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Posted by ブクログ
19世紀のヨーロッパ。遠くへ情報を伝えるには、手紙で伝えるしかなかった時代から、モールス信号を電気で伝える電信が登場した。当初は国内に張り巡らされたケーブルはヨーロッパ中に広がり、ついに大西洋を渡る。
情報が速く、安く伝わるようになった世界はさまざまな変革を迫られ、そして電話の登場により衰退するまでのノンフィクション。
19世紀にすでに大陸間横断ケーブルが存在していたのは驚きだったし、ネットワークのなかで起こる悲喜こもごもの話達は、いまのインターネット世界とさして変わらないように感じる。
どんなテクノロジーも、まだ見ぬ未来のテクノロジーに埋もれていくのが常。電信も電話の登場により駆逐され、電話ももはらコモディティ化して久しい。
インターネットの一般普及から30年ほど、今後どんな未来が来るのか、楽しみしかない。
Posted by ブクログ
電信の歴史を追ったもの。語り口や取り上げるエピソードもわかりやすい。おもしろくて一気に読んでしまった。インターネットとの相似性にびびる。「世界を平和にする」みたいな希望とか。これはまあ飛行機というか海外旅行が一般化された際もそう言われたらしいが。「他の国のことを知れば敵意はなくなる」「飛行機の戦力が強すぎて陸海軍が無意味になるので戦争がなくなる」とか。そうではないことは電信が世界大戦を防げなかったし、インターネット後もいくつも戦争が起きていることを見れば明らかだけど。
暗号化の話や、オペレーターがコミュニティや業界用語、職業の特殊性で現在のITエンジニアとかと同じ文化ってところも非常に興味深い。
電信が実用化されたのって、黒船が来る前だし、よく考えたらマルクスが「共産党宣言」を書いたのものこのころなんだよな。20世紀は技術革新のスピードがすごかった、21世紀はもっとすごい、とか言われてるけど、19世紀も相当だと思う。
いまAIでやいやい言われてるけど、また歴史は繰り返すということなのか……。
Posted by ブクログ
歴史に詳しくなくても電報というサービスを知っている人は多いだろう。現代の日本では儀礼的な利用にとどまり、冠婚葬祭をメインに綺麗なパッケージとともにメッセージを伝えるサービスに変化しているのだが、かつては遠隔地に情報を伝えるための実用的な通信手段であった。
実用サービスとしての電報は19世紀末、急速に発展した電信技術を用いて運用されていた。トム・スタンデージ『ヴィクトリア朝のインターネット』は電信技術の栄枯盛衰を楽しく解説しつつ、電信技術に人々が向けていた視線がインターネットへのそれと相似する部分があったことを示す一冊だ。
本書はおおまかに序盤で電信技術の開発史を解説し、中盤で電信技術によって起こった世界の変革を描き、終盤で電信技術の終焉を描く。一冊で電信の興亡がわかるようになっている。
序盤の開発史は最初期のカオスな状況も面白いのであるが、最大の盛り上がりは大西洋を横断する海底ケーブルの敷設にまつわる話だろう。当初技術面のデザインを担当していたのはエドワード・オレンジ・ワイルドマン・ホワイトハウスという人物だったのだが、彼は工学的には素人だったのだ。その結果、せっかく繋がった大西洋の海底ケーブルはすぐに不通となってしまった。工学という分野がまだ未発達だったことを強く感じさせる挿話である。
その後、きちんと改良された海底ケーブルにより大西洋を越えての通信はきちんとできるようになったのだが、グローバルな通信が可能になったことはどうも過大に評価されていたらしい。
> 電気式テレグラフの効果は「マスケット銃を燭台に」変えるものという標語も流行した。実際にブリッグスやメイヴェリックや多くの人が、グローバルな電網の構築が世界平和をもたらすと期待していた。「地球上のすべての国が考え方を交換できるこうした手段が創造された以上、もう古い偏見や敵愾心は存在してはならない」。(pp.86)
リアルタイムに言葉が交わせるのならば、対話を通して相互理解が進み平和が訪れるであろうというこの楽観的な考え方は19世紀の後半からあったようだ。
このように、本書では電信技術の華やかなりし時代に、かつてインターネット黎明期で起こったようなことがたくさんあったことが分かるのである。
通信技術の進歩に関して、最も敏感なのはビジネスパーソン、とくに証券関係者であった。本書によれば、ロンドンではメッセージの半分が証券取引所に関係していたという。現在でも超高速取引という手法があり、どことなく現代と関係性を感じるものである。
もちろん、新しい技術に敏感なのはビジネスパーソンだけではない。犯罪者も同様である。電信を利用した詐欺も増えており、本書では詳細に触れられていないがこちらは『詐欺師入門 騙しの天才たち、その華麗なる手口』に詳しい。私はこちらを先に読んでおり、「競馬の結果が馬券の発売締め切り前にわかる」という嘘の信憑性がよくわからなかったのだが、当時の電信の仕組みを考えると騙される人がいても仕方なかったかもしれない、と思い直した。
現代でもインターネット詐欺は多いし、最近では生成AIを利用した詐欺も増えている。この辺りも現代との相似を感じる。
通信技術の進歩で大きな影響を受けるのは(詐欺を「仕事」と呼ぶのは少し気が引けるが)仕事の面だけではない。人間関係も大きな影響を受けたようだ。なかでも通信を最も必要とする人間関係は恋愛である。電信のメッセージを介した恋愛や、電信での結婚宣誓なども行われていたようで、「メッセージから受ける印象と実際の印象が異なる」という現代あるあるも当時から発生していたようである。
終盤では電信の衰退が語られるのだが、まず減らされたのは電信オペレーターであった。この事例はワープロの普及でタイピストが減ったことや、最近では生成AIの進歩で複雑なプロンプト芸自体が廃れていったことを思わせるものである。そして電話が登場することで電信技術自体が廃れていったのは言うまでもない。
1つの技術の興亡を眺めていると、最初期のカオス、決定的な発明を受けての受容と社会変容、別の破壊的技術による衰退という流れを辿りがちだということに気付く。社会変容は世界平和のような楽観的な考えには結びつかず、むしろ犯罪のような使われ方に波及するが、かといって全てが悪い方に転がるわけでもない。そして何より、コミュニケーション技術は人間関係に大きく作用する。
「歴史は繰り返さないが韻を踏む」とよく言われるが、電信技術の衰亡とインターネットの興隆はまさに「韻」である。そして世はまさに大生成AI時代である。かつての技術史から「韻」を掴むことは今後を生き抜くヒントになるだろう。
Posted by ブクログ
ヴィクトリア朝時代のインターネットを読んだ。電信の発明やその発展が詳しく書かれている。
電信って、「チチキトク、スグカエレ」みたいなメッセージを送る、古い時代のものだとぼんやりイメージしていたけれど、当時は蒸気機関と並んで称賛された技術革命だったそうで、そのイメージが覆った。考えてみれば、電信が出来る前は飛脚や伝書鳩で連絡をとっていたのだから、そりゃそうだ。
発明された当時はペテンや黒魔術の類だと思われて、なかなか社会に受け入れられなかったが、一度電信の有用さが知られると熱烈的に普及していったらしい。そういった全く新しい技術がどのように受け入れられていったのか、当時の空気感が伝わるエピソードがたくさん紹介されていて、面白かった。
Posted by ブクログ
ヴィクトリア朝時代から比べると現代はいろいろなものが大きく様変わりした。
そのなかでも現代において欠かせないものの一つに”インターネット”がある。インターネットの登場で情報へのアクセスの量は飛躍的に増大した。そして人々のコミュニケーションにも影響を与えており、インターネット以前以後でまったく違うものになった。
と、自分は思っていた。だから仮に昔の人が現代にタイムスリップしたらインターネットに最も驚くだろう、と。
しかし、違うのだと本書に記されている。
インターネットの原型であるものがヴィクトリア朝時代には既にあったのだと。
それが”電信”技術である。
腕木通信という腕の形をした木の形で遠くに情報を知らせる技術の誕生から、電気による通信技術の誕生、そしてテレグラフや電報、電話と姿を変えていく。
インターネットの誕生によってテキストメッセージのやり取りが手紙というフィジカルからデータへと変化したが、既に通っていた道だったのかという驚き。
電信オペレーターによる会ったことのない誰かとのやり取りやロマンスもSNSにも通じるようで面白かった。
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