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官能的な寓話「薔薇とハナムグリ」、眠り続けるモグラの怪物の夢に操られる島民の混乱を描く「夢に生きる島」。ほかに「部屋に生えた木」「ワニ」「疫病」「蛸の言い分」など、シュルで風刺のきいた世界が堪能できる20世紀を代表する作家モラヴィアの傑作短篇15作。「読まねば恥辱」級の面白さ!
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Posted by ブクログ
どれも面白かった。ふざけてる感じの作風なんだが、読み終わるとゾッとする。当時の政治的軋轢により、自由な表現ができなかった苦肉の環境がこのように素晴らしいおどけ狂気な作品を誕生させることになったとは。明らかに変なのに、これが流行とか言われると、どうしても手に入れずにはおられなくなる女。舗装された道を歩...続きを読むけばいいのに、そんな自然に逆らった物など!と山道を歩いて遭難するような意固地な男など。明らかにおかしいのに、いとも簡単にその波に呑まれて流されてゆく人間の愚かさに、現代においても色あせずパンチをくらわしてくる。
短編集。表題のバラとハナムグリは、一族でタブーとされることを嗜好する若い虫が、親にも打ち明けられず、隠そうとする話。それほど凝った作品でもなく、どこかにありそうな話。 面白いのは「怠け者の夢」。仕事中も自分が主役のアクション妄想に耽って、仕事には真剣味がない(でも、入れ込まないので仕事ができる)。優...続きを読む秀な部下の査定を手を抜くので、その人は出世が遅れる。 好きな女性の前で、彼女と結婚し子供まで持っていることを夢想しながら、その夢想に夢中になっているので本人には生返事をしていて、現実には恋が実らない。が、実は本人は幸せなのではないか。 これはオタクの理想では?部下の取り扱い以外は現実に仕事ができて、精神的には万能感にあふれた妄想や、推しとの恋愛妄想の世界に生きている。 現実には恋も手に入れず怠け者という表現をされているものの、これは理想だというオタクの人は多いのではないか。イタリア人の著者の国籍や時代と、現在の日本の差を感じて面白い。 清麗閣(現実に起きていることから目を背けて、事態の悪化を見過ごしてしまう)、月の特派員(明らかにナチスドイツ)など、第二次世界大戦のヨーロッパを思わせる話も多い。 読みやすく、面白い。
著者の作品は昔からけっこう好きで、ほとんど読んできたつもりだったけど、こんなフザけた短編をたくさん書いていたとは知らなんだ。 それでも官能は随所に感じられる。 そこはモラヴィア。
おそろしい比喩と暗喩に満ちた短編たち。 国家の敵でボタンを作ったり、薔薇を好むはずがキャベツを好んで嫌悪されたり… 解決しようもない問題に満ちたこの世界に生きていることを突きつけられる気がする。 蛸のように夢でも希望を信じて生きているかしら。
皮肉めいたものの見方はしているけれども、刺々しさは控え目にしている気がする。結婚出来ない空想家の日常「怠け者の夢」、欲に目が眩むと大事なタイミングを見逃す「パパーロ」、取り敢えず逃げて下さい「清麗閣」、『夢幻諸島から』を思い出した「夢に生きる島」、評論家の懺悔「いまわのきわ」、『きつねとぶどう』な「...続きを読むショーウィンドウのなかの幸せ」、大爆笑した蛸の死生観「蛸の言い分」、さて、今年の春の流行は?「春物ラインナップ」などイタリア文学はまだまだ金脈が沢山ありそう…とここまで来て最後に強烈な「記念碑」で掉尾を飾る。ある男の記念碑が立てられるまでの経緯に鳥肌が立った。解説にある退廃した中産階級を書いたものよりも、「蛸の言い分」のような喜劇タッチの話をもっと読んでみたい。
題名に惹かれて(ハナムグリは私を含めガーデナーの天敵…)手に取りました。 『薔薇とハナムグリ』の主人公は気高く薔薇以外のものに向かう。 どれも大人向けのおとぎ話のよう、と読み終えて解説に進むと とっても深い意味を持つ作品たちでした。この著者の他の作品も読んでみたいです。
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薔薇とハナムグリ~シュルレアリスム・風刺短篇集~
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モラヴィア
関口英子
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