福田和代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いじめられていた生徒が報復の為にいじめた生徒に切りかかろうとしたところを、身を挺して守ったことからマスコミに「鉄腕先生」と呼ばれ、テレビ出演さえするようになった中学教師の湯川。
そんなある日、新宿のホテルで転校した元教え子と密会していたと週刊誌に掲載される。
その記事は全くのデマ。しかし、そのデマはどんどん拡散し、他にも男子生徒を殴る動画も拡散されるが、湯川には恨まれる覚えがない。
悪意に満ちた巧妙な罠にどんどん陥っていく様子を描く前半は読んでいて気分が悪くなる。
全然見えない希望。誰が湯川を陥れようとしているのか、分からないので、登場人物誰もかれもが怪しく思える。
主人公の湯川でさえ、本当に自分が言うほど善人なのか?と思うほど。
そこまで思わせるのは、作者の力量のなせる業だろう。
個人的にSNSをやらない自分には、SNSに詳しくはないが、タイトルにもなっているAIを使用した「ディープフェイク」はとても恐ろしいと感じた。
最近のニュースも、一般人の情報から拾ってきたものも多く、ネットニュースにおいては誤字脱字のチェックしかない。そんな情報をすぐに信じる人間の多さも怖いと思った。
前半のただただ主人公が追い込まれていく様子が、とてつもなく怖くて、全然関係のない人まで巻き込まれる様子は読んでいるのが辛かったので、評価は低めで。
後半の伏線の回収は見事だったけど、作者の得意なシステム系の話がもう少しあると、もっと面白かったと思う。
誰もが湯川と同じ被害に遭うかもしれない世の中に、何だかとてつもない絶望感を感じる。 -
Posted by ブクログ
結城真一郎「惨者面談」★★★☆☆
凡そ結末の予想はついたけれど、文体が好き。
伊吹亜門「囚われ師光」★★★☆☆
「刀と傘」「雨と短銃」に続いて。
この方の作品、個人的にとても好きなのだが、短編だと淡々とした印象がより強いかも。ただ母校の新島襄を出してくるところが強いな。
中島京子「ベンジャミン」★★★☆☆
お母さんのセリフと動物園であらかた予想はついたけれど最後まで読めた。
アメリカの小説を読んでる印象があった。
櫛木理宇「夜に落ちる」★★★☆☆
掲示板のまとめを読んだときに感じる胸糞感があって、とりあえず私は外食しているときに隣のテーブルにこのご家庭が座ったら、脳内早食い選手権を開催しそう。
短編を読んだという印象より、本を読んだ、という印象。 -
Posted by ブクログ
久しぶりの福田作品。ハッカー集団の話ということで「プロメテウス・トラップ」のような話かと思っていたがちょっと違う。
ハッカー集団のリーダー格・待野が轢き逃げ事件で死亡。待野の下で働いている太一は直前に受けた製薬会社からのデータを盗み取る仕事に関係して殺されたのではないかと疑い、仲間たちと共に調べ始める。しかし直後に待野の部屋が荒らされパソコンが持ち出されたり、太一らが尾行されたりと不穏なことが起き始める。
相変わらずバタバタした印象。
待野が殺された理由を調べ犯人に復讐したいと考える太一、待野の孫娘で太一が交際している理穂子に降り掛かってきた相続問題、そして幼い頃に受けた暴力父によるトラウマ、さらに製薬会社のある問題を調べようとしている厚生省の若き役人。様々な視点や場面がクルクルと変わる。
前半はなかなか内容が入ってこなかったが、中盤からは人間関係や構図が見えてきて物語にも入り込めるようになった。
待野の事件がそう混み合っていないのは、太一自身の個人的な問題も描きたかったからだったらしい。
「待野組」と呼ばれるハッカー集団の中には酒井のように他人とコミュニケーションを取るのが苦手な者や早坂のように太一同様なにかしらの傷を抱えた者もいる。
太一は待野の事件を調べるうちに自分がいかに待野に大事にされてきたかを知り、同様に酒井や早坂のような者を大事に出来る待野のような存在になりたいと考えるようになっていく。
また太一の回想シーンから、太一には母親違いの弟がいるらしいことも分かってくる。その弟が物語にどう関わってくるのかも注目しながら読んだ。どうか暗い関係ではないようにと思いつつ。
太一は理穂子や「待野組」の仲間たちと共に待野の事件を調べながら、自分たちを狙う者(=待野を殺した犯人?)と闘いながら同時に暴力父によるトラウマとも闘っている。自分がいつか父のように暴力を振るう凶暴さを爆発させてしまうのではないかという恐怖だ。
このまま怖い方向に進んでいくのかとハラハラしながら読んだが、終盤はアクションあり冒険あり作戦あり、ハッカー技術集団らしい闘いありと盛り上がった。
思ったような陰鬱さはなく、痛快とはいかないまでも前向きな結末だったのが良かった。
ただやはりもう少し掘り下げてほしいところは色々ある。福田さんらしいところでもあるのだが。シリーズ化しても面白そうだが、福田さんは滅多に続編は書かない方だからこれも単発かな。
それにしてもタイトルの『カッコウ』とは何を示していたのか。 -
Posted by ブクログ
シリーズ3作目。
1作目は単行本で出ていたが、文庫として、3ヶ月連続の刊行だったらしい。
前作では「キボウ」と言う謎のコンピュータウィルスの話だったが、今作ではコロナの緊急事態宣言下に起きた世界的なハッキング事件を描く。
半年以上が過ぎ、全国の感染者が1日2,000人を超える日が続いても、麻痺してしまったのか、緊張感のない現在の日本とは違い、まだ誰もが疑心暗鬼だった頃の心理状態も巧妙に描いている力作。
新型ウィルスの脅威とハッキングによる世界滅亡の危機への不安…久々に福田和代の面白さを感じる内容だったが、個人的にはこの軽いタッチのシリーズではなく、単体の作品として読みたかった。
EMP攻撃も近著「侵略者」の中でも使っているし、登場人物の軽いノリも微妙で、面白いのだけど、何だか設定と内容がチグハグなので、評価は控えめで。