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恐るべき破壊力を秘めたパワードスーツを着用して、目的の惑星へと宇宙空間から降下、奇襲攻撃をかける機動歩兵。地球連邦軍に志願したジョニーが配属されたのは、この宇宙最強の部隊だった。肉体的にも精神的にも過酷な訓練や異星人との戦いの日々を通して、ジョニーは第一級の兵士へと成長していくが……。ミリタリーSF・シリーズの原点ここに。映画・アニメ界にも多大な影響をもたらした、巨匠ハインラインのヒューゴ賞受賞作
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Posted by ブクログ
本書のキモはパワードスーツ。1977年の文庫化の際に宮武一貴のデザインで加藤直之がイラストを書いたのが『機動戦士ガンダム』を皮切りに日本のアニメに大きな影響を与えた。内田昌之による新訳ではその加藤直之がふたたび表紙絵を描き、さらには解説でそのころの思い出を語っている。 よって、解説でハインライン...続きを読む作品の政治的位置づけなどはさっぱり論じられることはない。軍国主義と批判された本書を、中国の軍事的脅威を前にして安保「戦争」法案の成立に揺れる日本でいまいちど読むことの意味も。 およそ半世紀ぶりの新訳とはいえ、長年流通した訳題は容易には変えられないのだろうが、矢野徹がつけた『宇宙の戦士』という訳題はちょっとカッコつけすぎ。映画化されたときの邦題はそのまま『スターシップ・トゥルーパーズ』。 「戦士」というと、戦いを生業とする武者とか武士とか、ちょっと英雄的なニュアンスが漂う。トゥルーパーは英国陸軍だと兵卒の身分、米軍だと「入隊した兵士」程度の意味らしい。また騎兵の訳もあり、そこから転じて騎馬警官や戦車兵を示したりする。しかしスターシップ・トゥルーパーズという場合には宇宙船に積み込まれて投下される、階級下位の兵卒たちという感じになるんじゃないか。要するに使い捨ての雑兵である。 「ぼく」ジョニー・リコは実業家の裕福な家庭に育つが、親友や同級生のかわいい女の子に影響されて、本気で入隊する気もないまま、父への反発もあって軍に入隊してしまう。軍役を勤めあげると市民権が得られるのだ。特別な技能もない「ぼく」は機動歩兵部隊に配属され、厳しい訓練を受ける。旧訳では「おれ」だったけど、世間知らずのリコには「ぼく」のほうがふさわしい。訓練に耐えられないヤツは除隊すればいい。ただ市民権は永遠に得られないだけだ。訓練に耐え、兵士になるのは5分の1。「ぼく」は何とか兵士になる。 機動歩兵=モービル・インファントリーは、強化防護服(新訳ではもはや訳さずに「パワードスーツ」で通している)を身につけて、最前線で戦う兵士である。宇宙の海兵隊というイメージだったのではないかと思う。最前線で戦う兵士は消耗品であるが、それ故の強い誇りを持つ。その使い捨てぶり、雑兵ぶりを強調するとハリイ・ハリスンの『宇宙兵ブルース』になるし、ジョー・ホールドマン『終わりなき戦い』では兵士が摩耗していく様が描かれた。その後、現在でもミリタリーSFは特にハヤカワ文庫では活況だが、評者はあまり読んだことがないので、どうなっているのかはよく知らない。 しかしハインラインは前向きだ。訓練の描写だけでおよそ半分にまで達するが、彼が描きたかったのは「一人前の男になる」話だったからだろう。 「ぼく」が訓練を受けている間に宇宙戦争は本格化する。敵はバグ。蟻や蜂のような社会を形成する巨大な蜘蛛状の異星生物である。「ぼく」の初めての出陣で軍は敵の母星に攻撃を仕掛け、壊滅的な敗北を喫する。 バグの社会について「全体的な共産主義が、進化によってそれに適応した連中によって活用された場合、どれほど効果的になりうるか」と描写されている。米ソ冷戦期に書かれた小説であり、露骨にバグは共産主義者のことだなどともいわれた。ショスタコーヴィチのCDジャケットに明るく健康的な絵画が使われているものがあった。ははあ、社会主義リアリズムの絵画だなと思って見ると、実はアメリカの画家の絵画だった、ということがあった。社会主義リアリズムと保守的なアメリカ文化というのは実はすごく近いのではないか。 バグとの戦闘に明け暮れる「ぼく」は職業軍人の道へ進み、士官学校に入る。そこでの教育、とりわけ「歴史・道徳哲学」の授業ではハインラインの「社会かくあるべし」論が展開される。軍務を勤めあげたものだけが市民権を得て、投票権を手にする。『宇宙の戦士』における人類の社会は「すべての投票者と公職者が、自発的に困難な職務に当たることで個人の利益よりも集団の繁栄を尊重することを実践してきた」のだという。「自発的」なんてものが本当にあるのかとちょっと疑問符をつけてやれば、これは蟻や蜂の社会とどう違うというのだろうか。「ぼく」が戦う理由は「機動歩兵だからだ」というのはカッコいいのだが、思考停止状態に陥っているだけでしかない。それだからこそヴァーホーヴェン監督は映画『スターシップ・トゥルーパーズ』においてハインラインの理念を素直になぞるだけでこれをカリカチュアにしてしまうことができたのだ。 翻って考えると、他の作品ではリベラルだったり共産主義的だったりするハインラインがこの世界の倫理を本気でよいものとして描いたのか、ディストピアとして描いたのか、だんだんわからなくなってきたりもする。 とはいえ、考えさせられるところは多々ある。敵が攻めてきたら反撃するしかないというのは、平和主義への変わらぬ反論である。これを書いている最中、パリで連続テロ事件が起こった。背後にある貧困や格差に対策をというのは正論だが、いま銃を乱射しているテロリストに対しては、射殺をもって対峙するしかない。しかし、最近読んだある政治学者の指摘、「中国に対峙する国は中国と似てくる」というテーゼがリアルに迫ってくる。 ハインラインはバグに対峙する国家を示してみせたのだとすると、けだし慧眼であったといえる。
本作は、アニメ監督の富野由悠季が『機動戦士ガンダム』を構想する際に、本作の「パワードスーツ」に着想を得たことであまりにも有名である。しかし本作は、裕福な家庭で育ち、成績優秀だが特段将来について考えてもいない高校生の主人公ジュアン・リコ(ジョニー)が、出来心で軍隊に志願し、入隊後兵士として成長してい...続きを読むく姿を描いた青春小説であることを忘れてはならないと思う。そうでないと、本作で示される社会観・国家観を含む、本作の白眉とも言える思想的・哲学的要素を十分に味わうことができないからだ。 作中で主人公ジョニーが通う高校の歴史・道徳哲学の教師デュボアは、女生徒からの「わたしの母は暴力ではなにも解決しないと言っています」との発言に対して、「暴力は、むきだしの力は、ほかのどんな要素と比べても、より多くの歴史上の問題に決着をつけてきたのであり、それに反する意見は最悪の希望的観測にすぎない。この基本的な真理を忘れた種族は、常にみずからの命と自由でその代償を支払うことになったのだ」と答える。戦争という暴力行為が歴史的には大半の問題に対して「決着をつけてきた」という事実と向き合えというのは若者(もちろん、若者に限らないが)に対するかなり強烈な洗礼であり、こうした考え方をめぐり当時かなりの論争を巻き起こしたというのも納得がいく。また、本作の中では、2年間の兵役を経験した者だけが参政権を与えられ、かつ公職に就くことが許される「市民」となることができる(また、兵役の期間中には投票権が無い)という社会像が描かれる。理不尽な経験に耐え、命をかけて国家を守るという経験を積んだ者のみが政治的決定権を与えられるというハインラインの政治思想はさまざまな反応を呼ぶであろうが、個人的には非常に興味深いものであった。これはいわゆるノブレスオブリージュの考え方であろうが、作中でも示されている、権力には責任が伴う、という考え方には一考の余地があるのではないかと思う。 ハインライン作品は基本的に筋立てはシンプルであるのに、それに比して内容にボリュームがあり過ぎる(時には冗長に感じることも多い)のはなぜかと考えることが多かったが、ハインラインは、作品で示すあらゆるSF的(時には思想的)要素をいちいち精密に説明しないと気が済まない人なのだろう、と本作を読んで感じた。だからこそ、人によっては本作のパワードスーツのみに惹かれたり、哲学的要素に惹かれたりするのであろう。この点は物語に集中するという意味では作品のバランスを損なっている部分があると思うが、再読の度に新たな面白さに気づくことができる、というメリットもあるように思う。とはいえ、個人的にはジョニーが訓練期間を終えた作品中盤くらいからはとても楽しめたのだが。 それにしても、ハインラインは少ないギミックでSF作品を成り立たせるという点においては天才的に上手いと思う。本作でもSF的ギミックとしてはパワードスーツ、バグ、市民権くらいではないかと思うのだが、それだけで十分に面白いSF作品に仕立て上げてしまうのだから凄い。本作も、1959年という時代にこれだけの精度でSF世界を展開し、後の数多のミリタリーSF作品に影響を与えているという点で偉大な作品であることは間違いない。
読んだのはスタジオぬえ表紙の旧版です。 ガンダムの元ネタ的目的で読んだが、アメリカンなジョックス的ストーリーで中々面白かった。
映画「スターシップトゥルーパーズ」の原作。しかしあれと本作は別物だ。異星のバグどもとの派手な戦いを求めると肩透かしをくらう。メインは軍隊に入隊した少年の成長を描いた物語となる。が、これが意外に面白い。新人機動歩兵が訓練キャンプでしごかれ、やがて士官候補生となり…。と言った割と分かりやすい内容となって...続きを読むいる。反面、60年代当時のアメリカ軍国主義を皮肉ったものでもある、かもしれない。
やっと、読みました。機動戦士ガンダムのモビルスーツの元ネタになったパワードスーツが登場する、SF小説。 哲学、政治、軍隊組織等についての濃厚な授業を受けているがごとく、作者が提示する社会と現代の社会との違いや、理想とするべき哲学はなにか等、深く考えさせられた作品だった。物語として、さらっと読んでも面...続きを読む白いし、随所でカタルシスを感じることができる娯楽作品の側面もあり、名作と言われる所以がよくわかった。 『夏への扉』とともに、時々読み返したい作品だ。
本気で入隊するつもりはなかった主人公が地球連邦軍に入隊し、機動歩兵部隊でパワードスーツ身を包みバグと呼ばれる異星人と戦っていくことになる、ジュブナイル。 「ガンダムのルーツを新訳で」という安彦良和氏の帯が付いていた。
ファーストガンダムのモチーフの一つとしての知識しかなかったが、新訳版発売とのことで読んでみた。 人類が宇宙に進出し、国家に代わり地球連邦が治める未来世界の志願兵の成長が一人称で綴られる。 冷戦時代の1959年発行とのことでその背景を匂わせる描写もあるが古臭さは感じない。徐々に熱さを増す主人公や緊張感...続きを読むのあるバグとの戦いに引き込まれた。 賛否あると思うが、共同体に対し真に身命を賭せる者のみが主権を持つ社会というのは非常に興味深い。
新訳版、買ってしまった。 表紙のイラスト、初期の版の口絵見開きイラストが、今風のアニメチックな絵になった。残念ながら、スーツの重量感が感じられず。旧版の加藤さんの絵は、今もってしても偉大。 もっと残念なのは、挿し絵が無くなったこと。何故?1000円もするのに! キャプテンフューチャーの新版は、イラ...続きを読むスト満載なのに!! 冒頭のスキニープラネットへの戦闘降下、襲撃、撤収のシーンは、何度読んでも、本当にワクワクする。ホント、旧版でも、何度読んだことか! 訳が変わって、やや硬派感が薄れたようには思うけど。このシーンだけでいいので、現在の技術でアニメ化して欲しい。 さて、ここからが、読むのたいへんだ。じっくり読もう。 読み終わった。これで5、6回読んだだろうか?(もっとかも?) 現在の蔵書のうちでは、最も読み返したタイトルの一つだろう。初めて手に取ってから30年の月日が流れた。その時々に色々考えただろうが、やっぱり、超一級のエンターテインメントとして優れているからこそ、何度読んでも面白い!思想も主義も、その時々で感じ方は違っていたのだ。 新訳の違和感も、全て読み終わった後は気にならなかった。ただ、やっぱり、この新訳版から手に取った少年、青年達に、あの素晴らしい挿絵と出会う機会がうしなわれたのが、とっても残念!!
米大統領選挙も近付いていますが、この本は、投票に行かない理由を与えてくれたものですww(半ばこじつけですが) 軍歴を経た者のみに参政権が与えられる世界。その国のために命をかけて行動したものだけが、政治に参加できる権利があるということなのでしょう。 兵役が必要とは思いませんが、国のために行動したこ...続きを読むともないし、投票する権利や政治批判する権利はないかなとか思って、ここ何年も選挙には行っていません(*/∀\*) 有名フレーズ 「暴力こそが歴史上、他の何にもましてより多くの問題を解決してきた」
ハインラインの有名作のひとつ、本作はミリタリーsfの枠に収まらないぐらい人間の道徳についても書かれていた。そのなかでも暴力と人々の間にある世界のあり方についてデュポン先生が言及されていたのが印象的で、デュポン先生の論理も一理あるなと納得させられた。こういった娯楽小説の中で人々に考えさせるのがハインラ...続きを読むインの上手いところだなとつくづく思う。
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