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モノトーンで哀切きわまりない孤高の美の世界を描きながら、人が無意識のうちに心の奥底に抱えている心象風景を類まれな感性で捉えて容赦なく突きつける、イタリアの奇想作家ブッツァーティの代表的短篇集。とつぜん出現した謎の犬におびえる人々を描く表題作、老いた山賊の首領が手下にも見放され、たった一人で戦いを挑む「護送大隊襲撃」、そして幻の傑作と謳われる「戦艦《死》」など22篇を収録。
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Posted by ブクログ
幻想と寓話の短編集。ブッツァーティの長年の短編から主要な作品を集め色々なスタイルが感じ取れるようにしたという。 不安と恐怖を幻想を元に語る。かなり映像的な文章。イタリア文学界では著名。『タタール人の砂漠』が代表作で既読。『七階』は劇として上演され大きな評判を呼び映画化もされたという。画家として漫画や...続きを読むイラストも書たらしい。児童文学も書いていて翻訳されている。 規律の厳しい軍隊の憧れ、大自然の恐怖と何もかも包み込むその厳しさ、不条理と不安と恐怖などが構成要素にある。神・聖者が語られることも多くキリスト教文化圏の影響をかなり感じる。 イタリア幻想文学はなかなかよい。役者はロダーリの翻訳者で訳文はかなり読みやすい。 グランドホテルの廊下・神を見た犬・護送大隊襲撃・戦艦《死》。他の短編も良い。
イタリア20世紀の短編集。幻想小説。 天地創造からはじまり、ちょっとした不安を徐々に増幅され、ついに飲み込まれてしまう様を病院、科学者、村、神といった要素でもって、最後まで緊張感を持って語りかけてくる。 この短編には現実ではない要素がたくさんある。神様、悪魔、病気の程度で階をわける病院、バカでか...続きを読むい戦艦などなど。でも、なぜだか、不思議なくらいに頭の中にはっきりと情景が浮かぶ。 アインシュタインと悪魔が夜の街灯に照らされながら、2人きりで話す様子(アインシュタインの約束)や、 幻の戦艦を現実の戦艦が倒す様子(戦艦《死》)、 見たことはないのに、なぜか読後もその光景が脳裏に焼きついている。
イタリアが生んだ奇才の作家ブッツァーティが書く不可思議なお話を集めた短編集。 テーマは多岐に渡るが、全てにキリスト教的世界観が通底にある感じがして日本のホラーや怪異とは全く違うのが面白い。 特に聖人が出てくる話が多く、さすがカトリックの中心であるお国柄だと思った。 どの話も面白いが ・アインシュ...続きを読むタインとの約束 ・七階 ・神を見た犬 ・呪われた背広 ・秘密兵器 ・天国からの転落 ・驕らぬ心 はとても面白く、教訓めいたものがあった。
新聞記事のような癖のない文章でつづられた幻想的な短編小説集。傑作選ということで、どれもこれも印象深い作品ばかり。スイスイ読めて鮮明なイメージが残る不思議な作風だ。表題作の「神を見た犬」では、椅子の下に置いたパンの描写だけで色々思わせて涙が出た。これ含めて、昔ながらのキリスト教徒の精神世界を感じさせる...続きを読む作品が多くて興味深かった。
ブッツァーティ『神を見た犬』。全22編が収録されている。 かなり好み。幻想的な事や物語を、ジャーナリストとして長年記事を書いていた腕を生かし、平坦かつ事実を伝えるような文章で書くので、あたかも現実的に起こった物語のよう。 わたしが特に気に入ったのは、天地創造、コロンブレ、7階。 不条理や破滅などへ向...続きを読むかって描くこと、悲観さがブッツァーティの特徴らしいが、短編ということもあり、ただ苦しい、悲しいだけではなく進む。 素晴らしいストーリーテーラー。 ブッツァーティの『タタール人の砂漠』も読んでみよう。
ブッツァーティは初めて読んだけどとても良かった。 恐怖・不安・不条理をえがきながらもあまり暗く辛い気持ちにはならず、幻想的でありながらも実生活に寄り添っていて絶妙だった。 一番好きだったのは『コロンブレ』。 これは本当にカフカに通ずるものがあるとおもう。 他は『アインシュタインとの約束』、『七階...続きを読む』、『グランドホテルの廊下』、『神を見た犬』、『小さな暴君』 あたりが特に好き。 『小さな暴君』が一番胸がムカムカする話かも。
「天地創造」神と天使が生物をつくりあげる際、人間は不恰好で厄介ごとを生み出すと却下となるが... 生み出しちゃったね。 「アインシュタインとの約束」アインシュタインがある路地で死の天使に会う。今は重要な発明の最中だと1ヶ月、死を延ばしてほしいと願う。三回延ばし、ある発明を完成させた。その発明に死の...続きを読む天使=悪魔は喜ぶ。 あの発明ですね。 「神を見た犬」修道士についてきた犬は、修道士が死んだ後、不信心な人々が住む村に降りてくる。そして村中を歩き回り、人々の行動を見つめるのだった。 お天道様はいつも見ている。 最初は面白かったものそれぞれ、書き記そうと思ったのですが、読み終わったら次を読みたくなって、中途半端に。 聖人の出てくる話が好き。
短編集で不条理を描いたもの。星新一に系統は似てるけどそれをもっと文学的にしたような。人の持つ社会的心理から返って個人が苦しんでしまう様な様を描いたものが多い。 1. 天地創造。キリスト教ネタがいくつかあって分かりにくいものもあったけど、これはシンプルで、地球にある一切は神によってデザインされたとさ...続きを読むれるが、こんな裏話があったのではないかという話。作者がいかに人間を醜いと思ってるかが一作品目で分かる構成なのが良い。 2. コロンブレ。親や世間の謂れを真に受けて信じ込んでしまった為に人生を棒に振る寓話。 3. アインシュタインとの約束。偉人に勝手に性格をあてて描くのは何だか気持ち悪かった。 4. 戦の歌。これは本当に訳がわからなかった。解説が欲しい。国は一体何処と戦っているのか?なぜいつまでも戦争は終わらないのか?歌は何を言っているのか? 5. 7階。これも訳がわからないと言えばそうだが、書いてあることをそのまま読めば分かるし、面白かった。それは不名誉なバロメーターであるが主観的な評価であり、またあらゆる言い訳に負けて、ずぶずぶと最高級の不名誉を負ってしまう話。 6. 成人たち。キリスト教を知らないので聖人が何かよく分からなかったけど、仏みたいなもんだろう。そんな聖人の中でも人間的な悩みがあるという話 7. グランドホテルの廊下。急に話が小さくなった。人間臭さを描いた笑い話 8. 神を見た犬。表題。神を信じない村の人たちだが、ふとしたきっかけで一匹の犬を恐れてしまう話。宗教臭い。 17. 病院というところ。これはすごく好き。これが病院というところなのだ。 19. クリスマスの話。いい話。 21. 戦艦トート。これだけすごく長い。内容の割に。
上手くいかないから不幸なのではない、貧しいから不幸なのではない、それだから不幸なのだと思ってしまう考え方が不幸なのだ。ブッツァーティの小説は読者に主人公の人生の最後に立ち会わせそれを問いかける物語だ。一元的な物の見方を否定し物事に違う観点を与える。10代の頃彼の長編「タタール人の砂漠」で頭をガツンと...続きを読むやられた。それと同じ感覚がこの短編集にも詰まっている。謎の怪物コロンブレに殺されまいと逃げ続けた男の話、護送大隊をたった一人で襲撃しようとする年老いた山賊の話。ラストですべての不幸が幸福に代わり、幸福が不幸に入れ替わる。この世界のことはすべて脳内で起きている。他人の視点は何の意味もない。自分の人生が幸福か不幸かは誰が決めるのか。自分の脳が決めるのだ。ザックスナイダー監督が私のお気に入り映画「エンジェルウォーズ」で伝えたかったのもそれだと思うがリアルな映像ゆえに成功したとは言い難い。でもテーマは同じ。自由への鍵はそこにある。
ブラックユーモアが好きなのでこれらの作品は 本当に面白かったです。 実際にはありえないお話なはず、なのです。 だけれどもきちんと人間の心理を捉えているせいで 現実にありそうな気がして、恐ろしいもので。 表題作はまさに人というものの弱さを 露呈させている作品です。 人は「枷」がなくなるように望みま...続きを読むすが その「枷」がいざ取れてしまうと どのように行動してよいかが分からないのです。 結局人にはそれ相応の 「秩序」が必要なんだと痛感させられます。 それと不条理な作品も多いです。 「風船」なんかはそれの典例。 幸せが望むように続かないのと同じ。
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神を見た犬
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ブッツァーティ
関口英子
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