北森鴻のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレオススメのビアバーを見つけた。
三軒茶屋の外れにひっそりと佇む「香菜里屋」という小さな店である。
常時4種類のアルコール度数の違うビールがおいてあり、その日の気分でビールの味わいが楽しめるのでビール好きにはたまらない。
その上マスター手作りの、ビールにぴったりの旬の美味しい料理が、実にタイミングよく出されるのだから、料理目当てに訪れる客も多いはずだ。
このマスター、料理上手なだけでなく聞き上手でもあり、お客の抱える心の重石にさりげ無く気を配り、いつの間にかお客の懐にするりと入りこみ重石を軽くしてくれる不思議な魅力も秘めている。
夜の一時を楽しみ癒やされるため、そして店全体に醸し出される居心地の良さに、何度もリピートする客が後を断たない。
常連客たちが賑わう一夜、客により持ち込まれる謎。
客とマスター、そこに読み手も加わり繰り広げられる数々の謎解きには、必ずしも明確な答えが出る訳ではない。
時になんの根拠もない推測で終わるものもある。
けれどその曖昧さがとても心地よい余韻をもたらすのだから不思議だ。
大人たちによる切なく、ビールのような苦味がほんのり効いた連作短篇集。
無性にビールが呑みたくなった。
シリーズ続編で再び「香菜里屋」を訪れることが今からほんと楽しみ。 -
Posted by ブクログ
久々の北森さん。
『狂乱廿四考』は、未読だったので、未完とはいえ続編とセットでの出版にいそいそと。
カリスマ的な役者である田之助。実在の役者さんなのね。
両手足を病で失うなんて、どれほどの苦衷をなめたのか。
そんな田之助の周囲で続けざまに起こる事件。
探偵役のお峯ちゃんが可愛い。
その他、魯文など実在の人物が生き生きと描かれているのもいい。
事件の真相が、なんとも悲しくてやりきれない。
そして、その後の彼らを描いた未完の『双蝶闇草子』
冒頭、現代のシーンから始まって、あれ?と思ったら、なんともびっくりな展開。
ヒロインの通う大学が、お馴染みのあの大学なのについにんまり。あのお方が少しだけど登場するし。
重苦しい事件なので、さくさくと、とは言えないもののぐいぐい読み進んでいく。
明治と現代、二重写しのような事件。
何が、どうつながるのか、私には想像もつかない。
それゆえに、そこで終わってしまうのーーと心で悲鳴。
北森先生の中には、どんな結末があったのだろう。
心から惜しまれてならない。
合掌。 -
Posted by ブクログ
同作者の『狐闇』や蓮丈那智フィールドファイルで再三出てくる税所コレクションと三角縁神獣鏡。明治の国際パワーゲームに勝つ為にチベットに南朝を復活させようという計画の為に偽造された、八咫烏が映し出される魔鏡版三角縁神獣鏡、その三角縁神獣鏡がチベットへ旅するのが本書『暁の密使』
歴史的な真偽はさておき、大変楽しいスパイ&山岳アクション&バイオレンスと信心、そしてロマンス。仏教僧アイガーサンクションって感じか。北森本にしては珍しくバランスの良いエンターテイメント小説に仕上がっておりまして、終始楽しく読みました。1900年代に入る直前、1889年(明治31年)から物語がスタート、神獣鏡を運ぶのは僧、能海寛(ただ、本人はなにも知らされていない)、キーワードを運ぶ僧、河口慧海は別ルートで、仏教学者寺本婉雅は能海と合流、軍人成田安輝は本職のアンダーカバーエージェントとして潜入、地元の中国人や少数部族の人々に助けられ能海は西蔵をめざす。歴史上の真偽は横に置いといて実在の人物たちが実際にあった出来事の間でナニをやってたかという隙間埋め型のストーリー。ジャーディンマセソン社トーマス・ヤンセン(紅茶とアヘン、そして武器商会イギリス系ジャーディンマセソン社は現在も巨大国際コングロマリットとして健在、ちなみにあの”グラバー邸”のトーマス・グラバー、グラバー商会はこちらの長崎支店)がかなりのキーパーソンになってくる。当時小ネタも満載で能海が日本アルプスを世界に紹介した登山家宣教師ウォルター・エストンに登山技術を学んでいるとかそこらへんのこともちらちら出て来て盛りだくさん。今まで読んだ北森本の中で一番面白かったです。 -
Posted by ブクログ
今日のハードな夢の原因の一端は、この小説にあると思う。
すっげ~面白かった。
前作の終りが、どう続編につながるのかと思っていたら、彼らの高校時代へと話が飛ぶのである。
本当の現在は、前作から何年もたっていて、キュータの屋台のおやじっぷりも板につき、高校生を見る目もすっかり大人に…と思ったら、人間の本質なんてものは、ちょっとやそっとでは変わらないのである。
キュータとテッキは高校生の頃からぶっ飛んでたんだ。
軽い気持ちで始めた銀行強盗が、どんどん大きな謎を抱えてキュータを窮地に陥れていく。
巻き込まれたテッキもそれは同様。
最初は暴力団から追われ、次に警察も加わり、最後は北朝鮮に拉致されそうになるところまで追いつめられる。
いくらスーパー高校生とはいえ、心身ともに全く余裕なし。
でも、あきらめない。(いや、キュータは裏切ってひとりだけ逃げたが)
頭はいいのに、生きるのに不器用なんだな。
本当に大切に思っているものほど、自分から遠ざけようとしてしまうんだね。
そしてエピローグ。
そうですか。そうきましたか。
「喧嘩上等」キュータが言う。
「お楽しみはこれからだ」と、私は思った。
けれど、そのお楽しみが語られることは永遠にない。
早すぎる作者の死。