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清潔な都市環境、健康と生産性の徹底した管理など、人間の「自己家畜化」を促す文化的な圧力がかつてなく強まる現代。だがそれは疎外をも生み出し、そのひずみはすでに「発達障害」や「社交不安症」といった形で表れている。この先に待つのはいかなる未来か?
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Posted by ブクログ
ホモ・サピエンスのビッグヒストリーの中で「自己家畜化」をキーワードの現代社会の成立過程とその影について、哲学、精神医療に触れながら述べられている。本書は自己家畜化というワードに対して善悪の断罪を行うことなく、これまでの影響とこの先の未来について描いていた。
これかなり面白かった! 自分は社会不適合だからダメだ…と思ってる人にぜひ読んでほしい。あなたはきっと悪くない。 内容としては、生物学的な自己家畜化が、文化や環境の変化スピードに追いついてない人が医療や支援の対象となっているのではないのか、このままで良いのか、という話だったように思う。 前半は、そ...続きを読むもそも自己家畜化ってなんぞ?という話で、ここがめっぽう面白い。動物の自己家畜化の事例や、人間が進化のうえで穏やかにより社会的な人間になってきたことが明かされている。ここが面白すぎて、読みたい本がめちゃくちゃ増えた。笑 そして後半は現代の話にうつる。他人を不快にさせない、長寿で、健康で、効率的であるべき…など、文化や環境が人間に求める能力や行動は変わっていき、生物学的な自己家畜化が追いついていない、そこに適合しない人間は精神疾患と看做される。昔より安全に暮らせるが、本当にこれでいいのだろうか?と著者は警鐘を鳴らす。 これは大きい問題で、かつ解決が非常に難しい問題だと思う。文化が変化するスピードは変えられない。著者は人間にやさしい文化や環境へと舵を切り直すための知恵と勇気が必要と記しているが、人間にやさしい文化ってなんだろう?とも思える。でも多くの人間が自己家畜化という言葉を認識し、現状を理解していったならば、少しずつ何かが変わるのかもしれない。
人間は動物である 加速度的に発展していく現代、これからも人間的に幸せに生きることができるのか。 ユートピアはなんなのか。 考えさせられる一冊でした。
YouTubeのPIVOTというチャンネルで、著者の説明を聞いて、無茶苦茶面白い!と思い手にした本。読書により更に理解が深まった。我々は家畜であり、飼い主である。それが悪いことかどうかを動画では少し議論していたが、概ね良いこと、というのが結論だろうか。 自己家畜化が起こったさまざまな動物たち。有名...続きを読むなのは実際に家畜化を試みたベリャーエフのギンギツネ。小型化する。のちに大型の品種がつくられる動物でも、最初は野生種から小型化する。野生種よりも顔が平面的になり、前方への突出が小さくなる(=彫りの深い顔から平たい顔になる)。犬歯をはじめ、歯が小さくなり、顎も小さくなる。野生種に比べて性差が小さくなる。雄が強さをディスプレイする度合いが小さくなり、ウシやヒッジなどは雄の角が小さくなる。体重に対する脳の容量が小さくなる、などの特徴をもつ。 また、たとえば野生のキツネやオオカミでも、子どものうちは人間との接触を嫌がらなくなる。その理由は、ストレスに対して分泌されるホルモンを司っているHPA系が機能低下し、コルチゾールやノルアドレナリンといったホルモンが分泌されなくなるから。これらのホルモンはさまざまな臓器に影響し、血糖値や血圧や心拍数などを上昇させ、ストレスの源と対峙できるよう心身を整える効果があり、たとえば敵と戦ったり逃げたりする際にはこれらのホルモンが分泌されるもの。野生のキツネでは、大人になるとこのHPA系が十分に成熟するため、人間に接すると身体がいわば戦闘モードに切り替わり、恐怖や攻撃性を示す。 こうした特徴がまさに人間的。だから、人間が家畜的、という事である(日本語が変だが)。 人間は古い祖先たちと比較して、テストステロンやコルチゾールが減少し、セロトニンが増加したために、穏やかになっている。しかし、注意しなければならないのは、それで減少したのは「ついカッとなって人を殺した」「通行人の目つきが気に入らないから喧嘩を売った」といった、その場の感情に根差した、まさに反応的な殺人や争いであって、計画的な殺人や争いはこの限りではないという事。理性的な殺人は、やれてしまうと。 飼われた豚になるなら飢えた狼に。しかし、そうもなりきれないのは、既に社会全体が相互に飼い主化していて、人は一人では生きられない事の裏付けでもあるのだろう。
精神科医でありながら人文社会学の視点からみた人類学。 進化生物学的には自己家畜として繁栄してきた人間であるが、中世以降の文化による自己家畜化の加速により、それが恩恵であり人間疎外をもたらすという視点として現代社会を分析していて興味深く刺激的であった。 人間は生物的な進化はゆっくりなのに、急速な文化...続きを読むに適応を求められている。中世と現代人では、別人種ともいうべき位の差があるだろうことに気がつかされた。 過去の流れから推測されるSFも説得力がある。
人間は文化によって進歩し、豊かな暮らしを実現させたが、その“文化的な自己家畜化”の過程は、ゆっくり進化してきた生物学的な自己家畜化をはるかに上回るスピードで変化しているため、それに適応できない人々が増え続けている。文化的な自己家畜化は、常々身体性から逃れる方向に未来を夢見てきたが、「人に優しい未来」...続きを読むを考えた時に、身体性を顧慮しないのは果たして優しいと言えるのか。
『人間はどこまで家畜か』もうタイトルにぎょっとする ここでいう人間の家畜化というのは、現代の人間はより穏やかで安全な文化に適応して生活しているのだけれど、 この文化がより高度なもの、より礼儀正しく感情を荒げることなく他者と協力的なコミュニケーションを取れることを人間に求めるようになってくると 不適応...続きを読むを起こし、文明からこぼれ落ちていく人間が増えていくばかりではないかという懸念ともっと動物としての人間にやさしい未来を考えるべきではないかという警鐘を鳴らす本であった。 たしかに現時点で精神疾患が学生だと不登校、発達障害なんかも増えており、そういった判断や治療が行き届くこと自体は喜ばしいことだけれど、 結果的にふるい落とされた人を排除していることにならないかという指摘には頷いたし、こういった生産性を希求する姿勢そのものがもう限界にきていると思った 熊代氏の言うように高度な文明に生きる人間というよりも、もっと動物的な部分にフォーカスする未来のほうが大人も子どもものびのびと過ごせるのではないかなと思う
人類は自己家畜化を図ることで社会の豊かさや清潔さを求めてきたが、それに伴い動物的な側面は切り捨てられている。 例えるなら、ドラえもんでいうのび太(授業に集中できない子供)やジャイアン(暴力をはたらく子供)は治療や排他の対象になった。 過剰な自己家畜化とそれに取り残される人々という現状把握。 更に...続きを読むそこからの未来予測。
進化生物学や近年の精神医療の現場の状況がまとまっていて、興味深い内容だった。 西暦2060年近未来Aのシナリオが妙に具体的で面白い。逆に2160年の近未来Bはオルダス・ハクスリーのすばらしい新世界を彷彿とさせる感じで、遠くのことを語ろうとすると何かに似てしまい、かえって凡庸になると感じてしまった。
自己家畜化という言葉自体、初めて聞いた言葉だったが、論点としてすごく面白かった。 長生きした方がいいだろうとか、便利なものがいいだろうという、喜怒哀楽の外の感情(というかもはや倫理)によって作った文化に、自己を家畜化して順応してきた結果が、文化に追いつけない人間や倫理外の感情を生み出す悪循環になって...続きを読むいる。皮肉めいている。 他の動物に比べて人間は個体差としての頂点と底辺の差が大き過ぎるのか。 現代の社会で生まれたことが、ギリギリの救済な気がしてしまう。自己家畜化自体の是非はともかく、それを邁進する人間の未来が、どうしてもディストピアに見えてしまう。それは拡大し続ける「半強要される多様性」に対して人間が一点に集約してしまうように思えてしまうからなのか。もっと多方面からこの論議が出て来ていいと思う。
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人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造
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熊代亨
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