あらすじ
三世澤村田之助、江戸末期から明治初期にかけて一世を風靡した歌舞伎の名女形。舞台の最中の怪我から脱疽となり結果として四肢を切断せざるを得なかった悲劇の名優である。明治3年、異彩の画家・河鍋狂斎の描いた幽霊画を発端とした連続殺人事件が、猿若町を震撼させる。幽霊画には歌舞伎界を揺るがす秘密が隠されているらしい――。滅び行く江戸の風情とともに、その事件の顛末を戯作者見習いのお峯の目を通して丁寧に活写した、第6回鮎川哲也賞受賞作『狂乱廿四孝』に、その後のお峯たちの姿を描いた未完の長編ミステリ『双蝶闇草子』を付す。/解説=浅野里沙子
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Posted by ブクログ
久々の北森さん。
『狂乱廿四考』は、未読だったので、未完とはいえ続編とセットでの出版にいそいそと。
カリスマ的な役者である田之助。実在の役者さんなのね。
両手足を病で失うなんて、どれほどの苦衷をなめたのか。
そんな田之助の周囲で続けざまに起こる事件。
探偵役のお峯ちゃんが可愛い。
その他、魯文など実在の人物が生き生きと描かれているのもいい。
事件の真相が、なんとも悲しくてやりきれない。
そして、その後の彼らを描いた未完の『双蝶闇草子』
冒頭、現代のシーンから始まって、あれ?と思ったら、なんともびっくりな展開。
ヒロインの通う大学が、お馴染みのあの大学なのについにんまり。あのお方が少しだけど登場するし。
重苦しい事件なので、さくさくと、とは言えないもののぐいぐい読み進んでいく。
明治と現代、二重写しのような事件。
何が、どうつながるのか、私には想像もつかない。
それゆえに、そこで終わってしまうのーーと心で悲鳴。
北森先生の中には、どんな結末があったのだろう。
心から惜しまれてならない。
合掌。
Posted by ブクログ
幕末から明治初期にかけて活躍した、歌舞伎役者、津村田之助をめぐる物語。
北森鴻のデビュー作と、その後日談の話(未完)の2作。
田之助は、脱疽になり四肢を切断した悲劇の歌舞伎役者だ。その周りで殺人事件がおこり、戯作作者見習いの娘、お峰の目を通して事件は追われていく。
河鍋狂斎の描いた幽霊が、きっかけであり謎解きになる。なので、狂斎をはじめ個々の個性が強烈で、幕末明治にかけての空気の密度を感じる。
でも、異彩を放っているのは、やはり田之助なのだ。
出てくるシーンは少ない。が、四肢を失っても舞台に出る、歌舞伎役者であり続けるという執念がにじみ出てくる。
ゆえに、お峰が薄い。
まぁ、語り部としてはフェアなのだろうけれど、負けてるなって感じてしまう。
ミステリーのテイをとっているので、フェアであることが大事だったのかもしれないが、それによって徒花の匂いを奪ってしまった、そんな感じがする。
そのためか、2作目でまったくフェアじゃない方法がとられる。
こうなると、もう飛び道具なのだが、それを使いながら、むしろそれを使うことによって軌跡をはっきりさせるという流石にデビュー作ではない、百戦錬磨された作家さまと感じた。
ま、現代と過去で、歌舞伎的な見立てを張り巡らせたところで、未完になっているので、わああってなっちゃうのだけどね。
完結したのを読みたかったよ…。
Posted by ブクログ
悲劇の名優・澤村田之助復帰に沸く明治3年、凄惨な連続殺人が歌舞伎界を震撼させる。
河鍋狂斎の描いた幽霊画に、殺人事件の鍵が・・・?
戯作者見習いのお峯はその謎解きに奔走するが―。
滅び行く江戸情緒と田之助の姿をお峯の目を通して活写した、第6回鮎川哲也賞受賞作『狂乱廿四孝』・・・は前に読んでいたんだけど、お峯たちのその後を描いた『双蝶闇草子』が収録されているというので・・・久々に北森さんの語り口、その世界に引きずり込まれる。
未完だとは分かっていたけど、返す返すも残念。
ご本人もさぞかし無念だったろうなぁ、と思ってみたり。
続きが読みたい。でもさすがに浅野さんでもこの続きは書けまい。
読みたいけど、読みたくない・・・複雑な心境である。。。