関口英子のレビュー一覧

  • 同調者
    イタリアの作家モラヴィアの長編。日本ではベルナルド・ベルトルッチの『暗殺の森』の原作といった方がああ、という方は多いのではないだろうか。
    映画とは若干の異動はあるものの、骨格は同じでムッソリーニ政権下のイタリアにおいて秘密警察だったマルチェッロを主人公とした小説。
    人と異なることを恐れて政権に同調す...続きを読む
  • 弟は僕のヒーロー
    ジョバンニの日常、一人一人に違った挨拶をしていること、ぬいぐるみとの対話、音楽が大好きで身体全体で感じ表現していること、などなど、家族の愛の中で様々な葛藤の末、愛おしくなっていく様子が丁寧に描かれていてとてもすてきだった。
    心に染みる言葉がたくさん。
    困ったことを言う奴に対して、アイロニーでかわすと...続きを読む
  • 神を見た犬
    新聞記事のような癖のない文章でつづられた幻想的な短編小説集。傑作選ということで、どれもこれも印象深い作品ばかり。スイスイ読めて鮮明なイメージが残る不思議な作風だ。表題作の「神を見た犬」では、椅子の下に置いたパンの描写だけで色々思わせて涙が出た。これ含めて、昔ながらのキリスト教徒の精神世界を感じさせる...続きを読む
  • 猫とともに去りぬ
     児童文学のような文体であり、非現実的なストーリーはまさに童話でありファンタジーである。ただその中にはさまざまな社会批判や人生の矛盾が描かれているのが面白い。
     濃厚なアイロニーを通して描かれる短編小説集だ。ファンタジーのフレームに入っているので平気でリアルを超えることができる。たとえば猫になったり...続きを読む
  • マルコヴァルドさんの四季
    話の内容自体はごく単純だけどシビアな表現で書かれた文章です。気分転換に気軽に楽しめるかと思って読み始めたら、意外と考えさせられることの多い短編集だった。
    作者による解説によると「産業社会」というあまい夢だけでなく、「いなかの生活」というあまい夢も、攻撃の的となっているそうで、「昔にもどる」ことができ...続きを読む
  • 「幸せの列車」に乗せられた少年
    第二次世界大戦後のイタリア。南部の貧しい子どもたちを北部の豊かな家庭に預けるプロジェクト「幸せの列車」。時代の厳しさや暗さを打ち消すくらい主人公の少年が可愛らしく魅力的でぐんぐん惹き込まれた。多くの子どもたちと同様に列車に乗り込み、北部で新しい家族と夢のような時間を過ごした後、一度は南部に戻り母との...続きを読む
  • 「幸せの列車」に乗せられた少年
    戦後のイタリア、貧しい南の子供たちを少しは余裕のある北の人々が家族として迎え入れ支援した事実に基づくフィクション。手放す親の悲しみや世話をした人々の深い愛、そしてその間で揺れ動く子供の感情。少年視点で語られる風景や思いが溢れ出て、静かに激しく心震わせる。
    とてもすばらしい物語です。
  • 「幸せの列車」に乗せられた少年
     素晴らしい作品だと思う。イタリア国外でもいろいろな賞を受賞したというのも納得。実際に「幸せの列車」は1946年から1952年まで運行されたそうだ。
     アメリーゴは母親と二人でナポリで貧しい暮らしをしている。同じような境遇の子どもたちと一緒に、訳も分からず「幸せの列車」に乗せられ、比較的に暮らしが安...続きを読む
  • 古代ローマ人の24時間 よみがえる帝都ローマの民衆生活
    トラヤヌス帝治世下の紀元115年のローマの一日を、考古学の成果や史料を駆使して再現する内容。実際に当時のローマを見て回っているかのような臨場感が凄い。
  • すごい物理学入門
    こんなにコンパクトにまとまった一冊に物理学の概要が学べる。しかも、読んでいて理解した気分になれるほどにわかりやすい。訳者後書き含めても150ページに、広大な宇宙全体の法則を謎とく旅に連れて行ってくれる素晴らしい本。
    一般相対性理論、量子論、宇宙の構造、素粒子、量子重力理論、ブラックホールをめぐる確率...続きを読む
  • 羊飼いの指輪 ファンタジーの練習帳
    全20編の短い物語にそれぞれ3つの結末。どの結末が気に入るか。どれも気に入らないか。自分の好みがよくわかる。最後に作者が選んだ結末とその理由もあり、物語の届け先を考えた真摯な姿勢に尊敬の念が深まる。私は、基本的にハッピーエンドや道義にかなう結末が好きだけど、ピノッキオの話だけは、被雇用者の存在が気に...続きを読む
  • 神を見た犬
    ブッツァーティ『神を見た犬』。全22編が収録されている。
    かなり好み。幻想的な事や物語を、ジャーナリストとして長年記事を書いていた腕を生かし、平坦かつ事実を伝えるような文章で書くので、あたかも現実的に起こった物語のよう。
    わたしが特に気に入ったのは、天地創造、コロンブレ、7階。
    不条理や破滅などへ向...続きを読む
  • 戻ってきた娘
    イタリアの貧富の差を描いた小説であるだけでなく、男性の暴力と貧困で暮らすための困難さを描いている。
     観光国イタリアではなくて、貧困にあえぐイタリアということで日本の万引き家族に似ている。
  • すごい物理学入門
    文系でも理解できるように書かれているので是非物理が苦手な人にもおすすめ。

    機械学習に必要な数学の勉強のためヨビノリのYouTubeの動画を見始め、なんとなく気になった相対性理論の授業も閲覧。

    「直感に反する事柄を、論理的に理解するのが物理」とヨビノリが話していて、なんだかおもしろくて物理に興味を...続きを読む
  • 戻ってきた娘
    13歳の時、育ての親から生みの親の元へ返された主人公わたしは、恵まれた一人娘の暮しから子だくさんの貧困家庭へ。なぜ戻されたのか理由も分からない。
    これはつらい話だ…と覚悟して読み始めた。

    けれど語られる文体は淡々と静かだ。
    新たな暮らしに順応していく日々を描きながら、時々押さえられない感情が溢れだ...続きを読む
  • 戻ってきた娘
    自分を取り巻く世界とアイデンティティが同一である子どもにとっての、物のように一つの家庭から一つの家庭へと引き渡されるむごさ。同じ経験はしてないものの、幼い頃の痛みとそんな中でも日常のなかにあるささやかな幸福にそのまま触れられるような、瑞々しさに満ちた筆致が素晴らしい。
  • すごい物理学入門
    入門編なのでページ数も少なく、
    数時間で読み終えることが出来た。

    宇宙物理は興味あるテーマだが、
    素人の自分には難解な理論が飛び交い理解が困難だが、少しずつ学んでいきたい。
  • 神を見た犬
    ブッツァーティは初めて読んだけどとても良かった。
    恐怖・不安・不条理をえがきながらもあまり暗く辛い気持ちにはならず、幻想的でありながらも実生活に寄り添っていて絶妙だった。

    一番好きだったのは『コロンブレ』。
    これは本当にカフカに通ずるものがあるとおもう。

    他は『アインシュタインとの約束』、『七階...続きを読む
  • すごい物理学入門
    この手の本はわかっていない事もわかっているように書くのが多いのに、この本はわかっていない事はわかっていないとそのまま書いていて、さらに例もわかりやすく書かれているので、とてもわかりやすくて理解でき面白かった。どうもイタリアでベストセラーになったらしいが、それも頷ける。
  • すごい物理学入門
    物理と哲学はとても近いものと思っている自分としてはとても良い本でした。
    ホーキンス然り、こういう物理本は入門ぽい感じでも途中から結構難しくなると思っていて、この本も同様でした。