
    ひまわりを空き瓶に挿す 消防車の群れも眠りにつく夜明け前 
    (ひまわりを花瓶ではなく空き瓶という無造作と、消防車の騒がしさを逃れた夜明け前の静けさの対比が夏の暑さひんやりさせるよう)

    『手紙魔まみ』
    天才的手書き表札貼りつけてニンニク餃子を攻める夏の夜
    (殴り書き?手書きに店の心意気を感じて、ニンニク餃子にかぶりつくと夏の暑さが更に増すよう。きっとビールも上手い)
    熱帯夜。このホイップの渦巻きは機械がやったのがわかるでしょう? 
    (今年の夏のうだるような暑さ、溶けてしまいそうなのに渦巻きホイップ崩れてないって機械的とはホラーのよう)

    『ごーふる』再読、カルピスを飲む景色が変わってしまう。おろおろしてしまうよ。

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    2023年08月01日
  • 短歌ください

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    本の情報誌「ダ・ヴィンチ」の読者投稿企画「短歌ください」に寄せられた短歌を穂村弘が選び、解説をくわえている。

    発想が素晴らしい短歌ばかりで面白く、著者の解説で短歌の魅力がいっそう際立つ。短歌を詠む時にも生かせそうだ。いくつか紹介したい。

    コンビニで聞こえた遅刻の言い訳が「尾崎にバイクを盗まれました」

    バイキング誰も並ばぬ一品を浮かび上がらすトングの光り

    電子レンジは腹に銀河を棲まわせて静かな夜に息をころせり

    ↑の短歌への著者の解説は“最も日常的なもののなかに宇宙を見出だす鋭さ”

    じいちゃんは、白目と黒目の境目が曖昧になった目で座ってる

    ↑の短歌への著者の解説は“「じいちゃん」の「目」をそこまで精密に見ていることが凄い。一般に云われるような愛よりも、或る意味でもっと深い愛だと思います”

    午後28時の人と隣り合い電車に揺られている午前4時

    こんなにもしあわせすぎる一日は早く終わって思い出になれ

    四年間使い続けたケータイの機種変更はすぐに終わった 

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    2023年07月30日