福田和代のレビュー一覧
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初めて読む作家さん。
以前から気になっていた作品なのと、このところイマイチな本ばかりに当たっているので期待して読みました。
つまらないことはないけど、とっても面白いというほどでもない中の上くらいのクライムノベルでした。
ハッキングや住居侵入、窃盗などで情報を入手し依頼主に渡すことで報酬を得ている太一。
彼が製薬会社から盗んだ情報を、親玉である待野に渡した後、待野が交通事故に遭い死んでしまう。
その事故死に不審感を抱いた太一は自分が盗んだ情報を精査することから事態が動き出す。
待野が掴んだ情報とは何か。果たして太一は育ての親とも言える待野の仇を取れるのかー。
スピード感があり、スケールも大きめなのによくまとまっていると思います。
托卵をするカッコウと太一の親を重ねて表現している点もまずまずですが、タイトルを「カッコウの微笑み」とするほど親と事件が関係していないのはちょっと残念かも。
他にもLINEでチャットしていたはずの会話がいつの間にか通話に変わっていたり、敵が持っているはずのスマホがいつの間にか手元に戻ってきていたりと校閲さんの見落としも目立ちました。
カッコウをタイトルにつけるなら、最後も「蛹から蝶になる」という比喩ではなくて、「卵から雛に」とかでもよかったのでは、とか
そういった余計な事が気になってストーリーに集中しきれなかったのもマイナス。
あぁ、手放しで面白いと言える本が読みたい。
2021年12冊目。
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アミの会の11人の作家さんによる短編集
「アミの会(仮)」のアンソロジー第9弾
この本で初めましての作家さんは
永嶋恵美さん、松尾由美さん、光原百合さん
さらさらと楽しみながら読めました。
ところで、なぜ「アミの会(仮)」?と思っていたら
「アミの会」の名前の由来を書かれた記述がありました。
以前、「雨の会」という若手作家集団があり
”雨の会編”のアンソロジーが出版されました。
その「雨の会」へのリスペクトも込めて、
とりあえず仮の名を「アミの会(仮)」ということにしたら
なぜかそれが一番しっくりきてしまったということなのです。
網のように広がる交友関係だとか、
フランス語でamiは友達と言う意味や
「親しげである」という形容詞だったりもします。
女性作家らしい花の名前の会も素敵ですが、
このちょっととっちらかった感じや、
「なにそれ?」みたいな引っかかりもおもしろいのではないでしょうか。
なるほど~、そういういきさつだったのね。
で~、
その「アミの会(仮)」ですが、めでたく(?)、「仮」が取れて
≪アミの会≫となったそうです!
パチパチパチパチ~! -
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アンソロジーの中に「アミの会(仮)」というものがあるのを知ったのは、この【迷 まよう】だった。
アミの会(仮)のアンソロジー企画は『捨てる』『毒殺協奏曲』『隠す』
そして、第4弾が『迷』と『惑』
ところで「アミの会(仮)」って何?
と疑問に思ったら、「アミの会」には公式ページ "Facebook" があり、
活動も2015年からだと知って驚いた。
それによると、「アミの会(仮)」は女性作家の集まりで、会の目的はアンソロジーを出すこと。
たまに集まってお茶を飲んだり、ご飯を食べたり(お酒を飲んだり)すること。
2015年、GWの東京で、5人の作家が集まって食事会をしていたとき
柴田よしきさんが「アンソロジーをだそうよ」と提案したのがきっかけだったそう。
”アミの会”メンバー近藤史恵さんによると
現在は、短編を発表しにくい時代で、純粋な短編集はなかなか売れないし、売れっ子作家さんしか出せない。
短編は本にまとまらないとなると、雑誌などでも書きにくく、連作短編という形にしてしまうことになる。
雑誌で書くことができても、1か月で書店から消えてしまう。
でも、短編小説は魅力的な形式で、連作ではない単発の短編でしか描けない世界がある。
短編小説の魅力をもっと多くの読者さんに知ってほしいし、短編が好きな読者の方もたくさんいらっしゃるはず。
アンソロジーは、知らない作家に出会うきっかけにもなる。
いきなり知らない作家の本に手を伸ばすことは冒険でも、
アンソロジーで気に入った作家ならば、他の作品も読んでみたくなるのでは。
本が大好きで、長編はもちろん、短編も大好き!
そんな私がアンソロジーでいいな、と思うのが
まさにこの、”初めましての作家さんとの出会い”
近藤さんがおっしゃるように、
いきなり知らない作家さんの本に手を伸ばすのはちょっとした冒険
そんなとき、アンソロジーはもってこい!
『迷』では新津きよみさんが初めましての作家さん。
アミの会(仮)の『迷』
あれ?
大沢在昌さん、乙一さん…?
と思ったら、お二人の男性作家さんはゲスト参加だそうで
納得。 -
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金融システム・リンカーの保守を担当するPM(プロジェクトマネージャー)の横田大志(よこただいし)は、夜中にオペレーターから電話を受け、リンカーシステムのダウンを告げられる。元々の原因は停電だというのだが、その時に発動するための無停電電源装置(UPS)が作動しなかったらしい。
著者の作品は何作か読んでいるため、ミステリの要素があるのかと思いきや、本作は完全なる仕事小説。金融システムがどういうものなのか、それがダウンするということがどれだけ大変なことなのか。そして問題解決能力はもちろんのこと、PMという仕事において、部下に対しての接し方や育て方に対する振る舞いがどれほど重要視されるか、どういう人物がふさわしいとされるのかなど、あまり今まで読んでこなかった類の話で新鮮ではあった。が、ちょっと求めていたものとは違ったかなぁ。 -
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ネタバレAIの講師が「この小説面白いからお勧めです」と言っていたのをきいて読んでみました。タイトルのディープフェイクはAI界隈でも問題になっていることで、でもAIの仕組みから考えるとこれを犯罪に利用するのは簡単だろうなと思って読み進めました。
正直、もう少しテクノロジーの詳細が語られるのかなと思っていたので、ごく普通の小説・展開であったことは少し残念でした。ありていに言うと、「SNSって怖いですよね」という警告以外に訴えかけてくるテーマがなかったかなという感想です。主人公と思われる鉄腕先生が家族と別れるという流れもそこまでいくものかなと感じがしたし、以前の教え子とホテルであったことにされて週刊誌にデマを流されてしまったという流れもなんとなく展開が安っぽいように感じてしまいました。もしその先に、デマを流されてしまった被害者の心の流れや葛藤が繊細に描かれていたらこの小説の印象はもう少し変わったかもしれません。
スマホ・SNS全盛になってからのフィクションは、ノンフィクションを超えることができていない気がして、このようなテイストの小説を書くにあたってはもっとAIの最前線を知る必要があるのかな?と思いました。
小説は昔読んだもののほうが印象深いものが多いです。自分の感性が鈍っているというのもあるのだとは思います。 -
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ネタバレ【収録作品】「もうひとつある」 大崎 梢/「孤独の谷」 近藤 史恵/「扉を開けて」 篠田 真由美/「猫への遺言」 柴田 よしき/「キノコ煙突と港の絵」 永嶋 恵美/「十年日記」 新津 きよみ/「そのハッカーの名は」 福田 和代/「みきにはえりぬ」 松尾 由美/「青い封筒」 松村 比呂美/「黄昏飛行 時の魔法編」 光原 百合/「たからのちず」 矢崎 存美
さまざまな形で残された「ラスト・メッセージ」を巡る短編集。どれも味わい深い。
「もうひとつある」隠された幻の家訓。鷹宮家には4つの家訓が残されていたが、もう一つ隠れた家訓があるという。大学院で歴史を研究する高校時代の先輩に請われて、鷹宮家の傍流に属する絵茉は共にその家訓を探す。
「孤独の谷」ある一族の謎めいた掟。誰かが謎めいた死を遂げると、一族は離散しなければならないという。教え子から相談を受けた大学講師がその謎を探る。
「扉を開けて」『万国古物取扱 銀猫堂』を訪れた「私」。店主に、鍵の掛かった遺品を見るために開けようとする女性を止めてくれと頼む。
「猫への遺言」コロナ禍で死んだ夫の遺言状を読んだ妻の思い。
「キノコ煙突と…」戦時中の樺太から話が始まる。そして現代へ。
「十年日記」九十歳で亡くなった祖母がずっと付けていた日記。心残りは拾った指輪を返せなかったこと、と書かれていた。
「そのハッカーの名は」警視庁サイバー犯罪対策課の増崎はハッカーの「豆歌」を追い、自給自足の生活をしている老人の元を訪れる。
「みきにはえりぬ」亡き母が歌っていた歌に隠された秘密。
「青い封筒」真穂子は、高校生の息子と頻繁に夕食を食べに来る友人たちとの距離感を図りかねている。
「黄昏飛行」コミュニティFMに勤める永瀬真尋の元にはさまざまなリスナーから手紙が送られてくる。
「たからのちず」亡くなった祖母の遺品から出てきた、自分が書いたと思しき「たからのちず」。覚えのない香月はその場所を探す。 -
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ネタバレ*ハッカーとして“裏”の仕事を手掛ける太一は、依頼を受け、製薬会社に侵入してデータを盗む。依頼主である待野は、太一のような人間を束ねる組織を率いていたが、データを渡したあと、不審な死を遂げる。真相を探る太一に忍び寄る影。太一はその影と闘いながら、“もうひとつの影”と闘っていた―*
ハッカー、薬害隠し、轢き逃げ事件、虐待、トラウマ、遺産探し、殺人、黒幕、騙し合い、異母兄弟。
詰め込めるだけ詰め込んだ感じでしたが、上手くまとまっていましたね。
帯の「興奮・爽快・感動」ほどではないにしろ、スピード感は良かったです。
ただ、題名と内容が合っていないのがもったいない・・・ -
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あとがきによると『ホロウアウト』=『からっぽになる』という意味らしい。
福田さんお得意のテロによるパニックものなのだが、こういうテロがあるというのは非常に興味深く、いろいろ考えさせられた。
この作品は単行本の刊行が2020年3月、私が読んだ文庫本の刊行が2021年5月なので、当時はまだオリンピックが現実に開催されるのか、開催して良いのかと落ち着かなかった頃だ。
作品ではオリンピック開催を直前に控えた東京で、配送トラック運転手を狙った青酸ガステロ事件が連続し、鉄道の線路が爆破、高速道路のトンネルで火災が起き…と東京周辺の道路が次々寸断されてしまう。
つまり東京が孤立してしまうのが犯人の狙いなのだ。
これまでテロというと大人数の人間が集まる場所を狙った爆破や毒ガス事件など、人を直接的に狙うものというイメージだった。あるいは小説などでは発電所を狙ったテロというものもあった。
だが物流やゴミ処理を狙ったテロというのは盲点だった。
確かに新型コロナウイルスが蔓延し始めたころのあの物流の混乱や狂騒を思い出すと、こういうことを人為的に引き起こす犯罪もあり得るだろうと思う。
作中に度々出てくる、物流とは人体を駆け巡る血液のようなものという表現。ゴミ処理もまた人体を駆け巡ったあとの排泄物として例えられるだろう。
物流システムが精密に組み上げられた交通のダイヤグラムのように、生産から私たちの手に届くまで複雑な過程を経ていて、その均衡が少し崩れるだけでたちまち崩壊してしまう脆いものだということも分かった。
それは人々の生活がより豊かに便利になるように考え抜かれたシステムなのだが、そこには配送トラックなどの物理的な手段はもちろんのこと、何より現場で働く人々の不断の努力があってのことだと改めて考えさせられた。
この事件の犯人はある意味そうした便利な生活の犠牲者でもある。
生きていくためには食べなければならない、物を使わなければならない。だが食べたからには出ていくものもあるし、物が壊れたり新しいものを買えばゴミも出る。
その食べていくためのものが手に入り、ゴミが適切に処理される。当たり前だと思っていることがいかにたくさん人たちの大変な努力により成り立っているのかということが何度も訴えられる。
この作品のヒーローは警察官ではない。配送トラックドライバーたち。
世良を中心にドライバーたちが協力しあって道路情報を交換しあったり、犯人を包囲していく終盤は楽しかった。
危機的状況になって身の危険を感じて逃げ出すドライバーも責められない。だが一方でその状況を何とかしようとそれぞれの立場で知恵を絞り実行する人たちもいる。
ちょっと上手くいきすぎな感もあるが、そうした爽快感もまた福田さんらしさか。
あとがきにある福田さんの懸念(もちろん私も当時は懸念した)を余所に、オリンピックは開催され、いくつかの問題やトラブルはありつつも終了した。オリンピック開催の是非はともかく、そこにもオリンピックに関わった膨大な人々の努力があったことを改めて思う。 -
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いじめられていた生徒が報復の為にいじめた生徒に切りかかろうとしたところを、身を挺して守ったことからマスコミに「鉄腕先生」と呼ばれ、テレビ出演さえするようになった中学教師の湯川。
そんなある日、新宿のホテルで転校した元教え子と密会していたと週刊誌に掲載される。
その記事は全くのデマ。しかし、そのデマはどんどん拡散し、他にも男子生徒を殴る動画も拡散されるが、湯川には恨まれる覚えがない。
悪意に満ちた巧妙な罠にどんどん陥っていく様子を描く前半は読んでいて気分が悪くなる。
全然見えない希望。誰が湯川を陥れようとしているのか、分からないので、登場人物誰もかれもが怪しく思える。
主人公の湯川でさえ、本当に自分が言うほど善人なのか?と思うほど。
そこまで思わせるのは、作者の力量のなせる業だろう。
個人的にSNSをやらない自分には、SNSに詳しくはないが、タイトルにもなっているAIを使用した「ディープフェイク」はとても恐ろしいと感じた。
最近のニュースも、一般人の情報から拾ってきたものも多く、ネットニュースにおいては誤字脱字のチェックしかない。そんな情報をすぐに信じる人間の多さも怖いと思った。
前半のただただ主人公が追い込まれていく様子が、とてつもなく怖くて、全然関係のない人まで巻き込まれる様子は読んでいるのが辛かったので、評価は低めで。
後半の伏線の回収は見事だったけど、作者の得意なシステム系の話がもう少しあると、もっと面白かったと思う。
誰もが湯川と同じ被害に遭うかもしれない世の中に、何だかとてつもない絶望感を感じる。