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Posted by ブクログ
1959年のSF小説であるが現代社会へのアンチテーゼになっているのが面白い。
これはSF小説でありながらハインラインの思想書でもあると感じる。
内容は軍人にならなければ市民権が得られないという現代の私たちから見たらかなり保守的でありラディカルな思想の元で描かれたSF小説である。しかし、本書を読み進めていくとこの制度にある種の合理性を感じ、更には現代社会の問題点を浮かび上がらせている。
この小説で描かれる社会では共同体の存続或いは繁栄がかなり重視されている為、軍人にのみ参政権が与えられる。軍人は自己を犠牲にして国や組織の為に尽くすものである。その責任感が大事なのである。責任感のない民間人に参政権を与えると共同体の為ではなく個人の為の選択になってしまう。
これは現代社会と対照的である。現代社会は個人の権利を尊重し過ぎるあまりに共同体が弱くなってしまっている。この辺りは今年出版されたテクノロジカルリパブリックにかなり合い通ずる部分である。
現代の社会ではある種の無責任さが蔓延している。行き過ぎた資本主義によって社会に貢献しなくともお金が稼げれば成功者。加速していく個人主義は共同体への責任逃れ。それに反してハインラインは共同体への責任の重要性を説いている。
軍人に参政権が与えられるのは頭がいいからではない。共同体への責任感を持っているからだ。これがハインラインの本書での明確な思想である。彼は権利や自由よりも共同体に対する責任を重んじている。
子供から大人まで楽しめる…深い
この本は色々と思い入れがある。
まず、十代の頃、「機動戦士ガンダム」が好きで、そのモビルスーツのアイデアに寄与したと言うことがきっかけで読んだ。
なお、その当時は読み飛ばしていた、主人公とデュボア教授とのやり取りなど、今になって読むと興味深い。(思想は置いといて)
前半はほぼ新兵物語である。
女性がほとんど出てこないが(名前のある女性は数人で、描写もせいぜい数十行程度)楽しめる。
むしろズイム軍曹やホウ艦隊軍曹、ニールセン大佐に萌える。かも。
そして、私はミステリが好きなのだが、ラスト、13章の終りにミステリ的な驚き(ストーリーとは関係ないが)があった。
この本はSFなので、ミステリ好きの人がこの本を読むかは分からないが、興味あれば是非読んで欲しい。
あまり書くとネタバレになるが、ビル・バリンジャー的なサプライズと言っていいだろう。(一番有名なアレである。バリンジャーのアレはまあまあストーリーにも影響あるかもだが、本書には全くないが。なので多くの人が「だから何?」と思うだろう。
それに他の方のレビューを見てもこの部分に触れてる人はいないみたいだから、そんなに驚かないのかな? この本が書かれたのは1959年。思想的なこととかネタバレしないように匂わせるのって難しい…。
ヒントとしては、13章に出てくる歩兵を調べると興味深い。「(兵士としての)英雄」だけではない人や引退後に社会的に奉仕した人も出てくる。そういう意味では、隠れたテーマは「政治」なのかな…(そこまであからさまではないけど…作者が出してきた名前を深読みすると…。いや、個人の感想ですよ!)
なお、翻訳は昔の方(矢野徹氏)が好み。そっちを買おう。
Posted by ブクログ
言わずと知れた古典的名作。第2次大戦から冷戦初期を時代背景に、正面から軍隊を肯定·礼賛しているが、市民の責任と人生の意義についての哲学は深い。敵異星人の描かれ方は、共産主義のメタファー。以後の戦争SFの基礎を築いた作品。
「宇宙の戦士」はパワードスーツという概念を現代SFに定着させた元祖と言える。また本書で描かれる社会には、退役軍人にしか参政権がない。これは「権利=義務」という考え方で、「価値あるものを得るには、相応の代償が求められる」という作者の人生哲学を表現している。
「宇宙の戦士」(1959)R·A·ハインライン
#読書好きな人と繋がりたい
Posted by ブクログ
本作は、アニメ監督の富野由悠季が『機動戦士ガンダム』を構想する際に、本作の「パワードスーツ」に着想を得たことであまりにも有名である。しかし本作は、裕福な家庭で育ち、成績優秀だが特段将来について考えてもいない高校生の主人公ジュアン・リコ(ジョニー)が、出来心で軍隊に志願し、入隊後兵士として成長していく姿を描いた青春小説であることを忘れてはならないと思う。そうでないと、本作で示される社会観・国家観を含む、本作の白眉とも言える思想的・哲学的要素を十分に味わうことができないからだ。
作中で主人公ジョニーが通う高校の歴史・道徳哲学の教師デュボアは、女生徒からの「わたしの母は暴力ではなにも解決しないと言っています」との発言に対して、「暴力は、むきだしの力は、ほかのどんな要素と比べても、より多くの歴史上の問題に決着をつけてきたのであり、それに反する意見は最悪の希望的観測にすぎない。この基本的な真理を忘れた種族は、常にみずからの命と自由でその代償を支払うことになったのだ」と答える。戦争という暴力行為が歴史的には大半の問題に対して「決着をつけてきた」という事実と向き合えというのは若者(もちろん、若者に限らないが)に対するかなり強烈な洗礼であり、こうした考え方をめぐり当時かなりの論争を巻き起こしたというのも納得がいく。また、本作の中では、2年間の兵役を経験した者だけが参政権を与えられ、かつ公職に就くことが許される「市民」となることができる(また、兵役の期間中には投票権が無い)という社会像が描かれる。理不尽な経験に耐え、命をかけて国家を守るという経験を積んだ者のみが政治的決定権を与えられるというハインラインの政治思想はさまざまな反応を呼ぶであろうが、個人的には非常に興味深いものであった。これはいわゆるノブレスオブリージュの考え方であろうが、作中でも示されている、権力には責任が伴う、という考え方には一考の余地があるのではないかと思う。
ハインライン作品は基本的に筋立てはシンプルであるのに、それに比して内容にボリュームがあり過ぎる(時には冗長に感じることも多い)のはなぜかと考えることが多かったが、ハインラインは、作品で示すあらゆるSF的(時には思想的)要素をいちいち精密に説明しないと気が済まない人なのだろう、と本作を読んで感じた。だからこそ、人によっては本作のパワードスーツのみに惹かれたり、哲学的要素に惹かれたりするのであろう。この点は物語に集中するという意味では作品のバランスを損なっている部分があると思うが、再読の度に新たな面白さに気づくことができる、というメリットもあるように思う。とはいえ、個人的にはジョニーが訓練期間を終えた作品中盤くらいからはとても楽しめたのだが。
それにしても、ハインラインは少ないギミックでSF作品を成り立たせるという点においては天才的に上手いと思う。本作でもSF的ギミックとしてはパワードスーツ、バグ、市民権くらいではないかと思うのだが、それだけで十分に面白いSF作品に仕立て上げてしまうのだから凄い。本作も、1959年という時代にこれだけの精度でSF世界を展開し、後の数多のミリタリーSF作品に影響を与えているという点で偉大な作品であることは間違いない。
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