関口英子のレビュー一覧

  • 神を見た犬

    Posted by ブクログ

    呪いか、使命か。人生の先に待ち受ける運命と、運命に向き合わざるを得なくなった人々の姿を描く22篇の短編。人間に対する皮肉な眼差しと、それらを包み込む神の眼差し、どちらも感じられるところが魅力的。表題作と、「クリスマスの物語」が個人的に好き。

    0
    2026年01月24日
  • すごい物理学入門

    Posted by ブクログ

    ループ量子重力理論提唱者であるカルロ・ロヴェッリ氏のり一般向け物理学書。といっても小難しさはほぼなく詩的な美しい文学作品のような趣。
    相対性理論から量子力学、宇宙、素粒子、量子重力理論、熱と時間、そして「私たちについて」と7つの講義。これは「時間は存在しない」などカルロ氏のその後の著作物の流れと同じで、物理学初心者にとっては非常に分かりやすく、氏の趣旨一貫性に唸らされる。
    題名はイタリア語で「Sette brevi lezioni di fisica」で「
    物理学の7つの短いレッスン」という意味のようで、日本語版の「すごい~」よりこちらのようが美しいような気がする。

    0
    2026年01月23日
  • 「幸せの列車」に乗せられた少年

    Posted by ブクログ

    第二次世界大戦後のイタリアでは
    南部の困窮する家庭の子どもを援助するため
    北部の裕福な家庭へ送る列車が走っていた。

    主人公のアメリーゴ、友人のトンマジーノ
    そして、マリウッチャの日常。
    貧しいながらも子どもらしい明るさに救われる。

    北部に移り温かい食事、孔のあいていない靴を与えられ
    たっぷりと注がれる愛情にホッとするも
    これほどの差があったことに驚く。

    実写版を観て本作を手にしたので状況は把握しやすかった。
    そして、翻訳家・関口英子さんの
    読みやすい文章にも助けられた。

    あたたかく深い愛情の込められた作品。
    より多くに人の目に留まりますように。

    0
    2026年01月22日
  • 天使の蝶

    Posted by ブクログ

    人類は天使になる途中のネオテニーである、という仮説のもと行われた残酷な人体実験をめぐる表題作ほか、ブラックユーモアに満ちた幻想SF短篇集。


    今の気分に合っていて一気に読んだ。シンプソン氏という営業マンが登場するシリーズが楽しい。藤子AでもFでもあるような、アシモフやフレドリック・ブラウンを思いだすような、漫画的でライトな読み味が懐かしい。
    シンプソン氏が売りつけてくる機械は、2025年から見るとハッとするほど正確に未来を予見している。ChatGPTそのものみたいな〈詩歌作成機〉、原子レベルから複製できる3Dコピー機〈ミメーシス〉、他人の思考と感情まで体感させてくれるVR装置〈トレック〉など

    0
    2025年11月27日
  • 命をつないだ路面電車

    Posted by ブクログ

    不条理な事ばかりで憎しみと恐怖が渦巻き、重苦しく辛い日々を生きる中で親切な人もいたことに少しでも希望を感じた。
    悲しくても人生は続き、それでも生きていかねばならない。「お願いだから人生を悲劇で終わらせないで」という母の言葉が胸に響いた。

    0
    2025年08月31日
  • 命をつないだ路面電車

    Posted by ブクログ

    実在の人物から著者が長い時間をかけて話をきき、子ども向けに書いた物語。ホロコーストものだけど、舞台がイタリアで、オーストリアやドイツとはまたずいぶん状況が違っていたのだということがわかる。
    エマヌエーレ少年が乗りこんで2日半ぐるぐる回った路面電車の運転手さんがなんともやさしくて救われる。ユダヤ人をかくまったら自分にも累が及ぶかもしれないのに、マフラーを貸し、お弁当をわけ、トイレ休憩もさせてくれて。まっとうな大人がいるっていうことが、子どもにとってどれだけありがたいか、児童書を読むとたびたび感じる。

    第二次世界大戦は「日独伊三国同盟」ってすごく単純化したものを教わっていたけど、そんなに簡単じゃ

    0
    2025年06月26日
  • オリーヴァ・デナーロ

    Posted by ブクログ

    困難を乗り越えようとする主人公の姿
    複雑な感情を抱えた母親
    不器用ながら芯の強い父親
    人物の描写がいい
    できれば若い女性に読んで欲しい
    試してみませんか

    0
    2025年05月10日
  • オリーヴァ・デナーロ

    Posted by ブクログ

    オリーヴァを見守る家族愛、特に無口な父の姿に
    感動した 今日の女性の権利は昔からあった根強い風習、伝統、しきたり、法律などとの戦いから勝ち得た女性の生きる姿であり万国共通なのだなぁと感慨深い

    0
    2025年04月28日
  • 薔薇とハナムグリ~シュルレアリスム・風刺短篇集~

    Posted by ブクログ

    短編集。表題のバラとハナムグリは、一族でタブーとされることを嗜好する若い虫が、親にも打ち明けられず、隠そうとする話。それほど凝った作品でもなく、どこかにありそうな話。
    面白いのは「怠け者の夢」。仕事中も自分が主役のアクション妄想に耽って、仕事には真剣味がない(でも、入れ込まないので仕事ができる)。優秀な部下の査定を手を抜くので、その人は出世が遅れる。
    好きな女性の前で、彼女と結婚し子供まで持っていることを夢想しながら、その夢想に夢中になっているので本人には生返事をしていて、現実には恋が実らない。が、実は本人は幸せなのではないか。
    これはオタクの理想では?部下の取り扱い以外は現実に仕事ができて、

    0
    2025年03月26日
  • 弟は僕のヒーロー

    Posted by ブクログ

    ダウン症の弟ジョバンニと撮ったYouTubeビデオ「The simple interview」が大ヒットし、本になってベストセラーになり、映画化までされた話題作。ジョバンニを家族の一員として迎え入れ、足りない部分は補い、良い部分は共に楽しむマッツァリオール家の姿が思春期の少年の目を通して描かれる。もちろん思春期の子供のことである、ダウン症の弟を恥だと思ってその存在を友達から隠そうとした時代もあった。しかし、それを乗り越えて、ジョバンニは再び自慢の弟になるのであった。カバー装丁をヨシタケシンスケに頼んだ編集者のセンスも素晴らしい。

    0
    2025年03月22日
  • ぼくたちは幽霊じゃない

    Posted by ブクログ

    母と妹とともにアルバニアからイタリアにゴムボートでやって来た8歳の少年ヴィキ。命懸けで海を渡る描写は壮絶。不法滞在者として劣悪な環境で隠れるように暮らす。学校が彼を暖かく迎えてくれるのに救われるが社会はそうではない。誰もが自国で安心して暮らせるのが一番なのだろうけど今、目の前にいる人に笑顔で暮らしてほしい

    0
    2025年03月22日
  • 同調者

    Posted by ブクログ

     原著1951年発表。
     私が高校生の頃、アルベルト・モラヴィアの作品がハヤカワ文庫NVで何冊もラインナップされていたが、今は全部絶版で、邦訳は光文社古典新訳文庫の2冊以外は古書で入手するしかないようだ。1990年に物故するまでは20世紀の巨匠として賞賛されていたのに、死後は本国イタリアにおいてすらほとんど忘れられている作家。
     本作もなかなかに重厚な小説である。人間の心の機微にぐっと入ってゆく描写は緻密で見事。描写がそのように濃厚であるため、ストーリーは波乱のある「面白い」話なのに、ゆっくりとずっしりとした時間が流れてゆくような小説「時間」が呈示される。そのため多忙な情報化社会の現在から見る

    0
    2024年10月14日
  • 羊飼いの指輪 ファンタジーの練習帳

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    中身の面白さ的には同著者の「猫とともに去りぬ」の方が上かも?
    結末がどれもぴたりと来ないから一つに決めれなかったようにも感じてしまうが、
    子どもたちと番組で話したことをもとに作ったようで、話本自体の構成や作り方が前作と異なるので仕方ない。

    0
    2024年09月23日
  • 神を見た犬

    Posted by ブクログ

    おもしろい
    「竜退治」が特にいい
    この話の恐ろしさは竜を殺した人間に与えられる罰(死)ではなく
    むしろ罰を受けずに済んでしまうこと
    竜の叫びに対して沈黙で返す世界に向けられていると思った
    未知の存在を徹底的に狩り尽くしてしまう人間の習性はこの地上の支配者としてふさわしくそしてとても醜い

    列車とか行進とか、何かを目指して走り続けている話が多い
    しかしそれらはすべて進路を間違えていて、今どこにいるのかさえわからない
    このままでは目的地に辿り着かない、でも引き返すことも止まることもできない
    そういう不安が強い人だったんだなブッツァーティは

    「聖者たち」もよかった。

    0
    2024年09月22日
  • 母、アンナ ロシアの真実を暴いたジャーナリストの情熱と人生

    Posted by ブクログ

    娘から見たアンナ・ボリトコフスカヤ。
    とにかくその行動力と確固たる信念を貫き通した人生に圧倒される。
    高潔なジャーナリストの一面と母としてのアンナ。多感な頃のヴェーラにとっては母の存在はさぞかし重かったであろう。
    ナワリヌイが差別主義者でリベラルとはいい難い人物であるという記述は内側から見た新たな視点で驚いた。

    0
    2024年06月30日
  • 弟は僕のヒーロー

    Posted by ブクログ

    友人からオススメされたショートムービー「ザ・シンプルインタビュー」を見て心を掴まれた!スーツに蝶ネクタイ姿で就職活動するジョヴァンニ。アタッシュケースを開けたらぬいぐるみが出てきて笑い、家でうたた寝しているお母さんに毛布を掛けてあげる優しさに涙。ジョヴァンニはダウン症だ。ジャコモは、待望の弟が思っていたのと違っていたことに戸惑い、思春期になると親友にさえ弟の存在を隠すようになる。しかし、そんな兄の思いとは関係なく、好奇心に満ちた、楽しいことでいっぱいのジョヴァンニの世界はキラキラ輝いて魅力的で、周りの人を笑顔にする。やがてありのままで良いと気付き自由になったジャコモ。「一人ひとりの内側にかけが

    0
    2024年06月02日
  • 戻ってきた娘

    Posted by ブクログ

    まず読みやすい。暖かくて哀しくて、不安定、それでも生命のたくましさと優しさのある、古いイタリア映画のような、味わい深い作品だと思った。突然貧しい実の親のもとに返された娘の内面を思うと、本当に気の毒だけれど、彼女の意思の強さが彼女の命とプライドを守った。姉妹たちはこの先もきっとつらい思いもしながら、したたかに生き抜いていくのだろう。ああイタリアだわよ

    0
    2024年05月22日
  • 弟は僕のヒーロー

    Posted by ブクログ

    ジャコモはダウン症の弟ジョバンニと出会わないなんて残念だと言う。ジョバンニには周りを笑顔にする特別な力がある。ジョバンニといると毎日が違って楽しくなる。ただ、ジャコモはそう思えない時も経験していた。しかし、家族や友達の大きな愛によってジョバンニは見守られ、さらに学校などの社会的な関わりも区別されることなく過ごすことで、大切なものを見落とさなかった。
    日本ではそもそもハンディキャップを持つ人と過ごす機会が少なく、ここまで明るくユーモアたっぷりに描かれる姿に驚いた。多くの人に読んで欲しい作品。映画も見たい。
    ジャコモの描く草食のティラノサウルスがかわいい。ジャコモの優しさを感じる。

    0
    2024年05月20日
  • 古代ローマ人の24時間 よみがえる帝都ローマの民衆生活

    Posted by ブクログ

    著者が古代ローマの一員となり当時のリアルな1日を時間毎に伝えるという事で、臨場感たっぷり。
    コロッセウムや浴場の話はもちろん、中心地の高層マンション事情や、衣食住、奴隷、性の事など赤裸々に記されています。興味深いのは、富裕層ばかりでなく一般市民や奴隷の暮らしぶりが知れる事。
    現代と同じ、いやそれ以上に進んでいるのでは?という事もあれば、そもそも考え方の根幹が違うため理解しようとしても無駄な事もあると思える内容もあり、読み応えのある一冊でした。

    0
    2024年04月10日
  • 母、アンナ ロシアの真実を暴いたジャーナリストの情熱と人生

    Posted by ブクログ

    アンナ・ポリトコフスカヤ
    ロシアにおいてプーチンのチェチェン紛争を取材し、プーチンを痛烈に批判していた女性ジャーナリスト。
    80年代、ソ連のペレストロイカの進む中でジャーナリストとなったアンナは、ソ連が崩壊し、ゴルバチョフ、そしてエリツィンへと引き継がれた民主化の動きが、プーチンの登場によって、国民の不満を封殺しながら徐々に引き戻されていく中で、危機感を感じ、第二次チェチェン紛争では命の危険に晒されながらチェチェンに潜入して、ロシア国内には明らかにされていないロシア軍の蛮行と政府の欺瞞を暴いてきた。
    それは、ロシア国内においてさえ、彼女を危険に晒す生き方だった。
    そして、2006年10月7日、

    0
    2024年03月17日