穂村弘のレビュー一覧
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「天国に行くよ」と兄が猫に言う 無職は本当に黙ってて 山川藍
ふと本屋さんで手に取り立ち読んだ一冊
単行本冒頭に掲出されたこの句にやられてしまいました
その日は買わずに帰ったのですが、数日たっても忘れられず結局購入
バラエティに富んだ短歌100首、とても面白い一冊でした
……というか、100首どころじゃありません
穂村先生の解説欄に頻繁に引用句が登場するものだから、最終的には200首くらい載っているのでは?ってな印象
句を読んだ感想も、穂村先生の解説とは全然違う事を感じたり、なんなら一日置いて読み返しただけで初読時の自分と全然違う事を感じたりと、ずっと手元に置いて読み返したい作品集でした -
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2019年刊行された『あの人に会いに 穂村弘対談集』の文庫化。横尾忠則さんが装幀という豪華さ!
本当に穂村さんの心が躍っていたんだろうなあという様子がわかる対談で、読んでいる自分も本当にワクワクする。「昔から憧れていた人たちと一緒に仕事ができるようになって、いま嬉々として会いに行っている」
憧れの気持ちが隠し切れない表情のモノクロ写真がまたご褒美。相手との距離感や姿勢、眼差しが素敵。対談相手の世界観、秘密を引き出してくれて、インタビュアーとしての穂村さんの素晴らしさに触れることもできる。日経歌壇の穂村さん評の書き写しをされたという佐藤正彦さん直筆ノートに感激。高野文子さんの新刊がでるたびに -
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鳥肌が立つような「怖いもの」がテーマのエッセイ。私はホラー苦手派だけど、大丈夫な系の怖さです。たしかにぞわっとしたりもするんだけど、なんだか笑える。
あらためて眺めてみると、この世は不思議に溢れているんだなあ。
楽しく読んでいただけなのに、自然と臆病な人の素敵なところが見えてきた。
些細なものも含めて色々なものを怖がる穂村さんは、すっごく臆病。でも、そんな穂村さんだからこそ見えてくるものがあって、感性があるのがわかる。
めちゃくちゃ怖がりだとしても、あるいはこの世が怖いものだらけだとしても、別にいいんじゃないかな。むしろそのままであってほしいくらいかも。と人生で初めて思えた。
私も、ホラーが -
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ネタバレ2003年刊行の歌集『ラインマーカーズ』に単行本未収録の『ピリン系』『手紙魔まみ、教育テレビジョン』の連作を加え文庫化。
表紙のLinemarkersの文字は、装丁を請け負った名久井直子さんが、以前文通していた外国の男の子の手紙の文字を切り貼りして仕上げたそうだ。
よく見ると“k”が“R”にも見えていて、そこがこの歌集にぴったりだと思う。
間違った“聖書”ということなのだろうか。
穂村弘さんの単独歌集を読むのはたぶんはじめてだと思うが、穂村さんが影響を受けたという少女漫画みを強く感じた。
そういう目で見るからかもしれないけれど、特に私も大好きな大島弓子さん色が強い。
脆くて強い、理想の“女の -
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2003年単行本を歌集未収録連作を加えて文庫化。レビュー書けず積読状態でした。
名久井直子表紙装丁デザインの秀逸さ。穂村さんの歌の余韻が残る。
一首一首が濃厚で、自分の中の何かと外界とをつなぐような異次元穂村ワールド。上の句と下の句の組み合わせが衝撃的。
夏の歌ばかりを抜粋してみた。他の季節よりも増して内的不穏を抑えきれない、不可解さも混じる。読むたびに新鮮な驚きがある。私の勝手な解釈ご了承ください。
『ドライドライアイス』
弟よ 目醒まし時計を銀紙でくるめ夏休みの始まりだ
(銀紙に包まれたお菓子、駄菓子屋へ通った幼き頃の自分と兄弟との夏が始まるワクワク感を郷愁を帯びて眩しく思いだされた) -
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本の情報誌「ダ・ヴィンチ」の読者投稿企画「短歌ください」に寄せられた短歌を穂村弘が選び、解説をくわえている。
発想が素晴らしい短歌ばかりで面白く、著者の解説で短歌の魅力がいっそう際立つ。短歌を詠む時にも生かせそうだ。いくつか紹介したい。
コンビニで聞こえた遅刻の言い訳が「尾崎にバイクを盗まれました」
バイキング誰も並ばぬ一品を浮かび上がらすトングの光り
電子レンジは腹に銀河を棲まわせて静かな夜に息をころせり
↑の短歌への著者の解説は“最も日常的なもののなかに宇宙を見出だす鋭さ”
じいちゃんは、白目と黒目の境目が曖昧になった目で座ってる
↑の短歌への著者の解説は“「じいちゃん」の「 -
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本書のテーマは「偶然性による結果的ポエム」についての考察だそうです。
特に気に入ったエッセイを二つ引用します。
P36より
本当の名前
以前枡野浩一さんが、ものを書き始めたばかりの人が自分でつけたペンネームにはしばしば「月」という文字が入る、という意味の指摘をされていたが、そう思ってみると、確かにインターネット上のペンネームなどは「月」だらけだ。この「月」は言霊的に効きにくいだろう。
偶然性のある「月」ならいい。
だが「月」を入れた名前の多くは、その他の部分も素敵な文字で固められている。本人の思い入れの強さによって、偶然性の要素、つまり「思いがけなさ」が奪われているのだ。
自分で自分 -
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ふとした時に見かけた看板の文言や、街中での他人の会話を聞いて感じたことを主にまとめたエッセイ集。
相変わらずのほむほむ節が炸裂していて、面白い。氏のゆったりのんびりとした文体が好き。「なにそれ、どういうこと?」って前のめりになったり、「わかるわかるw」と共感したりしながら読んだ。
若者たちに写真を頼まれて「はいチーズ」と言って伝わったか不安になっちゃう話とか、友人の奥さんが夫婦喧嘩した時にマジックで床に×印を書いて「ここで首を吊るから」と言い放った話とか、美華さんが自分の名前の漢字を伝える時に「美しいに華やか」ではなく「美術の美に中華の華」と遠回しの言い方を使った話とか…
こういう些細な