幼少期に殺人を犯してしまい「普通」であることに取り憑かれた男の話。
サイコパスな人になり暗殺任務をこなす話みたいな頭で読んだのですが、そうではなかった。
見知らぬ男から性的な悪戯を受けそうになり殺してしまったことをきっかけに人生の全てを「普通」になろうと意識をして全てを決めるようになったマルチェッ
...続きを読むロ
「真の愛を求めている」のに、婚約者からの愛には応えずただ冷静に分析し続ける。婚約者の愛を肯定したり打ち消したり波があるまま暗殺対象の調査任務も新婚旅行の裏で進めていく。
やっと救いを見つけたかと思いきや、旅行中の暗殺対象の妻への恋…彼女に一目惚れだった人物を重ねて嫌悪されながらも「愛して欲しい」と思いをぶつけていく(最低)
本人は気づいてないがその様が自分を苦しめている過去の小児性愛者の求愛の姿にも重なり、側から見ると「信じているもの」も「救い」も可哀想なくらい滑稽に見えてしまう。
「普通」と言うものがあると信じて、ずっと合わさることのない座標を探している。
やがて信じていたものが崩れ去り、自分を呪っていたものも幻想だと解ったときに全てが間違っていて全てが正しくありのままで良くて、滑稽に見えてても真剣で信じたものを貫いたり。(真剣なほどそう見えるものなのかも)呪っているものも幻想と思えれば幸福なのかなと考えさせられた。
タイトルの意味
主人公の中では野心のない農夫のように何も考えずに日々を過ごすことは許せないのに、自身は体制の中で思想を持たずに暗殺の仕事に関わり"意味のあること"と言い聞かせて"流されていく"姿のことと理解した。(解説を読む前)