穂村弘のレビュー一覧
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掲載されている短歌自体も素晴らしいが、穂村弘の解説も凄い。一つ、紹介したい。
“君を待つ3分間、化学調味料と旅をする。2分、耐え切れずと目を覆い、蓋はついに暴かれた。”
せつこという、当時15歳の女性が書いた短歌だ。定型から完全にはみ出したこの短歌に著者はこう書いている。
“カップラーメンの出来上がりが待てなくて2分で開けて食べちゃった。たったそれだけのことを、ここまでハイテンションに詠い切ったのは凄い。今度は五七五七七の短歌定型でつくってみてください。”
化学調味料と旅をする、っていう表現も斬新だが、蓋はついに暴かれた、っていう表現はもっと凄い。
先祖代々絶対開けてはいけません、と言 -
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やっと手に出来た穂村さんのデビュー作。
凄かった。
度々鳥肌が立ったのは、FRESHNESS BURGERの冷房がききすぎてただけじゃない。
これいい!こっちもいい!と付箋を立てていたら、付箋紙の意味がなくなった。
リアリティの中の夢心地の瞬間を絶妙に捉えた句。
逆に、キラキラ名詞のあとに続く塩辛い現実。
はたまた静と動の美しさ。
口語体の魔力。
愛しき日常の素晴らしさ。
その刹那にセンチメンタルな気分になる。
そしてふと、私達読者のどんな毎日にさえ、それらは含まれるのだと気付いた。
毎日を丁寧に生きていきたいものだ。
これがデビュー作だなんて、ホント衝撃だ。
当時、サラダ記念日のお祭り騒 -
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「高齢者を詠った歌」「間違いのある歌」など、近現代の名歌から新聞歌壇の投稿歌までテーマごとに、穂村弘が気になった短歌を集めて解説している。
「間違いのある歌 その2」
“誤植あり。中野駅徒歩十二年。それでいいかもしれないけれど 大松達知”
この短歌に関して著者は、こう述べる。
“人生の殆どが旅になる。なるほど、それも悪くはなさそうだ。”
「ドラマ化の凄み」
“わが使ふ光と水と火の量の測られて届く紙片三枚”
これは大西民子という歌人の短歌だが、簡単にいうと「水道光熱費の請求書が来た」、ということだ。著者はこう書いている。
“光熱費の請求書が言葉の力によってこんな見事な歌になるとは、 -
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ネタバレ穂村さんのダ・ヴィンチ投稿のため、傾向と対策を知る参考書と思って取り寄せた 2010-2013年(第31-60回)連載分をまとめた単行本の加筆修正した文庫版 表紙は陣崎草子さん
ブク友の5552さんも張飛さんもライバルですからねっ
題詠はほんと苦手、今度のお題は切手だけど思いつかない
テーマは多彩で罪、同性、数字、自然、体、味、エロ、距離、声などなど
自由詠も募集していて、『どちらのテーマも上限はございません。どんどん送ってください』ですって
皆さんの「穂村さんに読んでほしいんですけど!!!」と渾身の最高傑作を差し出し、素晴らしい作品が目白押し、才能のぶつかりあいですっ こりゃあ穂村さんに選 -
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エッセイストや俳人など、様々な分野の短歌好きな人と対談しているから、短歌の魅力を再発見できる。
著者の短歌に対する考え方も知ることが出来、短歌を作るうえで参考になるような言葉もたくさんあった。
一番印象に残ったのは著者が、歌人の鳥居に贈った言葉。彼女の魂を「磁力」に例えて、こうアドバイスしている。
「それを意外なところに突っ込み続けていけば、まだまだ良い歌ができますよ。それこそ幸せな状態とか、恋愛について書いたらどうなるのか、とか。まだ突っ込んでいないところはいろいろあるわけですからね。」
俺は、この言葉を読んで今まで詠んでなかったような事も短歌にしていってみようと思った。 -
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久しぶりにほむほむのエッセイを読んだ。
実はこれ、単行本の時に買って、サインまでしてもらって、だいじ〜にとっておいたんだけど、サイン本は気軽に読めないことに気付いて(笑)文庫版を買ったのです。
最後の天文部の流星群の話、余韻が最高だった。
高校の部活の感じと、大人になってから全然会わなくなるというのが本当に分かる。
あと好きなのは「部屋」の章。
どんどん不穏な感じになっていって、でも切なくて、最後の一文でその場の空気感とか物理的な温度まで感じられそうに締めているの、さすがとしか言いようがない。
ほむらさんは、エッセイではとことん自分がダメだなぁとぼやいているのだけれど、現実に起きるちょっ -
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ネタバレ「どこにでも行ける気がした真夜中のサービスエリアの空気を吸えば」サービスエリアって特別な感覚になる。嗅覚も聴覚もとても澄んでほんとうにどこまでもどこまでも行けるよう。人工物の匂いから自然が救い出してくれるような、どこか懐かしい香り。不可思議で少し足がすくむ感覚。思い出してアンニュイな気分になった
「煮え切らぬきみに別れを告げている細胞たちの多数決として」こうでも結論づけなくちゃ前に進めないよなぁ。とも詠めたし、全力で拒絶しているとも仮定できた面白い歌。人間関係の断ち切りの難しさを感じる
「筆圧の強いあの子が今日は来たイヤホン外して「かりかり」を聴く」今日は、はいつも心待ちにしている人なのか -
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最初、全く意味が分からなかった。
穂村弘さんの作品は初めてだし、そもそも、短歌の歌集を読むのも実は初めてで・・・最後の記憶は、中学校の国語の教科書だったろうか。
「あれ、短歌ってこんな感じだったっけ?」というのが、まず思った印象で。
穂村さんを知ってる方には、本当に申し訳ないのだけれど。
それでも、とりあえず、細かいことは気にせずに、読み続けてみようと思い、ひたすら歌を追ってみると、だんだんリズム感が出てきたようで、根拠不明な面白さに陥り始めたとき、最初に気になった歌が現れた。
俺にも考えがあるぞと冷蔵庫のドア開け放てば凍ったキムコ
えっ、キムコって、あの悪臭を守る、あのキムコ?