北森鴻のレビュー一覧
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旗師(店舗を持たない骨董商)である主人公・宇佐見陶子が、同業の橘薫堂から贋作を売りつけられたことで意趣返しの罠を張るが、橘薫堂の外商の女性が殺されたことで殺人事件に巻き込まれてしまう長編の古美術ミステリーです。
陶子が意趣返しの罠を仕掛ける過程で登場する贋作家やその贋作家を紹介した元夫(芸術大学の教授を務める英国人)、殺人事件を調べる二人の刑事等々、登場人物たちがそれぞれ行動していく中で、陶子の作戦や殺人事件事件の真相が解き明かされていく過程にワクワクしましたが、意趣返しの決着に関してはアッサリと片付いてしまった印象がありました。とはいえ、巻末にある参考資料一覧の量からもわかるように古美術商や骨董商の話や陶器や漆器の制作について詳しく書かれており臨場感がありました。 -
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北森鴻(個人的なポリシーとしてご存命でない作家は敬称略です)は、蓮丈那智フィールドファイルシリーズを読んだだけ(しかもシリーズ全巻でなくご本人で書き終えられた3冊のみ)ですが、いずれもお気に入りだったので、今回の新装版刊行を機に、この香菜里屋シリーズにも手を出しました。
三軒茶屋の駅近くの袋小路にある小さなビヤバー「香菜里屋」を舞台に、客が持ち込む謎をマスターの工藤哲也が解く。
こう聞くと、有栖川有栖さんの「山伏地蔵坊の放浪」や、近藤史恵さんの「タルト・タタンの夢」に始まる〈ビストロ・パ・マル〉シリーズの様なイメージを思い浮かべていました。
そのイメージは、香菜里屋が行ってみたくなる店であること、マスターの工藤さんの謎めいた、でも親しみやすそうなキャラと彼の提供する美味いビールや料理が魅力的という点に関しては当たっていました。
いや、ほんと近くにこんな店ほしいです。
そう頻繁にはいけそうもないけど。
イメージと異なっていたのは、持ち込まれる謎とその背景にある物語が、存外、生々しく時になまめかしく「生」を感じさせるものが多かったことです。そのせいか、謎が解けた爽快感は低めです。
そもそも謎解きというより推測にしか過ぎない漠然とした終わり方のものもありますしね。
最初の一編で、それに一瞬抵抗感を持ったのですが、工藤さんのキャラと料理込みでの香菜里屋という魅力的なスペースが、ざわつく心を癒やしてくれたのも事実です。
なので、☆5つとはいかなかったものの、もう少し香菜里屋には足を運びたいと思います。 -
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舞台は東京の西の果ての遠誉野市。
童謡詩人:樹来たか子をめぐる人間が偶然?にも集まり
25年前のたか子の死に触れようとした途端に
止まっていた歯車が動き出した。
疑問に継ぐ疑問に振り回されて、眩暈すら感じて、
最後に待っていたのは予想外の結末でした。
「秋ノ聲」に書かれた「しゃぼろん、しゃぼろん」という
不思議な擬音については、実際に見に行った事がある。
言われてみれば、「しゃぼろん、しゃぼろん」と聞こえます。
ただ、初めて聞いた時に「しゃぼろん、しゃぼろん」という
音を活字として書けるかと言われたら、無理です。
そういう言葉を使えるところも、北森氏のスゴイところだと
改めて感じました。 -
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ネタバレ作家、阿坂龍一郎のもとへ、ある日、奇妙な留守番電話のメッセージとともに、一通の手紙が届いた。
一通だけに終わらずその後も届く手紙には数年前に焼身自殺を遂げた男子高校生の死の真相が語られていた。
なぜ今頃?なぜ阿坂のもとに?
過去に追い立てられるように落ち着かぬ日々を送る阿坂の周辺で殺人事件が起きて…。
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声を変えての留守番電話、そして、差出人不明の手紙…出だしから不気味。
出てくる人物たちも何だか少し奇妙な部分があったりと、ハラハラしながら読み進める。
編集者やストーカー女性といった、物語の中でも“日常”に存在するひとたちがちらりと見せる“狂気”の部分。
怖かった。
主人公?阿坂が手紙になぜおびえるのか、そのあたりの謎も徐々に分かってくるのだけれど、途中何度か「えっ」となりながら。
最後に明かされる謎に「えぇっ」と驚く。
男子高校生の自殺の謎。
阿坂の抱える謎。
その他のひとたちの謎。
様々な謎が交錯する。
『冬狐堂シリーズ』にも登場する根岸&四阿(あずまや)コンビに会えるのは嬉しかった。
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北森さんが亡くなってから、私は作品を読み始めました。
現在になって、少しずつ読んでいる読者としては新作が今後出版されないことはとても寂しいです。