北森鴻のレビュー一覧
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冬狐堂シリーズ第二弾。
やっぱり面白い。今回は過去に繋がる話が多く、陶子さんのかつての夫も出てきて、ワクワクしっぱなしでしたね。いや~良かった!
そして、お酒が飲みたくなる!
表題作も良かったんですが、私は『倣雛心中』『黒髮のクピド』がとくに気に入りました(タイトルが私好み)。主役であるどちらの人形にも"何か"が宿されているんですが、その正体にううっ。
人形は昔から不気味で嫌いですが、確かに見惚れる程に綺麗なのもありますね。それがまた危なっかしい感があるんですが。
ミステリアスな香りのする魑魅魍魎な世界、骨董業界。魅了されてみたい。私はセンスと勘がトコトン悪いので、この -
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1985年、テッキ&キュータ、高校生。
美人局の罠に嵌まり、早急に一千万円を用意しなければならなくなったキュータは、信用金庫の闇金を強奪する計画を立てる。
相棒のテッキを誘ったが断られたため、組長の車を誤って海に沈め、同じく大金が必要となったキョウジを誘い、計画を実行してしまう。
作戦は成功したかに見えたが…。
偶然に偶然が重なり、やくざと警察両方に狙われることになってしまった『鴨ネギコンビ』の行く末は如何に!?
青春群像劇かと思っていたら、血なまぐさいハードボイルドもので驚きました。(笑)
しかし長編だけあって、前作『親不孝通りディテクティブ』より遙かに壮大なストーリーで面白いです。
北森 -
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博多の街のもつ独特のテンションは、日本全国探しても他に見つからないと思う。あの混沌とした活気が今となっては懐かしい。
博多に住むとどうしても意識せずには暮らせない「裏」。
その裏と表のギリギリのラインを飄々と、時に思慮深く突っ走る鴨ネギコンビ。大人の友情ですね。
三浦しをんさんの「まほろ駅前〜」シリーズを楽しめる方なら、この本も楽しく読めると思います。
一つ一つの話がうまくリンクしていく、飽きない連ドラみたいな感じの一冊です。一瞬だけでも、怖いものがなくなる感じ。
北森さんが亡くなったときはショックでした。まだまだいっぱい書いて欲しかったなあ。 -
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主人公 有馬次郎は、京都嵐山に実在する大悲閣千光寺の寺男。
次郎と和尚さんのやりとりに、すっかりはまり、寺の雰囲気を
この目で確かめたくて、実際に行ってきました。
嵐山の渡月橋南側を川沿いに(川を右手に)1キロほど上がる。
最後の100メートル(?)程度は、坂道です。
山の斜面に引っかるように建つ大非閣。
広いとはいえないこの境内のこの空気の中で、有馬次郎と和尚が、
あの独特の会話を交わしていたんだと感慨を持って深呼吸しました
(もちろん、有馬次郎はフィクションですが、北森鴻はこの場所を
背景に有馬次郎を動かしたわけですから)。
訪れる外国人が日本人に比べて比較的多い。。という事実は
何を意 -
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「旗師」宇佐見陶子シリーズの3作目です。
前作と違う出版社から出ているのは何故なんでしょうか。
シリーズ物は当然同一出版社から、
と何となく思い込んでましたがそうでもないのか。
今回は4篇の連作集です。
それぞれ違うジャンルの美術品にまつわるミステリーで、
相変わらず陶子さんがトラブルに巻き込まれて飛び回ってます。
業界内で名前を知られるようになってきたからですが、
半分は美術品に対する好奇心からみずから飛び込んでますね。
カメラマンの硝子さんや練馬署の犬猿コンビも健在です。
『奇縁円空』篇では暗い時代の話もあって重めですが、
「円空仏」に関する記述がたくさんあって大変勉強になりました。
『 -
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「旗師」宇佐見陶子シリーズの4作目。
4編構成の連作集です。
今回陶子さんは旗師生命に係わる病という不安を抱え、
更にそこを突こうとする悪意にも晒されて悲愴感たっぷりです。
常に突っ張って生きている陶子さんが感情的に揺れてます。
そのせいか4編とも本格推理物というのではなく、
どこか余韻を残したミステリー風仕立てのお話になってます。
陶子さんと硝子さんのそれぞれの過去にまつわるものや、
過去に起こっていただろう事件に対する推測などです。
なので、警察の出る幕無し。
ということは例の犬猿コンビの出番も無しということです。
ちょっと残念。
それにしても陶子さんの築いてきた人脈は羨ましい限りです -
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「旗師」宇佐見陶子シリーズの2作目です。
初っ端から陶子さんピンチです。
騙されて、盗難にあって、事故に遭います。
極めつけに鑑札を剥奪されて満身創痍です。
文章が陶子さんの一人称なので、
感情移入して読む読者も同じ目に遭います。
これでもかと押し寄せる悪意に読んでいて苦しくなります。
巻末の解説にあるとおりサスペンス色がとても濃いです。
元を正せば陶子さんの言葉だったり行動だったりが原因なので、
個人的には自業自得の感もあって感情移入し難かったのですが。
用心しているようでコロッと騙されるあたり、
自分の目を過信し過ぎているような・・・。
蒐集家としての悪い面も出てますね。
前作同様、相変 -
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「旗師」宇佐見陶子シリーズの1作目です。
興味深い世界を堪能しました。
なかなか素人には敷居の高い骨董の世界。
専門的な説明もあって硬くなってもよさそうなのにそうならない。
決して軽いテンポの文章ではないのに読み易い。
何故か?
たぶんエンターテイメント性が高いから。
主人公陶子とカメラマン硝子の壊れ物コンビ(陶器と硝子ですね)。
(最後まで本名が出なかった)プロフェッサーDに、
練馬署の犬猿コンビ(ブルドッグと猿顔だから)。
冬狐堂(陶子の屋号)と銀座の狸こと橘。
単語を見ているだけで楽しい。
各章のタイトルもいいですね。
「罠のなかの狐」「仕掛ける狐」等々興味もイメージも膨らみます。
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ネタバレ個人的に北森鴻の最高傑作に認定。冬狐堂シリーズの「狐闇」と最高の座を争っているのだが、とにかく「巧み」さと古道具への愛にあふれてる、大人の本だ。本当に巧み!上手い!!
年をとればとるほどこの物語をより一層楽しむだろう、と予想できる。逆に若い世代はこの本を楽しむにはまだ早い。この深さを理解するには高校生はなあ、と思ってしまう(というとわたしの年齢がね、あのまああれなのですが)。
道具から見える真実はその持ち主などにとってはインパクトがあることかもしれないが、その他の人には興味のかけらもない出来事かもしれない。北森鴻はそういう部分を態とらしく書かないかわりに、言葉を操りじんわりと心に訴えかけてくる