北森鴻のレビュー一覧
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『冬狐堂』シリーズ第4作。倣雛心中、苦い瓜、瑠璃の契り、黒髪のクピドの4篇を収録。
目の病を患う陶子の下に、一体の和人形が持ち込まれた。昭和を代表する作家の一品でありながら、わずか10ヶ月のうちに3度も返品された人形。「こいつをおたくで引き取る気はないかい」。そう言った古狸の心中に、旗士として致命的な目の病に犯された陶子への挑戦と嘲笑が渦巻いているのは確かだった。なぜ、人形は返品されるのか、その謎が導く人形作家の真実とは、、、
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今 -
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いつも開店休業状態の下北沢の骨董店・雅蘭堂。店と店主・越名の手を経ていく「モノ」は、それぞれに過去と記憶を抱えた古物たち。そして、その因果が事件を引き起こすことも・・・。おっとりと寝ているかのような細い目で、真実を導き出していく骨董店主のミステリー短編集。
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いつも開店休業状態とはよく言ったもので、冒頭はいきなり店主の居眠りから始まるのだから、このほのぼの感がたまりません^^。古い物を扱っていると、人の思いも一緒についてくる、そうい -
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『冬狐堂』シリーズ第2作。
骨董商『冬狐堂』こと宇佐見陶子の日常の歯車は、骨董市で競り落とした一枚の青銅鏡によって狂い始める。競り落としたはずのものと違う、手元に届いた鏡。その魅力。市に参加していた男の突然の自殺。「あれは間違いです。返してください。」と接近してくる怪しげな男たち。そして、陶子は骨董業者の鑑札を剥奪される罠へと陥れられて、、、。誰が、何のために。五里霧中の調査行は、やがて日本の歴史を紐解く道行となっていく。
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まず! -
Posted by ブクログ
デパートの屋上という楽園を舞台に、そこで起こる決してコージーではない事件(実際人が何人も死ぬ)を描く8つの連作短編。
各話の語りが屋上にある稲荷社の使い狐だったり、観覧車やベンチやピンボールマシンといったモノである点も面白い趣向。
そしてなんと言っても秀逸なのは“さくら婆ァ”の人物造形と彼女を手助けするヤクザ者の杜田、高校生のタクとのやり取り。
事件は人間の悪意を浮き彫りにし、総じて暗く、ほろ苦を通り越してビター過ぎるんだけど、3人の関係性があるからどこか救われながら読んでいけた。
無敵に見えるさくら婆ァにも、一見明るく見える杜田にも消化しきれない心の闇があって作品全体に深みが増す。
最 -
Posted by ブクログ
ネタバレ新潮文庫以来の再読。
各編に出て来る、今で言えばトンデモ説すら本当にあるのかどうかわからない。事件に巻き込まれることも、横溝正史を思わせながら、あっさりと解決へと向かう。
ミクニは、読者の分身であり、また那智の対話または思考の手助けになっているのかも。謎と事件に巻き込まれてながら、巻き込まれてしまわない那智に泳がさられ、定型にはまらない作品群。
那智は、真実に向かって進むため、現地に赴き文献やフィールドワークをする地道な作業の繰り返し。必ず真実に辿り着くとは限らない。それでも続けていく。
若い頃、柳田國男などを読んだ時の、知らない世界を垣間見る心踊る気持ちの昂ぶりを再認識した。