ダニエル E リーバーマンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
頻繁に本書で「中強度の運動を週に150分」という基準が提唱される。本書上下巻を読み終えた今、この基準を完全に下回っている私の日常を顧みる所存である。
下巻では、どのような運動が有効なのか、また運動が身体や精神にもたらす具体的効用が整理されている。
運動が身体に良いことは、エビデンスを理解しないまでも多くの人がなんとなく認めているだろう。しかし、良いことだと分かっていても、なぜこれほど億劫なのか。それは、進化人類学の観点から、人類は余分な運動を避ける傾向にあるから、その気持ちは間違いじゃないよと本書は認めてくれる。
それでも、運動に自身を駆り立てるにはどうすれば。ここでキーワードは「社会的身体活動」である。一人で運動するのは気分が乗らない、でも他の人と一緒に行うことで一体感や交遊関係などの心理的に満たされる報酬がついてくる。そうなると、運動自体はつらいけど、その活動は楽しいものになる。この主張には説得力がある。
しかしながら、私はもっぱら一人でジムで身体を動かす。他人と関係する強制力がたまに煩わしくなってしまうので、一人で気ままにのんびりウェイトトレーニングやトレッドミルでランニングが性に合っている。
グループ活動は強制力がある反面、個人的には欠席してしまった時自己嫌悪を感じたりと精神面でダメージを受けるリスクもある。
そんな私を救ってくれるのは、60分以上の長尺Podcast番組。好きなPodcastを聴きながらついでに身体も動かすという一石二鳥の方法で、ゆるっと運動を続けることができているのである。これは、運動を楽しくする方法の一つとして本書にも紹介されている。
つまりは、人それぞれの報酬系を与えることが、運動を続けるうえで肝要なのである。
定期的な運動をしなくても健康に人生を全うできる人は確かに存在する。(本書ではドナルド・トランプを引合に出されている。)しかし、運動をすることで成人病の予防にもなるし、セロトニンやエンドルフィンといった神経伝達物質が生成され、精神状態も向上することは事実である。
畳みかけてくる論証によって、読者は運動への興味が高まるだろう。その先自分にとって「必要かつ楽しい」運動の手掛かりも、本書に散りばめれている。 -
Posted by ブクログ
『運動の神話』というタイトルだったものが文庫化。
Podcast「ブックカタリスト」で取り上げられ、スロージョギングの効能をごりゅごさんが熱弁していたことが記憶に残っている。その他メディアでも取り挙げられていて結構話題になっていたという認識。
上巻はまず、身体に関する一般常識を懇切丁寧に取り扱う。間違っているところは指摘をし、許容できるところは認めるという真摯な態度が好印象である。
特に、「睡眠」パートは個人的新発見だ。
8時間という指標が子どものころから沁みついてたしどこか信奉しているところがあった。
しかし、統計的にはそこまで必要なく7時間程度が最適であるというのが本書の主張だ。これはその他哺乳類に比べ短いが、進化人類学的に人類が社交を重んじるよう進化を遂げたからという。
夜の自由時間や交遊が楽しくてどうしても夜更かししちゃう習慣が私にはあるが、これは人類史的には不自然でないのだ。次の日疲労や二日酔いでグダグダな私に自暴自棄になることも多かったが、そんな私は人類の進化過程で正しいふるまいをしているのだと言い聞かせ、ポジティブに受け入れよう。
昨今のトレーニングやダイエットの多様化・商業化にみられる「理想の自分」信仰は、そもそも人間の本能と相必ずしも一致しない。
本書はこの主張を軸に、具体的なトピックに分割し様々な角度から検証していく。ストイックになれない自分を自己非難しがちな人には、まず本書を手に取り自分を学問の知見を後ろ盾に許すところから始めてもいいかもしれない。 -
Posted by ブクログ
著者はハーバード大学人類進化生物学の教授。「走る能力」の専門家。この本もそうだが、同著者による『人体600万年史』のテーマも走ることだった。訳者あとがきによれば、ボストンマラソン10回完走し、ベストタイムは3時間20分程となかなかのランナーでもある。
帯に「毎日1時間のウォーキングで死亡率が20%軽減する」と刺激的な文章に惹かれ手に取った。
上、下巻各300ページもある大著であるものの、内容が面白く、するするとアッという間に読み終えた。
そもそも我々は運動するように進化してきたわけではない。狩猟採集や農耕に勤しんでいた祖先は、健康のために走ったり歩いたりするものはいなかった。「健康のために運動する」という概念は現代のものである。という考えがプロローグで示され、「運動することは良いことだ」という神話について、第1章から第12章まで神話の個別テーマについて、興味深く掘り下げる。
例えば、神話その1 私たちは運動するように進化してきた。(人は休むようにできているのか、それとも走るようにできているのか)。
神話その2 怠惰に過ごすのは不自然だ。(身体的に不活発な状態-怠けることの大切さ) 等々
そして最終章 第13章は運動と病気というタイトルで、運動と肥満、がん、2型糖尿病、認知症、うつ病との関連性についても述べる。正直、この章は普段あまり運動していない50歳代以上の人にとっては、正直、読み進めるのが怖いんじゃないかなと思う。少なくとも、僕はそう思った。
リーバーマン先生、とても勉強になる本を提供していただき厚く御礼申し上げます。