運動そのものが、根拠なく礼賛されており、それはまるで「神話」のように、理由なく正しいものとして扱われている。
「運動は、体に悪い」と言われれば、その前提があるがゆえに、「なぜ?」と悪いことに対してのみ根拠が求められる。
この本では、そんな運動に関する、数々の神話を紐解いていく。この本の面白いところ
...続きを読むは、運動が嫌いな人の視点から書かれていること。通常であれば、運動をすれば、こうしたメリットが得られる、という結論へと繋がる本が多いのだが、冒頭でいきなり、運動することの矛盾性を解く。
『つまり、運動とは逆説的なものなのだ。健康的でありながら異常であり、本来無料でありながら高度に商品化され、喜びと健康の源でありながら、不快感、罪悪感、反感を抱かせる。(P14)』
今着ている服で家の周りを走るだけでも、ランニングになるのに、私たちはどうしてわざわざ形から入るのか。そこには、「商品化された運動」があるからであり、確かに、お金を払う価値のあるものへと変化してきているのも事実である。
では、運動そのものが良い悪いのどちらであるかというと、この本では、「したほうがよいもの」として扱われている。この本の上下巻にわたる内容を読めば、なぜ「すべきもの」ではないのかが、明らかになるだろう。そして、そうした運動の特性こそが、先ほどのP14で引用した内容にも繋がってくる。
私は、どちらかといえば走ることはあまり好きでないが、歩くことを含めた運動自体は好きであり、歩きながら考えることも多い。
お金を払えば手軽に通えるジムが増える一方で、お金を払わなければ質の高い運動ができないのではないか、という悩みも生まれる。そんな方に相応しい一冊。