北森鴻のレビュー一覧
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花師と絵画修復師という二つの顔を持つ男が修復を依頼された絵画にまつわる謎を解いていくシリーズの第1弾。旗師冬狐堂が脇役として顔をだし著者お得意の他シリーズとのリンクが成り立つ世界の物語だ。そして私にとっては著者北森鴻の訃報を聞く直前に読んだ作品でもあった。また好きなシリーズが始まり続きが早く読みたい、第2弾の文庫化が待ち遠しいと思っていた最中での訃報だった。大好きな作家の死というものに打ちのめされたのはこのときが初めてだった。これまでにも好きな作品を書いていた作家の訃報を聞いたことはあった。たしかにもう新たな作品が発表されないのかと思えば哀しく残念だった。しかし北森鴻の訃報に比べれば軽い動揺で
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古美術ミステリーと聞いて、テレビの2時間サスペンスみたいなトンデモ系かと思いきや、本格的に読ませる話で、引き込まれた。
何より、骨董に関する記述が専門的で細かいのに、知識の全くない自分でも面白く読める。蒔絵の文箱の文様の描写など、見たことがあるかのように鮮やかに頭に浮かぶ。
ただ、知識的なものより、登場人物それぞれの個性が際立っているのことが、この話の魅力をより増している。
主人公の冷静でいながら内に秘めた熱や、敵となる橘薫堂の品の良さをとりつくろった中に垣間見える下劣さなど、実際にそこにいる人のよう。
一点、硝子さんの口調は疑問。筆者が男性か女性か知らずに読み始め、途中も「どっちなんだ -
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『狐罠』『狐闇』と長編で発表された、店舗を構えない骨董商、旗師・宇佐美陶子シリーズの初短編集です。
「 陶鬼」「永久笑み」「緋友禅」「奇縁円空」の4編ですが、どれも内容が濃いです。
骨董の奥深さと蘊蓄、そこに関わる腹黒い守銭奴と主人公・陶子の駆け引きが魅力です。
こんな濃い内容を短編で惜しげもなく出してしまうなんて、北森鴻はファン想いです。
とくに好きなのは「奇縁円空」です。諸国を放浪し、生涯で12万体ともいわれる仏像を彫ったといわれている円空の謎の考察は、基本的な事実を丁寧に織り交ぜながら、またまたびっくりするような視点を最後に提示してくれました。
円空の木仏に似たもんなんて、素 -
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古美術ミステリーの大傑作です。
詐欺なら騙すほうが一方的に悪いが、こと古美術に関しては鑑識眼がない騙されるほうが悪い。
店舗を持たない骨董商(旗師)の冬狐堂・宇佐美陶子は、まんまと同業の骨董商に騙され贋物をつかまされるが、贋物をつかまされたという噂がたてば自らの信用に関わるので、訴えることもできない。
ならば自らの手で意趣返しするしかない。これが狐が仕掛けた罠だ。
相手は老舗の老親父でさながら古狸なので、狐と狸の化かし合いです。
古美術に関する蘊蓄満載で、オススメのミステリーは聞かれたら真っ先にこれをすすめて、北森ファンを増やしています。
これを面白くなかったと言った友 -
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東銀座に事務所をかまえ、花師と絵画修復師の二足の草鞋を履く
佐月恭壱は「確かな筋」から受けた仕事でありながら
何故かトラブルに巻き込まれる。
美を巡る世界に巣食う魑魅魍魎はどこにでも顔を出す。
オリジナル(原作者)と同様の心を持ち、それ以上の腕がなければ
成し得ない修復の技。
ミクロとマクロの作業を同時進行させる精神力。
一歩間違えれば贋作者に転落する危険を伴う仕事。
恭壱が修復の作業に入った時は読み手も緊張する。
思わず息を殺して活字を追ってしまう。
恭壱と一緒にいる善ジイもすごくいい!
恭壱の修復作業に必要な道具&材料を絶対に集めて来る。
この人の情報網も侮れない。
あの、洒落にならな -
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事の起こりは競り市で青銅鏡を手に入れたこと。
しかしそれは盗品で、持ち主に返すことになるのだが、
それはただの青銅鏡ではなかった。
そして青銅鏡を盗んだとされる男が自殺し
競り市の主催者から買い取った絵画が消え
贋作を捌いているという汚名を着せられ鑑札を失う。
更に競り市の主催者が強盗に殺された。
確実に陶子を巻き込んで何かが動いている。
謎が謎を呼び、更に深まる謎。
そこに手を差し伸べ、共に戦ってくれたのは
硝子さんであり、蓮杖那智先生であり、雅蘭堂の越名であり、
そして癒し役で、香菜里屋の工藤も出てきます♪
北森オールスターズ勢ぞろいです!
魑魅魍魎の親玉級の命を掛けた化かしあい。
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旗師・宇佐見陶子が主役のミステリー第2弾で、一話ごとに陶子の過去が明らかになっていく。 トリックのためのミステリーの場合、先が読めた時点で興が冷めることもあるが、北森鴻の作品にはそれがない。膨大な取材に基づくと思われる緻密な書き込みと、その中に投げ込まれる一点の虚構。その舞台で魅力的な人物が動き出すとき、事件の解決すらも作品の構成要素のひとつでしかない。一瞬のカタルシスとその先にあるひりりとした味わいまでも、すべてが計算しつくされている。 扱う材料は、「雛」「ゴーキー」「切子」「生き人形」。ミステリーとしては「クピド」が面白いが、陶子を知るには「苦い狐」もよろしい。
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『不動明王の憂鬱』
有馬次郎と折原けいの発見した水死体。被害者は関東の暴力団員。地上げと銭湯にまかれたビラに隠された謎。
『異教徒の晩餐』
殺害された有名版画師。現場にのされた三本の鯖寿司、切り裂かれたバレンショ。有馬次郎が調査に赴いた翌日殺害された古本屋。
『鮎の踊る夜に』
大非閣に訪れた翌日に殺害された女性。被害者は真夏にも関わらず長袖を着、ゴミ箱に捨てられていた。大文字焼きに隠された秘密。
『不如意の人』
殺害された大学教授。藍染のプールに落とされた被害者。容疑者は折原けいが読んだ推理作家水森堅(ムンちゃん)。
『支那そば館の謎』
「支那そば屋のような家に住んでいる」と -
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多摩川沿いの公園で、後頭部から打撃を加えられた後から、さらに攻撃を加えられ全身を骨折した死体が発見された。空木精作は、周辺住民・友好関係が無い男だった。どういう人間だか解らないまま捜査は続けられる。空木の自宅で後追い捜査をしてた、原口(ベテラン刑事)と又吉(新米刑事)の二人の刑事は、一冊の大学ノートを発見する。捜査本部にその発見を報告しないで、二人はそのノートをヒントに捜査を開始する。空木を追ってるはずだったが、次々と新しい事件に遭遇する。ノートによって出てきた事件は、別々の事件のように思えたのだが・・・。空木とは、どんな人物なのか?ノートは、どんな目的で書かれたのか?そして、原口と又吉のた