【感想・ネタバレ】はじめての短歌のレビュー

あらすじ

短歌とビジネス文書の言葉は何が違う?共感してもらうためには?「生きのびる」ためではなく、「生きる」ために。いい短歌はいつも社会の網の目の外にある。読んで納得!穂村弘のやさしい短歌入門。

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ぐっときた歌
お一人様三点限りと言われても私は二点でピタリと止めた

「生きる」「生きのびる」のあいだを行き来しながら人はある
社会で在るためには「生きのびる」
個人で在るには「生きる」
のような?

どうしたって生物としてのヒトだから、身体の調子があって、揺らぐし矛盾するし、機械ではなくて、完全効率的には動けない。
でも社会のしくみを作ってる。
しくみから逃れたかったり、逃れざるを得ないときに歌がうまれるのかな?

p81~
生きのびるの粋を集めた(社会の効率化の洗練に洗練を重ねてる)のがコンビニ、その効率のかたまりに圧迫される⇒上から目線になっちゃうという視点が面白かった

上から目線「コンビニ で いいや」に現れてるというとこ。

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2025年11月03日

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慶應義塾の社会人教育機関の短歌の入門講座

良い短歌を味わうことがてき、そしてその良い理由が明確に言語化されている。
「生きのびる」だけでなく「生きる」と、現代社会で重要な価値観以外の世界を考えるきっかけとなる。
短歌を通して、数えられる替わりがきくものとは別の、絶対的な唯一無二的なもののという考え方を学べる。
「驚異から共感。砂時計の「くびれ」みたいな驚異のゾーンをくぐらないと共感をゲットできない」という法則を提示しているのも興味深い。

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2025年08月23日

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座右の書としたい。
ほんわかと笑わせてくれるが、とても示唆に富む本であった。
社会的価値を意識して生き伸びる人に良い短歌は書けない。生きる人にこそ惹きつけられる短歌が書ける。
自分は生き伸びようとしてる人になりがちだなぁと気付かされ、なんだ生きる人で良いんだと励まされ!?人生楽しくさせてくれる。

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2025年06月21日

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ネタバレ

短歌の入門書としてももちろん、読み物として面白くて入り込んでしまった。久しぶりに「これは隙間時間ではなくちゃんと環境が整った時に読もう」と思えた本。とてもよかった。

「生きのびる」と「生きる」の違いについて、1冊かけて丁寧に解説されていて、自分の中に入ってきた感覚がある。

選ばれた短歌から改悪例を出してくれていることで、一般的な添削よりも分かりやすい。
自分は余白を持たせるためと思って単語を標準化してしまっていたけれど、これはまさに改悪例として載っているもので、唯一無二でなくなってしまっていたということだ。

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「この本はただの短歌入門書ではない。短歌入門書の仮面をかぶったビジネス書である。」(p165解説)

本書は慶應義塾の社会人教育機関で開講された、バリバリのビジネスマン向けのワークショップの講義部分を再構成したものとのこと。ターゲットが意外。
現代短歌にあらわれるような詩的感覚の表現を、「文学の形式」ではなく「頭を切り替えるための発想法」として伝えたとのことで、自分も学びがあった。

私は「生きのび」たいのではなく「生き」たいという欲求が強くなる時があって、もやもやしたりじたばたしているのかもしれないな、と思った。これは今の自分にとって大きな気付きな気がする。

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ひとつ不思議なのは、語り口調の本は苦手な傾向にあり、よっぽど読みたいテーマか知っている著者でなければ挫折してきたのだけど、本書は何も違和感がなく読めた。まだ著者の詩集も手に取っていなければ本書が講義がベースということも知らないという不勉強な状態だったにもかかわらず、何か文章から滲み出る魅力があったのだろうか?

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2025年02月16日

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「生きのびる」と「生きる」の違いをゆっくり咀嚼している。最近は生きのびることで精いっぱいかも
取り上げられる歌に改悪例がついているのがわかりやすかった。

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2025年01月04日

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短歌に一気に興味を惹かれ、もっとたくさんの作品に触れてみたいと思った。短い歌、少しの言葉から、そこに広がる情景や想いを想像し、分かろうとすること、その積み重ねが、人の気持ちを汲み取ることのできる繊細さや、些細なことに想いを馳せる感性、自由で魅力的な表現力を育んでくれるのではないかと感じた。まさに自身に足りないと感じていたものを、培ってゆくひとつの方法が見つかったような気がします。

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2024年11月10日

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俺が持っている唯一のサイン本。著者は歌人であり、エッセイストでもある穂村弘。
主な内容としては、短歌を改悪例と共に紹介しながら、どんな短歌がいい短歌なのかを解説していく。

この本は、純粋な短歌入門書というより歌集や短歌入門書をある程度読んだことがある人や短歌を作りはじめた人に向いている本だと感じた

空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋はそういう状態 
            平岡あみ

空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋は散らかっている
            改悪例

上がいい短歌の例で下が、わざと悪くした改悪例。「そういう状態」を「散らかっている」に変えている。著者はこう述べる。

「散らかっている」という言葉はラベルだから、それをぺたりと貼られると、心が動かない。
だけど、「そういう状態」というのは明確なラベルじゃないから「え、そういう状態って?」と心が発動する。

この他にもいろいろ短歌についてとても丁寧に解説していて面白かった。

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2024年08月25日

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ネタバレ

先輩に薦められた一冊。
私が手に取ることはなかったであろう一冊。
こういう本を読む自分なんか、これっぽっちも想像できなかったけど、人に薦められたからにはと、重い腰を上げてみた。
上がる重さで本当に良かった。
ありきたりな表現だけれども、いつか「人生に影響を与えた本は何ですか?」と訊かれたら、この本の名前を呼んでいる自分が想像できる。

第1講第1節からグッと引き込まれた。
そして、「「生きのびる」ための言語体系から「生きる」ための言語体系にシフトする」ことと、私たちの二重性について書かれた第1講第5節。
そんな二面の違いとは、「忘れられないかどうか」という尺度と、そっちにシフト出来ない自分との綱引きについてが書かれた第3講第6節。
この三つの節は本質的でとても好きだった。

そして、二面とも大事だけど、蔑ろにされている「生きる」方を知ることこそが、「自分とは違う生き方を送る人々の考え方を感知できる」ことだと力説する、山田航さんによる解説。

この本にも歌が出てくる又吉直樹さんの小説(と映像作品)に私はとても惹かれるんだけど、その理由がこれまで上手く説明できなかった。特に、『劇場』。大好きなんだけどね。何故か上手く理由を語れない。
でも、この本を読んでから、少し言語化ができるようになったかも。
それは、「社会化された価値観の思考パターン」に抗って、「「生きる」に純化した魂の輝き」が眩しいからなのではないか。

私もたまには、スイッチを意識的に切り替えてみよう。
この本を薦めてくれた先輩に感謝を込めて。

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2024年02月29日

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これは素晴らしい本
あえて一貫した論理を導入することで見えてくるものがあるし、めちゃくちゃタメになった

生きると生き伸びる
ここの違いは新しい視点になったし今までの自分のさまざまな価値判断の基準も、多くがここに結びつけれるような気もしてきた

ここに掲載されている短歌は本当にどれも全部素晴らしく唸らされるし、改悪案によって最初はほんのりとだけ感じれていた良さがよりわかりやすくなる、で、このやり方は色々応用効きそうだなって思う

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2024年02月26日

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「社会的=コンビニ的」というように、より印象に残る言葉、おもしろい言葉をおもしろく解説していておもしろかった。

コンビニ的でないことが肯定される世界に安心感を覚えた。

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2023年11月14日

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ある短歌に対して改悪例を示すことで、どこがその短歌の持つ魅力だったのかを浮かび上がらせる。それは社会的価値(資本主義的的価値)からは逸脱したもの。でもだからこそ短歌にとっては必要なもの。
社会からはみ出た私が短歌に潜むもの。短歌の魅力って面白い。

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2023年05月22日

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ネタバレ

短歌イベントのために再読。
短歌の詠み方を分かりやすく解説しているので、導入に最適である。想像の余地を作る、いつもとは違う視点で物を見る。
山田航氏による解説が素晴らしかった。

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2023年05月13日

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歌集を何冊か大人買いしたのですが、短歌について無知な為、その頭で読んだらもったいないので、まずこの本を読んで短歌とはなにか勉強しようと思いました。


以下は、読みながら書いたメモ書きです。


・新聞記者で詩人という人も世の中にはいる。穂村さんは総務課長で歌人。でも違う文章の使い方をする。
・存在しなくても死なないもの。
・正常の価値観とは違うもの。
・本当に好きだと思うもの。
・死ぬ日に覚えている思い出が一個でも多い人生がより良い人生なのではないか。
・反コンビニ的というか反社会的。
・「生きる」の「生きのびる」に対する非対称性。
・社会化された訓練からもたらす改悪。短歌とは。
・留学生の日本語。その神秘的な間違いに素敵な回路が誤作動する。
・大事なことをわざと書かない。
・短歌のリズム→五七五七七を崩す。
・いいオノマトペは心に上書きされる。
・誰が詠んでもOKですが、素敵なことを詠むと失敗します。
・いい短歌はいつも社会の網の目の外にあって、お金では買えないものを与えてくれる。


感想
私は短歌的な発想はないごくごく普通の人なんだなあとつくづく思いました。

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2023年01月31日

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生き延びる、のではなく生きる、そのことを書くのが短歌。生き延びるのに毎日精一杯で、生きる、瞬間をおざなりにしてしまっているな、わたしは。そう思った。
ずっとなぜかニヤニヤしなが読んでいた。文体がカジュアルでまるくて、いい具合に感情に触れてくる。短歌、作れるようになりたいな。

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2025年05月17日

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"生きのびる"と"生きる"の違い。
ひとが前者に重きを置きがちなのは、他人からの評価を気にする性からかな?
もっと自分の人生に生きていきたいよね。自分の考えや感性に則って。クリシェとかそういう縛りから解かれたい。

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2025年05月11日

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短歌の作り方を詳しく学ぼうと思って読んだ。紹介される短歌の良い部分を元に説明される。一から作り方を学ぶ箇所はない。しかし、読んだのちに胸の中に、短歌を作る上での大切な価値観を得られると思う。それが結局は短歌の詠みかたなのだと思う。短歌として、詩として、芸術として、何が大切なのかよく分かった。

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2024年11月04日

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世界音痴を読んで、穂村さんの他者との関わり方を、わかるわかると共感し、その穂村さんによる短歌の指南書を拝読。

聞けば、短歌は世俗的な価値観よりも、少し「あまりもの」的なものに価値を見いだすそうで。

学生時代以来、短歌や俳句に触れてこなかった私に、限られた文字数の中に光る、言葉の魅力を示してくれました。

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2023年12月03日

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共感は砂時計、驚きに触れてから常識に戻らないといけない
生き延びると生きるの違い 純粋さ、価値に矯正されていない物言い
それらがいい歌を作る
意味のあることを言ってはならない

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2023年11月12日

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短歌とはと言うことに対して、穂村さんなりの考え方が提示されている。かなり言い切っている部分も多いのでなかなか全てを納得すると言うことができないが、その言い切りのすがすがしさと言うものもある。
世界音痴、もしもし〜をこれまで読んできたが、その中でもかなり読みやすく、ビジネス向けにかかれたと聞いて納得し
社会的に適合してきた人(読者)からみて、短歌がかける人というのは、どこか社会でうまく適合していない人たちなのに、そこに魅力を感じてしまうのはなんでなんだろう、どこかにそういった表現をしたいという欲望があるのだろうか、

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2023年10月01日

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短歌を詠むための講座の本ですね。
まことさんの、おすすめで読んでみました。
面白くかなりヒントになりました。ありがとうございます。

「はじめての短歌」の題名になっていますが、副題の「いい短歌の正体とは。」の方がむしろピッタリの気がします。
慶応丸の内シティキャンパス夕学プレミアム『agora』(アゴラ)における講座「穂村弘さんと詠む【世界と〈私〉を考える短歌ワークショップ】」をもとに、構成のうえ編集したものとのことです。

作品を一つ一つ吟味しながら、いい短歌とはこんな風に捉えてはどうだろう、といった感じの講座ですね。
講座ですから、しゃべり言葉をそのまま本に仕立てあげてくれていますので、親しみやすく、穂村さんの語り口が絶妙ですごく分かりやすく、面白く可笑しく、へぇ~そうなんだと驚きもあり楽しく読めました。
私は、どうやら常識と素敵な短歌にとらわれすぎていて、それと言葉にとらわれすぎて、短歌が作れずにいることに気づかされました。
短歌を詠むヒントがわかりやすく、とても良い本だと思います。読み物としても面白くですね。

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2023年08月10日

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現代社会で良いとされていることが悪で、役に立たないとされているものに価値がある。価値観が反転されるような話で面白かった。私にとっては短歌の本というより人生の見方が変わるような本だった。

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2023年06月17日

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短歌の改悪例をもとに、「生きる」言葉を使った短歌と「生き残る」ための言葉を使った短歌を対比しているのだが、

「生きる」ための言葉を使った短歌の方が明らかに面白いのが不思議。

効率性や正確性など社会的には「生き残る」技術が求められるけど、固有の視点や感情を味わう「生きる」ことを大切にした方が豊かなんじゃないかと心を揺さぶられた。

少し社会の常識から外れても自分らしく生きていきたいと思った。

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2023年05月16日

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めっちゃ面白かった。
早く知りたかったこの本。
生きのびるだけだと息苦しくなるから、生きるために世界をズラす訓練としての短歌。立ち止まるための短歌。やってみたくなる。

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2023年02月01日

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社会生活は「生き延びる」こと、私生活は「生きる」こと。短歌のよさは「生きる」を表現してかつ驚きがあること。
な〜んて社会の言葉であらわしてみたけど、死を共有するもの同士の共感ってほんと不思議。短歌を詠んでみたくなった。

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2022年08月16日

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筆者は「生きる」と「生きのびる」の違いを繰り返し述べる。短歌は「生きる」であり、社会性や経済活動は「生きのびる」である。
これはこう言い換えられるのではないか。
生きるは「いま、このとき」。而今。
生きのびるは「これから、未来」。

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2025年06月08日

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解釈のブレなく、言いたいことを端的に伝えることが好まれる現代において、短歌的な自由な表現とは何かを伝えてくれる本。現代人が忘れがちな価値観や表現の仕方をうまく言語化してくれていて分かりやすい。

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2025年04月24日

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【感想】
短歌は簡単なようで難しい。五七五七七の31音しかない文章など、誰でも手軽に作れそうに思えてくるが、いざ自分で詠もうとするとセオリーが分からない。エモーショナルな感動を詠めばいいのか、それとも徒然なる日常の中の些細な発見を詠めばいいのか。歌に詳しい人はそれこそ「自由だよ」と言うが、いかんせん「いい短歌」を詠もうとすると、やれる幅が広すぎて困ってしまうのである。

そんなとっかかりにくい「短歌」のセオリーを、初心者にも分かりやすく示してくれる入門書が、本書『はじめての短歌』である。本書の特徴は、筆者がまず「良い短歌」を紹介し、その横に自身で作った「改悪例」を並べてくれていることだ。俳人が一般人の短歌を推敲し改善例を提示することはよくあると思うが、そのやり方では、俳人の感性をトレースすることが正しいことのように見えてしまう。そうではなく、「どういう言葉に変えたら歌が悪くなってしまうのか」という実例を示すことで、短歌を作る上での心構えや構成を客観的に学ぶことができる。

私が本書の中で面白いと思ったのは、「生きる」と「生きのびる」の関係についてだ。
生きのびるとは、社会の中で社会人を営んでいくことである。「効率的で」「お金になり」「意味がある」行動をする。対して生きるとは、一人ひとりが持つ唯一無二の生をひたすら追求することである。
そして、短歌はこの「生きる」に寄り添う歌なのだ。
短歌は、生きのびるための情報や価値とは一切無縁の場所にある。日常の何気ない一コマを切り取り、それを美しく照らし出す。無駄を愛する気持ち、余白を大切にする感性――短歌は「無為性」を重んじる芸術なのだ。
「有益性」というのは刹那的だ。移り変わっていく世の中において、社会的な価値を帯びた物や行動は、あっという間に別のものに取って代わられてしまう。対して「無為性」は、時代が変わっても普遍的である。月を愛でる、書を読む、日がな一日のんびりする……。そうした「生きる」営みは、太古の昔から人々に愛されてきている。だから万葉集や古今集の時代の人の短歌にも、共感することができるのだ。

――普遍的で共感されやすいものの方がいいじゃないかと思う人もいるかもしれない。しかし人間の感性とはそんなに単純なものではない。人間の感覚とは不思議なもので、「そんなのありえない」と思えそうなものの方が、「そんなにありえないものを大切にするなんてよほどのことなんだから、きっと本当なんだろう。あるある。」と思ってしまうのだ。
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【まとめ】
1 「生きる」と「生きのびる」
空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋はそういう状態(平岡あみ)
空き巣でも入ったのかと思うほどわたしの部屋は散らかっている(筆者がわざと改悪した例)

短歌とビジネス文章は、伝えたいことがちょっと違う。平岡さんの原文では、「私の部屋はそういう状態」って言われたとき「え、どういう状態?」と一瞬考える。
一瞬考えるっていうのは、コミュニケーションなのだ。その余地が、改悪例にはない。「散らかっている」と言われると、それ以上意識や感情が動かない。「散らかっている」という言葉はラベルだから、それをぺたりと貼られると、心が動かない。
短歌は、単純な情報以上の何かきらきらしたものを手渡すのだ。

よく学校の授業で、短歌や詩は非常に教えにくいって声が聞かれるけれど、それは当たり前だと思う。なぜ当たり前かというと、学校というのは基本的には言葉のベクトルをこれまで見てきた改悪例のほうに矯正するものだからだ。
教育機関の主な役割は、まだ社会的存在として完成しきっていない子どもたちを社会化すること。しかし短歌や詩というのは、それに対してベクトルが逆である。教えようとしても価値観が逆だから、「先生、さっきまで言ってたことと、ベクトルが違う」みたいな話になる。
――――――――――――――――――――――
あっ今日は老人ホームに行く日なり支度して待つ迎えの車(相澤キヨ)
火曜日は老人ホームに行く日なり支度して待つ迎えの車(改悪例)

「あっ今日は」という言葉からは、相澤さんと僕の間に共通するものがある気がしてくる。同じ船に乗って運命を共有している感覚。
「火曜日は老人ホームに行く日なり」からは、死すべき運命の共有が感じられない。「火曜日」とすることで、死すべき運命を背負った個人の肉声ではなくて、社会化された情報になっている。純粋に個人的な体験である死の慄きにこそ「生きる」感覚が宿るのであって、万人が「生きのびる」ために有益な情報は短歌には不要なのだ。
「生きのびる」ためものというのは、「それがないと困る」と、万人が思っているもの。究極はお金だ。でも僕らは生きのびるために生まれてきたわけじゃない。「生きる」ために生まれてきた。「生きる」とは「生きのびる」に比べて不明瞭なもの。生きる何かと言われれば、はっきり分からず、一人ひとり答えが違う。

ぼくらはみんな、死すべき運命を共有している。だから、それによって照らしだされる歌を読んで、会ったこともないおばあさんのことを思い出したり、女の子の部屋のぐちゃぐちゃさを想像したり、千年前の人の気持ちがわかったりする。
短歌の価値、おもしろさっていうのは、そこに宿っていると思う。


2 短歌の中では、日常とものの価値が反転する
短歌においては、非常に図式化していえば、社会的に価値のあるもの、正しいもの、値段のつくもの、名前のあるもの、強いもの、大きいもの、これが全部、NGになる。社会的に価値のないもの、換金できないもの、名前のないもの、しょうもないもの、ヘンなもの、弱いもののほうがいい。
短歌の世界においては、社会的な価値を帯びているものはマイナスになるのだ。すてきなえがお、美味しいステーキ……。社会的に承認された価値ではなく、どうでもいいもの、つまらないもの、欠点こそが美しいものとされる。

短歌の中では、日常とものの価値はずれていく。それは「生きる」と「生きのびる」の二重性に関係している。
それぞれにつながる2種類の言葉で、ぼくらは生きているけれども、今の動向を見ると、圧倒的に社会化された「生きのびる」ための言語の強制力が強い。
「生きのびる」ためのものは悪いものではない。それがないとぼくらはみんな死んでしまう。ただ、強調したいのは、「その逆の価値はどうなるんだ?」ってこと。


3 生きることに貼り付く短歌
非効率、無意味、お金にならないもの、つまり「生きる」ということに貼りつく言葉が短歌ではどんな形をとるのか。

雨だから迎えに来てって言ったのに傘も差さず裸足で来やがって(盛田志保子)

これは怒っている?違うよね。これは感動している。
「雨だから迎えに来て」って電話で言ったら、それは傘2本持ってきてって意味だ。だけど言われたほうは1本も持ってこなかった。しかも裸足、靴も履いてない、ひどい。ひどいけど来た。迎えに来てって言ったから、迎えに来たんだ。ちゃんと約束は守ったんだよね。その約束がなんの役にも立っていない。なんの役かといえば、風邪をひかないため、「生きのびる」ため。風邪をひくと「生きのびる」のに不利だから。
つまりここでは、「生きのびる」ためのファクターが無視されて、迎えに来てって約束だけが存在している。果たされたのは、「生きる」側の約束だ。

この人は忘れないよね、この日のこと。あの日あの人は来たけど、傘も持ってなくて、2人で濡れて帰って一緒に風邪ひいた、みたいな。
「生きのびる」ためにはNGだが、「生きる」ためにはOKなもの。その基準はシンプルで、「忘れられないかどうか」。
ぼくらは、どんな人生が良い人生なのかを決めることはとても難しいんだけど、ひとつの尺度として、「死ぬ日に覚えている思い出が1個でも多い人生が、より良い人生なんじゃないの。そのとき1個も思い出せることがない人生は、ダメなんじゃないの」っていう考え方があります。
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三十歳職歴なしと告げたとき面接官のはるかな吐息(虫武一俊)
三十歳職歴なしと告げたとき面接官のかすかな溜息(改悪例1)
三十歳職歴なしと告げたとき面接官のひそかな苦笑(改悪例2)

普通の社会人は、「はるかな吐息」とはなかなか書けない。
こうして並べたとき、原作に近づくほど社会とのチューニングがずれている。そしてずれることによって、社会が世界のすべてじゃないということを痛切に感じさせる。
社会は世界のすべてじゃない。実際には世界には人間以外の動物もたくさんいるのだが、社会にはいない。そこには人間とペットと家畜がいるだけだ。
だけど社会が世界とイコールにならないと、経済とかはやっぱりダメなのだ。社会は世界とイコールで、社会は人間の集団とイコールっていうふうにしていかないと、経済の回転速度はどんどん落ちる。

実際にどう生きるかということは別として、言語レベルで、社会と世界はイコールではないんだと、世界というのは人間だけが構成員じゃないんだということを痛感するとか。そういうことを、はっきり言語でおさえることって重要だと思う。


4 チューニングをずらす
銀杏が傘にぼとぼと降つてきて夜道なり夜道なりどこまでも夜道(小池光)
銀杏が傘にぼとぼと降つてきて夜道なりけりどこまでも夜道(改悪例)

本来的には、短歌の根源的な特徴は五七五七七であるということなので、そこにはどれだけこだわってもこだわり過ぎることはない。
この歌では、「銀杏が傘にぼとぼと降ってきて」と、ここまではきちんと五七五。ところがそのあと、「夜道なり夜道なり」と10音もあって、字が余っている。これを短歌の形に戻すのは簡単で、「夜道なりけり」にすれば定型になる。だけど、じゃあそのほうがいい歌なのかというと、どうもそういう気がしない。
散文や詩で同じ言葉を50回繰り返すことは罪じゃないけど、短歌で2回繰り返すのは罪だ。五七五七七の定型の禁忌を破っている。罪を犯してまで2回繰り返したことによって、無限に繰り返されるような感覚が呼び起こされる。まさにこの歌の中で伝えたい感覚は、「夜道なり」が無限に続く状況だから。
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砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね(俵万智)
砂浜に二人で埋めた桜色のちいさな貝を忘れないでね(改悪例)

短歌を作るときに、慣れてない人は共感を価値の最上位に持ってくるし、共感する歌を作ろうとする。しかし上手くいかない。
多分オモチャの飛行機を歌っている歌だと思うが、実際の経験でいうと、「桜色の貝」を埋めたりした経験はかなりの人があると思う。だけど「飛行機の翼」を埋めたことのある人は、ほとんどいないんじゃないかな。
でもこの歌を比べると、なぜか「飛行機の翼」のほうが共感を呼ぶというか、ぐっとくる。実際見たことも聞いたこともない行為なのにぐっときて、「桜色の貝」を埋めた改悪例のほうは、まあ普通だなって思ってしまう。

これは、共感にはある特性が存在するから。
いきなり共感を目指すと上手くいかない。驚異ってぼくは呼んでいるのだが、一回ワンダーの感覚に触れてそこから戻ってこないと得られない。驚異から共感。砂時計の「くびれ」みたいな驚異のゾーンをくぐらないと共感をゲットできないという、普遍的な法則があるみたいだ。
だから、本当にあることをただ言ってもあるあるにはならない。共感のゾーンをそのまま狙いにいっても共感してもらえないのだ。

要するに短歌って、日本語がたどたどしい留学生の人が書いても問題ないのだ。子どもが書いても全然問題ない。五七五七七の形を意識してもらえば。あと考えてほしいのはひとつだけで、それはサバイバル的に、「生きのびる」側の言葉を使ってはいないかということだ。
では、そこから自由になるにはどうすればいいのか。
なんとなく素敵そうなことを詠むと失敗する。
いい短歌は、社会の網の目の外――一般的に素敵とか役立つとかそういう概念とは異なる場所にあって、お金では買えないものを与えてくれるのだ。

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2025年02月06日

Posted by ブクログ

詩の作り方は人それぞれ
コンビニ的には作らないようにすることがコンビニ的と思わないように気を付けよう

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2024年07月22日

Posted by ブクログ

「生きのびる」ための言葉(社会性)と「生きる」ための言葉(非社会性)。
犬はかわいいが、猫は命に対するチューニングの甘さの故に憧れる。

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2023年04月11日

Posted by ブクログ

「改悪例」を載せるアイディアが面白く、取り上げられていた短歌も好きなものが多かった。

ただそれ以外の穂村弘の「親しみやすさ」「気やすさ」の演出が絶妙に肌に合わなくて読み通すのがちょっときつかったな。

お一人様三点限りと言われても私は二点でピタリと止めた / 田中澄子(p.87)

取っ付きやすくするための演出に対してこういうささやかな抵抗をしながらずっと読んでた気がする

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2023年03月28日

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