佐藤優のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ソ連が起こり、世界にマルクス主義が滲出しつつあった時代、日本では第二次の戦前にあたる時代に、国家社会主義者の道を選んだ高畠素之という思想家について書かれています。マルクス主義に向き合い、「資本論」を独自に翻訳し学び、その基礎のうえにファシズムに親和性も持つような考え方、しかしながら独自のものを築き上げられていきます。人間を性悪説的に考え、悪に対する悪として国家政治に関わろうという現実路線。単純に批判だけ行うものよりも実現性が高かった行動力。本人が長生きをしていれば大きな影響を与えていた可能性が見出されます。しかしながら著者はその思想を研究するなかで別の視座を持たれています。人間は性悪であり、それに対する国家という暴力(悪)を用いるなかには、「善」が欠如しています。人間外に存在する「善」についての視座を持たないことには、資本主義に対する冷静な見方とファイズムへの誘惑に対して抗うことが難しいこと。現代においてその危険(ヘイト等暴力へ向かう力の魅力)に対しての思考としての忍耐力の重要さを考えさせられました。
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Posted by ブクログ
宇野経済学の枠組みにもとづいて、近代以降の日本資本主義の展開を解説するとともに、現代の日本および世界が直面している諸問題についての考察をおこなっている本です。
宇野経済学では、共産主義の実現をめざす革命家としてのマルクスと、資本主義の分析をおこなった観察者としてのマルクスを区別し、あくまで観察者のまなざしで資本主義のしくみを解明するという立場が採られます。そのうえで、原理論・段階論・現状分析という三つのステップの区別によって資本主義の展開が明らかにされます。すなわち、19世紀なかばのイギリスにおける資本主義の純粋なかたちを明らかにする原理論、国家が介入することで重商主義から自由主義的な資本主義、そして帝国主義的な資本主義へと発展していくプロセスをたどる段階論、さらにソヴィエト連邦の成立以降の資本主義体制の施策の意味を解明する状況分析という、三つのしごとが示されたことになります。
本書では、近代日本における資本主義の成立が、イギリスのエンクロージャーによってはじまる資本主義の形成とどのようにちがうのかということが解説されており、いわゆる講座派と労農派の歴史観のちがいにも触れながら、近代日本の歴史的なあゆみが簡潔にたどられていきます。そして、マルクスおよび宇野による資本主義の見かたにそくして、グローバリズムが世界経済を席捲し、テロと貧困が蔓延している世界情勢についての著者自身の考えが述べられます。
著者の宇野経済学への傾倒が率直に示されており、宇野経済学の枠組みを用いることで、現代の世界に起こっているさまざまな事件の意味を理解することが可能だということを、具体的な事例にそくして示した本といえるように思います。