関口英子のレビュー一覧
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ジョバンニの日常、一人一人に違った挨拶をしていること、ぬいぐるみとの対話、音楽が大好きで身体全体で感じ表現していること、などなど、家族の愛の中で様々な葛藤の末、愛おしくなっていく様子が丁寧に描かれていてとてもすてきだった。
心に染みる言葉がたくさん。
困ったことを言う奴に対して、アイロニーでかわすと...続きを読むPosted by ブクログ -
話の内容自体はごく単純だけどシビアな表現で書かれた文章です。気分転換に気軽に楽しめるかと思って読み始めたら、意外と考えさせられることの多い短編集だった。
作者による解説によると「産業社会」というあまい夢だけでなく、「いなかの生活」というあまい夢も、攻撃の的となっているそうで、「昔にもどる」ことができ...続きを読むPosted by ブクログ -
第二次世界大戦後のイタリア。南部の貧しい子どもたちを北部の豊かな家庭に預けるプロジェクト「幸せの列車」。時代の厳しさや暗さを打ち消すくらい主人公の少年が可愛らしく魅力的でぐんぐん惹き込まれた。多くの子どもたちと同様に列車に乗り込み、北部で新しい家族と夢のような時間を過ごした後、一度は南部に戻り母との...続きを読むPosted by ブクログ
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戦後のイタリア、貧しい南の子供たちを少しは余裕のある北の人々が家族として迎え入れ支援した事実に基づくフィクション。手放す親の悲しみや世話をした人々の深い愛、そしてその間で揺れ動く子供の感情。少年視点で語られる風景や思いが溢れ出て、静かに激しく心震わせる。
とてもすばらしい物語です。Posted by ブクログ -
素晴らしい作品だと思う。イタリア国外でもいろいろな賞を受賞したというのも納得。実際に「幸せの列車」は1946年から1952年まで運行されたそうだ。
アメリーゴは母親と二人でナポリで貧しい暮らしをしている。同じような境遇の子どもたちと一緒に、訳も分からず「幸せの列車」に乗せられ、比較的に暮らしが安...続きを読むPosted by ブクログ -
トラヤヌス帝治世下の紀元115年のローマの一日を、考古学の成果や史料を駆使して再現する内容。実際に当時のローマを見て回っているかのような臨場感が凄い。Posted by ブクログ
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全20編の短い物語にそれぞれ3つの結末。どの結末が気に入るか。どれも気に入らないか。自分の好みがよくわかる。最後に作者が選んだ結末とその理由もあり、物語の届け先を考えた真摯な姿勢に尊敬の念が深まる。私は、基本的にハッピーエンドや道義にかなう結末が好きだけど、ピノッキオの話だけは、被雇用者の存在が気に...続きを読むPosted by ブクログ
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イタリアの貧富の差を描いた小説であるだけでなく、男性の暴力と貧困で暮らすための困難さを描いている。
観光国イタリアではなくて、貧困にあえぐイタリアということで日本の万引き家族に似ている。Posted by ブクログ -
13歳の時、育ての親から生みの親の元へ返された主人公わたしは、恵まれた一人娘の暮しから子だくさんの貧困家庭へ。なぜ戻されたのか理由も分からない。
これはつらい話だ…と覚悟して読み始めた。
けれど語られる文体は淡々と静かだ。
新たな暮らしに順応していく日々を描きながら、時々押さえられない感情が溢れだ...続きを読むPosted by ブクログ -
自分を取り巻く世界とアイデンティティが同一である子どもにとっての、物のように一つの家庭から一つの家庭へと引き渡されるむごさ。同じ経験はしてないものの、幼い頃の痛みとそんな中でも日常のなかにあるささやかな幸福にそのまま触れられるような、瑞々しさに満ちた筆致が素晴らしい。Posted by ブクログ